第63話、爺様を、助けに向かい死にかける。1
五月中頃のある日、捻った足が完治したこともあり、依頼をこなすべく、久々に冒険者組合に向かっていた。
実を言うと、一週間前にはすっかり良くなっていたのである。
不自由なため、早く元通りになりたい一心から、軽い傷や汚れを落とせるあの魔法を試しに何度か放ってみたところ、痛みが和らいで一般的な日数よりも早く治癒した。
しかし、急に回復して怪しまれても困る。それゆえ包帯を巻いて隠し、足を使えないふりをしていたため、おおっぴらに出歩けなかった。
医療健康科の授業に出席するたび、講師のシュニンに足の状態を確認されそうになり、ヒヤヒヤしたものの、なんとかうまく切り抜けた次第である。
あれからソウナといえば、ミナとも少し話すようになり、緩やかではあるとはいえ、順応している様子。一方、ハクたち一味の動向はあれ以降、不明であった。
しばらくして冒険者組合に到着した私は、重い扉をこじ開け、中へ立ち入る。
続いて、掲示板からいつもの依頼書を引き剥がし、受付嬢の待つカウンターへ足を進めた。すると、すぐさま笑顔で声をかけられる。
「お久しぶりですね。元気そうでなによりです」
普段より仮面やローブを身にまとい、全身を隠しているため、私の体調など分かるはずもない。型通りのお世辞。とはいえ、受付嬢の気分を損ねぬよう、軽くお辞儀をした。そして、依頼書と冒険者証をそっと置く。
「あー、最近変わった魔物が現れたらしいので、しばらくやめておいた方が……」
言葉を聞いてふと思う。それを退治するために依頼を出すのが冒険者組合ではなかろうかと。けれども、時間をかけてここまで来たからには、手ぶらでは帰りたくない。
手首を軽く振り、問題ないことを示した。
「そうですか……では、手続きいたしますので、しばらくお待ちください」
天然である受付嬢に伝わるか心配であったものの、ジェスチャーを読み取る才能は優れているらしい。
「はい、処理が終わりました。お気をつけて」
そう言って差し出された冒険者証を受け取り、軽く会釈して建物を後にする。そして、送迎馬車で外壁まで行き、そこから徒歩という普段通りの行程で大森林に辿り着くと、いつものように軽く身体をほぐしてから網を探した。
「あったあった。さてと、やりますか!」
探索を始め、植物型の魔物を発見し、花を魔法で切り落とす。ひとまず様子を伺っていたところ、ネズミに似た生物が二匹駆け寄ってくる。
以前より減ったものの、まだいるようであった。
「仕方ないな……」
ここからでは距離が遠いため、少し近づいた後、ブーツの魔石を発動させて、飛び上がる。その最中、なにやら大きな茶色い物体が、ふと視界に入った。
「なんだろう、あれ……あっ」
それに気を取られ、目標である花を回収することを忘れてしまい、急いで網を振るう。
「あーあ、やっちゃった」
地面に降り立ち、中を確認したものの入っていない。しょんぼりしながらその場所へ近づく。そこにあったのは、干からびている巨大なカエルであった。よく見ると、穴が二つ開いている。
「植物型の魔物に倒されたのかな……」
それにしては大きさが違うような気がしてならない。しかし、運が良い。
自分で倒していないとはいえ、冒険者組合に提出すれば報酬になる。すぐさま巨大なカエルの口をこじ開け、魔法で舌先を切り落とし、回収した。
「これ、結構良い値するのよね……得しちゃった。ふふ」
再び植物型の魔物を狩り始めたところ、またもや上空から変なものが目に留まる。
「うわっ!」
着地して慌てて身を隠す。視線の先に見えるのは鋭い牙が生えた大きな白い蛇の頭。
「どうしよう……ここにもいるんだ……」
蛇で思い浮かべるのは、先日の授業で西の鉱山に行った時、銅像の傍らにあった石碑の碑文。討伐に向かった者は、いずれも返り討ちに遭ったと記述されていた。
シエンならともかく、どう考えても私では太刀打ちできそうにない。
ひとまず周囲を警戒しながら確認し続ける。しかし、待てども微動だにしない。続けて、近くに転がっていた小石を拾って投げつけてみたものの、やはり反応はない。
「あれ……おかしいな……」
そっと横から近づいてみる。すると、胴体が途中から食いちぎられ、息絶えていた。残っている頭の部分に目を凝らすと、歯型のような跡が多数見受けられる。これを見て、切り上げ、撤収しようと決めた。
蛇を倒せる存在に私が敵うはずもない。受付嬢が言っていた変わった魔物のこともある。最早お手上げであった。
「はー、せっかく来たのにな……」
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次話更新は十一月四日となっております。
カクヨムでも同一名義で連載中。




