第67話、忘れ物、取りに行ったらなにか出た。2
前回、魔法は避けられたゆえ、ガントレットの魔石で対処する。さらに念を入れ、突き刺せるように、真ん中付近を持っている蛇の牙を端に持ち替えた。
しかし、準備は整ったものの、まだ気づかれない。
いずれにせよ、対峙する羽目になる。それゆえ、足を踏み鳴らし、私の存在を知らしめた。すぐに長い胴体の動物はこちらを向き、唸り声を上げる。
「ガーッ」
響いた直後、どこからともなく雄たけびが轟いた。
「アアアアーッ」
「えっ、また来た?」
長い胴体の動物は、キョロキョロと顔をせわしなく動かしている。そして程なく、大きな影が忍び寄ってきた。
「上?」
慌てて見上げる。次の瞬間、大きな物体が舞い降り、長い胴体の動物に被さった。声から予想できたものの、やはり先ほどの大きな動物――
片方の前足で踏みつけ、残る足でペチペチ叩くように攻撃している。犬であればかみ殺すであろう。この様子から察するに、あれは犬ではなく、恐らく猫。
それはそうとして、肉食動物同士の戦いという見慣れない光景に、目が釘づけになった。
そうこうしているうちに、長い胴体の動物が反撃する。踏みつけている足をガブリと噛む。すぐに猫らしき大きな動物は足を持ち上げ、激しく地面に押しつけた。
「キッ」
短い叫び声が聞こえた後、顔が足より離れる。長い胴体の動物は口から血を流し、ぐったり。ここで間髪入れずに、猫らしき大きな動物は、前足で勢いよく叩いた。すると、長い胴体の動物は、血しぶきをまき散らしながら、私の前に転がってくる。
「きゃっ」
驚きのあまり、小さく悲鳴を上げてしまう。そして、視線を落とし見やった。ヒクヒクしており虫の息。勝敗は決したようである。
となれば、私の脅威は正面にいる猫らしき大きな動物。瞬時に視線をやったところ、またしても逃げていく。しかし例の如く、木の陰からこちらを覗いている。
再び長い胴体の動物に意識を戻した。
動かないものの念のため、手に持っていた蛇の牙を顔に突き立て、とどめを刺す。これで完全に息絶えたであろう。ふと悩む。
「うーん。困ったな……」
猫らしき大きな動物が隠れている方向は帰り道。あの様子では襲ってくる確率は低いと考えられるものの、生きて帰るには、念には念を入れ、万全を期したい。
「あとで綺麗にすればいいか……よし!」
私が戦っていたとて同じことと開き直り、ローブは汚れるのを我慢して、長い胴体の動物を頭上高く持ち上げた。
「えーい」
声とともに、猫らしき大きな動物の近くに投げつける。ドサッと音を立てて落ちると、すぐに飛び出し、咥えて走り去った。
この光景から見るに、たくさんあった死骸は巨大なカエルではなくあれが処理した模様――とか、のんびり考えている暇はない。戻ってくる前に急いでこの場を離れる。
道中、魔物と遭遇することなく、順調に距離を稼げた。
「もう、大丈夫だよね……」
一息つき、周囲を見渡す。特に問題はなさそう。うまく逃れたようである。ここで、きれいにしてから戻ろうと決めた。
「ふんふんふーん。今日はずいぶん汚れちゃったな」
鼻歌交じりでローブを脱ぎ、魔法を放った直後、ドンと大きな物音がする。
「今のはいったい……」
慌てて視線を向けたところ、揺れている大木が目に留まった。あそこになにかいるのは間違いない。目を離さぬようにして急いでローブをまとう。
しかし、待てど暮らせど姿を現さず――しびれを切らし声を上げた。
「隠れてないで出てきなさいよ!」
すると、のそっと大きな物体が動き、顔を覗かせる。目を疑った。そこにいたのは猫らしき大きな動物。
「なんでここまで……」
ここでふと思う。もしかして、あれは犬ではなかろうか。そうであれば嗅覚が優れているため、においで追跡できる。とはいえ、なんとかせねばならない。
不用意に叫んだこともあり、辺りが騒がしくなってきた。場所を変えるべく動く。すると、猫らしき大きな動物は私についてくる。
「しつこいな……」
この後、付かず離れずの状態が続いた。動けば同じように、逆に近づくと離れていく。そして、さっと目をやると、隠れてしまう。
「どうしたものかな……」
ここなら木を盾に身を守れる可能性がある。しかし、草原で襲われてしまえば、防げるものがなくイチコロ――
「よし、こうなったら」
ネズミに似た生物を利用して、離れたすきに煙に巻くことにした。獲物が一匹ではすぐに戻ってくると考え、時間を稼ぐべく、複数匹出現させる。
急いで植物型の魔物を探し、花を切り飛ばす。悲鳴を聞きつけ、ネズミに似た生物が寄ってたかってきた。猫らしき大きな動物も、それにつられる。
他の魔物にも注意しつつ、蔓を目安に次なる植物型の魔物を見つけると、すかさず魔法を放つ。運よくネズミに似た生物が二匹走ってきた。
「やった!」
小さくガッツポーズして動向を見守る。猫らしき大きな動物は一匹をその場で食べ、もう一匹を咥えて走り去った。
「えっ……」
呆気を取られ固まる。先ほどの場所へ目をやったところ、ネズミに似た生物はいなかった。
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次話更新は十一月二十四日となっております。
カクヨムでも同一名義で連載中。




