表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の知らない世界でも、時は刻まれている  作者: カドイチマコト
五章、けもの編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/77

第76話、古い家、尋ねてみたら王がいた。5


「陛下をお守りしろ!」

「下がれ! 下郎」


 各々の手には武器を携えている。察するに賊と間違われたらしい。とんだとばっちりを食らった。即座に弁明する。


「えっと、違います。私はなにも……」


 しかし言い終える前に、ユウコの怒声が響き渡った。


「控えい!」


 武器を携えている人たちより、この叫び声におののく。続いて説教が始まった。


「やりとりを把握しておれば、陛下が危機ではないことくらい分かるであろう! 判断力が足りん!」

「申し訳ございません」


 武器を携えている人たちは平身低頭――真っ当に仕事をこなしただけなのに、気の毒である。ここにユウシが割って入った。


「こちらこそすまぬことをした。ただ、あまりにも衝撃的な答えでな……つい」


 そう告げて、ユウシはすっと立ち上がる。そして、王宮の方へ少し顔を向けた後、軽く右手を上げた。


 ちらっと視線をやると、精霊を顕現させている手が多数。最早信じるほかない。本来の目的を遂げるべく、ユウシに声をかける。


「あの……」

「うむ……よし!」


 呼び止めたものの、ユウシは再び家に入っていった。


「どうだ!」


 次に見せられたのは、迷路みたいに彫られた五センチ角の小物。持っている場所には、人のような彫刻がついている。とはいえ、なにに使うのかまるで分からない。


「これは?」

「承認する際に使う王印だが……くそっ、だめか」

「ちょっと待って……」


 呼びかけるも間に合わず。三たび家に入っていった。


「魔物討伐に使用した特殊な素材で作られた剣だ」


 普通の武器にしか見えない。私が首を横に振ると、ユウシは急いで戻っていく。


「身を守る盾だ」


 王たる証明以前に、身体の傷を見る限り、守れてない。腕を重ねてバツを作り、却下した直後、ユウシが叫ぶ。


「ちくしょう!」


 しかし、これはいつになったら終わるのであろうか――考えていたところ、ユウコに話しかけられた。


「久方ぶりに父の楽しそうな姿を拝見できました。礼を言います」


 深々とお辞儀されたものの、ユウシが勝手に盛り上がっているだけである。


「いえ、なにもしておりませんよ、私」


 そう言って、顔の辺りで軽く手首を横に振った。話している最中、遠くからユウシの声が聞こえてくる。


「よし、こうなれば王宮、王宮に行こう!」


 ふと、視線を向ける。玄関先で腕を組んで立っていた。


「王宮ですか?」

「そうだ、もはやそれしかあるまい」


 そう言って、家の中に戻っていく。どうやらネタが尽きたらしい。上半身裸ゆえ、支度するのかと思いきや――ユウコがため息をつき、話しかけてきた。


「まったく……仕方ありません。私たちも行きましょうか、アカリさん」

「えっ? は、はい」


 ユウコに続いて家の中へ入り、廊下を進む。


 突き当たりの部屋に着くと、見覚えのあるテーブルにイスがあった。しかし、感傷に浸る間もなく、床にある穴が目に留まる。


「えっ! こんなところに? 昔あったかな……」


「移動に便利なので隠し通路を作りましてね。機密事項ですので、くれぐれも内密に願います」

「はい、わかりました」


 近づいてみると、梯子がかけられていた。注意しながら下りていったところ、降り立った場所は暗闇。精霊を顕現させ、灯りの代わりにして進む。


 しばらくして階段に行き当たった。こちらも梯子同様、勾配が割ときつい。慎重に上がっていく。


 着いた先は右手に壁、左手は布で仕切られている空間。布の下部より薄っすら光が漏れ、足元をやや照らしている。


 一寸先に光が差し込んでいる箇所があった。ふと視線をやる。布が分かれており、隙間が空いていた。その向かいには扉も見える。


「こちらです」


 ユウコに促され、分かれ目より共に中へ進む。


 そこは部屋を見渡せる高い舞台となっていた。その真ん中にドカンと鎮座する大きなイスらしき物。そして、正面に大きな扉も目につく。


 しかし、全てにおいて質素。外観と同じく飾り気がない。


「ここは?」


 尋ねたところ、ユウシの声が耳に届く。


「謁見の間だ」


 声のした方へ歩み寄り視線を向けると、ユウシがイスに腰かけている。こちらを見つつ腕を組み、語りかけてきた。


「さすがにこれで分かったであろう」


 そう言ったとて上半身裸。偉そうにしたところで滑稽でしかない。


 とはいえ、これでようやく本題を切り出せる。ユウシの正面に立ち、姿勢を正した後、一呼吸置いて語りかけた。


「実は、お願いしたい件がございまして……」

「ん? 陳情か、申してみよ」

「大森林に生息する動物を保護してほしいのです」

「保護とな?」

「とても大人しく役に立つのですが、人の手により危害を加えられております」

「なるほど、それを頼むためにここに来たのだな」

「はい、ぜひともご検討を……」

「では、こうしよう。軍事特区の外に囲いを設け、ひとまず保護した上で周知を徹底させよう。これなら万が一暴れたとて対処しやすい」

ご拝読ありがとうございます。

次話更新は一月八日となっております。


カクヨムでも同一名義で連載中。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ