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私の知らない世界でも、時は刻まれている  作者: カドイチマコト
六章、猫ちゃん保護編

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第79話、不安だね、保護しに向かうこの面子。2


「うーん」


 翌日、目覚めて伸びをする。やはりまだ身体はだるく、本調子ではなかった。足を引っ張ってしまわないか、やや不安になったものの、今回は私が行かぬことには話にならない。


「精霊さんおはよう。なんとかなるよね……」


 不安を紛らわすよう、いつものように声をかける。そして、精霊たちが姿を消した後、急いで身支度を整え、部屋を後にした。寮の玄関を出た瞬間、ふと呟く。


「まだ暗いな……」


 空がうっすらとしか染まっていない。少し早すぎたかもしれないと思いながらも、引き返すことなく足を進めて、王立図書館へ到着する。


 ――玄関先に見慣れない馬車が止まっていた。


「まだ、開館していないのにな……」


 訝しみつつ近づくと、不意に声をかけられる。


「おはようございます。あとでそちらにも伺おうと思っていたのですが」


 聞き覚えのある声に、心臓がドクンと跳ねた。ゆっくり視線を向けたところ、馬車の傍らにジュジュ。全くもって朝から縁起が悪い。


 しかし、立ち去るわけにもいかず――ひとまず挨拶を交わす。


「おはようございます。伺うって、なにか御用でも……」


 恐る恐る、尋ねる。


「母の命によりお迎えに参りました」


 ジュジュはそう言った後、胸に掌を当て、軽く頭を下げた。妙に礼儀正しい振る舞いを見て、不安が増す。とはいえ、言葉の意味が分からない。


「えっと……どういうことでしょうか?」

「ユウコ様の指示でしょう」


 突如、声が聞こえて振り向く。主は王立図書館から出てきたシエンであった。真偽を確認するべく、ジュジュに問いかける。


「そうなのですか?」

「はい」

「ユウコ様と容姿がそっくりだと思ってはいたのですが……親子だったのですね」

「鬼に両親を殺された私が保護された際、引き取って養女にしてくれたのです」


 同じような境遇であったものの、いまひとつ親近感が湧かない。しかしこれで、二人の外観が似ている理由が分かった。


 そして、馬車まで歩み寄ってきたシエンが静かに告げる。


「保護をお願いしたら自分の娘にするんですから。全く、露ほどにも思いませんでしたよ……」

「その節は誠に……」

「いえいえ、当然のことをしたまでです」


 ――こういうこともあり、シエンはユウコに頭が上がらないのかもしれないと、ふと思ってしまう。


「お二方、先に乗っていますよ」


 そう言って、シエンは一足先に馬車へ乗り込んだ。


「では、私も……」


 言葉を返し、足を進めようとした最中、見計らったようにジュジュが声をかけてきた。


「ところで貴殿は、その格好で行かれるのでしょうか?」


 どうやら、私の服装が懸念を生じさせたようである。


 普段のように装備類は途中で装着するため、今の状態は頭にスカーフを巻き、半袖膝上の白いワンピースに普通の靴という軽装。


 質問自体は何気ないものの、髪より覗く鋭い眼光に加え、丁寧な言葉遣いにより、威圧感が半端ない。たじろぎながら答えた。


「い、いえ、道中で着替えます」


 そう言って、手に持っていた赤いトランクケースを掲げて見せる。直後、ジュジュはうっすら笑みを浮かべた。


「それなら結構です」


 納得してくれたらしい。これ以上なにか言われぬよう、そそくさ馬車に乗り込む。すると、先に乗車していたシエンは進行方向側の座席の真ん中に陣取っていた。


「うーん、困ったな……」


 ここで問題が発生。トランクケースを置けそうな場所が見当たらない。シエンが少しずれてくれれば解決しそう。しかし、瞼を閉じている。


 眠っている可能性もあり、話しかけることに若干ためらう。ということで、わざとらしく声を出して訴えてみた。


「これどこに置こうかなー」


 ――反応がない。諦めて抱えて座ることとした。


 反対の席に腰を下ろし、出発の時を待つ。少し遅れて乗り込んできたジュジュは空いている私の隣へそっと着席した。そして、間髪入れず御者に告げる。


「では、お願いします」


 その言葉で馬車はゆっくり動き始めた。


 一人ならともかく、私の苦手な一位と二位の人たちと同行する羽目になり、空気が非常に重く感じる。とはいえ、目的地まではおよそ二十分足らず。辛抱するほかない。窓から景色をながめて過ごす。


「あれ?」


 しばらくして、見えるはずのない王宮が目に留まり、思わず声が出た。


「どうかなされましたか?」


 問いかけてきたジュジュに疑問をぶつける。


「これからどこへ向かうのでしょうか?」

「冒険者組合で同行者を拾った後、外壁の門へ向かう予定です」


 装備を王宮で整えるはずが――予定が狂ってしまった。


「すみません。このままではまずいので、着替えさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「構いま……せんが……」


 そう告げたジュジュの顔が赤い。なにやら勘違いされている。しかし気にせず、開きやすいように抱えていたトランクケースを膝に寝かせた。その時ふと、シエンと視線が交わる。うまいこと目を覚ましてくれた。


 場所を空けてもらうため、話しかけようとした瞬間、シエンが言葉を発する。


「子供には興味ありませんので」

「はあ?」


 こちらも思い違いをしていた。とはいえ、この失礼な発言に私は憤慨する。


「邪魔です! 少し端によってください」


 声を荒げると同時にトランクケースを振りかぶり、叩きつけるように壁とシエンの間に強引に捻じ込む。


「ちょ、ちょっと……乱暴ですね」

「真ん中に偉そうに座ってる人が悪いんです!」


 怒鳴りつつトランクケースを開き、その後テキパキと装備を装着していく。そして、最後にローブを羽織って準備を終えた。


「よし、完了っと……」


 告げた途端、ジュジュが口を開く。


「男性の前で洋服を脱ぐのかと思い、少しドキドキしました」

「んなわけないじゃないですか!」

ご拝読ありがとうございます。

次話更新は一月二三日となっております。


カクヨムでも同一名義で連載中。

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