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第7話、だるかった、この結果には不満足、2

作者からのお断り。

構想は定まっていますが、執筆速度が激遅ゆえ、完結まで相当時間が掛かります。

興味のある方は作品をフォローして、気長にお待ちください。<(_ _)>


「こんにちは。よろしくお願いします」


 声をかけて、受付に受験票を手渡す。確認した男性は、バインダーに一枚の紙を挟み、こちらに差し出した。受け取って目をやると、紙は記入用紙であった。


 それを見て、試験の内容がようやく判明する。体力と魔力の測定に、武術と魔術の実技であった。


 自業自得とはいえ、体調は万全ではない。私は武術と体力測定はほどほどに済ませようと決めた。


「最初はどこに行けばよろしいでしょうか?」


 早く終わらせ、帰って休もうという一心から、受付の男性に尋ねる。


「まだ一般の受験者が終了しておりません。しばらくお待ちいただけますでしょうか?」


 意図は測りかねるものの、貴族とは時間を分けて試験を行っているらしく、案内書に十時頃と曖昧に記載されていたのは、これが理由かもしれない。


 先ほどグラウンドにいた人たちは、本番前に練習しているのではなく、試験の真っ最中だと分かった。


 しかし、貴族の受験生たちがやって来る前であり、人は少ないはずである。今から試験を行えばさっさと終わりそうな気がした。ゆえに、思い切って提案してみる。


「私は一般の受験生たちと同じでも全然構いません」

「しかし……」


 受付の男性は言葉に詰まった。その時、コツコツと足音が聞こえ、七三に分けた前髪をヘアピンで留めた黒いスーツを着た女性が後ろを通りかかった。


 目つきは鋭いものの、美人である。凛とした佇まいに服装が映え、それを引き立てていた。


「すみません」


 受付の男性は女性を呼び止める。そして、何やら話し始めた。


「では、どうぞこちらへ」


 軽く微笑んだように見えた女性は、そう言って歩き出した。


 試験の場所へ案内してくれるようである。しかし、床には矢印が描かれており、これを目印に進めば、たどり着けるようになっていた。


「ここが魔力測定、そしてその隣が体力測定になります」


 部屋の手前に着くと、女性が小さな声で説明をし、どうぞと手で合図する。私はそれを見て軽く会釈をした後、足を踏み入れた。


「よろしくお願いします」


 魔力測定にいた試験官Aに挨拶をしてから席に着く。しかし、返事はない。


 目の前には手の形が描かれた板の先に、小さな魔石が取り付けられた装置が置いてある。


「こちらに手を乗せればよろしいのでしょうか?」


 念のため尋ねたところ、素っ気ない返事が返ってきた。


「見ればわかるだろ」


 嫌な感じだなと思いながら、そこに手を乗せる。すると、魔石付近に取り付けてある小さな筒状の鯉のぼりのような旗が、ゆらゆらとなびき始めた。これを見て、身体から漏れ出る微量の魔力を測定する装置ではないかと推測した。


 旗を眺めてじっとしていると、突然試験官Aが声を上げる。


「一気に全開して」


 その言葉を聞き、思わず言い返してしまう。


「この大きさの魔石に、私が一気に魔力を注入すると、壊れてしまいます」

「いいから早くしろ!」


 口調が荒くなった試験官Aの催促に、しぶしぶ全力で魔力を注ぎ込む。ピシッという乾いた音が聞こえ、魔石に無数の亀裂が走る。そして、蜘蛛の巣のように広がって、粉々に砕けた。


 予想通りの結果となり、そっと目を合わせる。


「チッ」


 舌打ちをし、試験官Aは破片を手で払いのけた後、装置を交換した。


 気まずい雰囲気の中、腕を組んだまま何も言わない試験官Aの態度に困惑していると、靴音がタン、タン、タン、タンと鳴り始める。


 それを催促だと捉え、新しい測定器に魔力を注ごうと、腕を伸ばす。


「ちょっと待て! お前また壊す気か! これ、いくらすると思っているんだ!」


 試験官Aは怒鳴り声を上げ、私の手を掴んだ。


 それを聞いて頭を働かせる。私が購入したブーツは、一足で金貨五十枚だ。魔石は二個ついており、その半分の大きさであるため、四分の一の値段だろうと考えた。計算上では十三枚、高くても二十枚は超えることはないと予想し、間を取って答える。


「えっと、金貨十七枚くらいでしょうか?」


 そう答えると、試験官Aは顔を赤くし、壊す勢いで机をドンと叩く。


「そんなに安いわけがないだろ!」


 しまった、そういえば年末セールで購入したので、割引き分を考慮していなかった。しかし、正解が気になる。私は率直に値段を尋ねてみた。


「では、おいくらでしょうか?」


 試験官Aは私の言葉を聞いて大きくため息をつく。そして、手のひらを上にし、人指し指でクイックイッと合図した。


「紙、記入用紙よこせ!」


 大きな声でそう言われ、バインダーを両手で差し出す。試験官Aは片手で奪うように受け取ると、置いてある数種類のスタンプの一つに手を伸ばし、バンと勢いよく押印した。


 無言で返却されたそれに目をやる。試験結果は測定不能とされていた。しかし、これでは魔力がなく、検知できないとも読み取れる。


 バインダーを下にずらし目で訴えると、早く行けとばかりに、しっしっと手で合図されたため、腑に落ちないが、隣の体力測定に移った。

ご拝読ありがとうございます。

視力が悪く文字を拡大して執筆しているため、改行が多く読みにくいかもしれません。

誤字脱字には気をつけておりますが、お気づきの点がありましたら連絡いただけると幸いです。


主人公の前日譚もあります。

https://ncode.syosetu.com/n3734jx/


カクヨムでも同一名義で連載しております。

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