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私の知らない世界でも、時は刻まれている  作者: カドイチマコト
四章、ごたごた編

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第54話、公園で大立ち回り、足くじく6


「えっ、どうして?」


 思わず聞き返す。向かってくる四人は、見たところ、ただの学生。大森林で遭遇した巨大なカエルと、生死をかけた戦いをしたことに比べれば、なんてことはない。


 それに加え、ソウナの負った怪我のことを考えると、こいつらにも相応の報いを受けてもらわねば、釣り合わない。それゆえ、逃げるという選択肢などありえない。


 落ち着き払い、日傘をたたんだ私は、魔石を使うため、不必要な手袋を外しにかかる。しかし、ここで問題が起こった。汗で貼りつき、うまく取れない。


「あれれれれ、どうしよう」


 手間取っている間に、足の速い生徒の一人が迫ってくる。しぶしぶ諦め、呟いた。


「あーあ、これ、結構高かったのに……」


 このままの状態で対応するべく、顔の前へ右腕を近づける。そして、打ち込まれた竹刀が私に当たる寸前、魔力を込め、魔石を発動させた。


 強風が巻き起こり、手袋がバラバラになって四散する。それと同時に、竹刀も木っ端微塵になった。


「こ、こいつ、魔石使いやがるぞ」


 たじろぎながら叫ぶ生徒に、微笑みつつ話しかける。


「えっと、正当防衛でよろしいですね?」


 こちらに踏み出している足の甲に、ブーツの踵を重ね、軽く魔力を込めた。


「ぐおおおおっ」


 すると、声にならない悲鳴とともに、バキバキと気持ち悪い音が響き、足を押さえて生徒はうずくまる。さらにトドメとばかりに、側頭部に蹴りを入れた。


 動かなくなったのを確認して、すぐさま次に備える。しかし、生徒たちは足が止まり、その場で固まっていた。疑問に思い、尋ねる。


「あれ、かかってこないの?」


 こっちは一人で、あっちは一人倒れて残り三人。しかも私は女性である。とはいえ、簡単に蹂躙できると高をくくって手を出したものの、仲間が瞬殺されてしまえば、怖気づくのも無理はない。


 それはそうとて、戦意喪失したところで、こいつらを許す気など毛頭ない。


 傘を右手に持ち換え、左手を生徒にかざす。そして、精霊を顕現させ、立ち止まっている二人目の脛に狙いを定め、魔法を放つ。


「単式魔法陣、風」


 直撃すると、バキッという音とともに、足が変な方向に曲がり、悲鳴を上げて倒れた。威力が強すぎたかもしれない。


「あっちゃー、ちょっと加減しないと、まずいな」


 呟いた私は、呻いている生徒に歩み寄り、見下ろしながら言葉をかける。


「耳障りなので、少し静かにしていただけますか?それとも、強制的に黙らせましょうか?」


 すると、生徒は両手で口を押え、頷いた。前を見据えた時、ハクが叫ぶ。


「お前らなにやってんだ、クールダウンを狙え」


 その声に、残る二人が顔を見合わせた後、こちらに手をかざす。どうやら魔法を使うらしい。防ぐか、避けるか、魔法を被せて相殺するという手もある。いずれにせよ、初めての体験。


 ちょっぴり期待したものの、顕現させた精霊が放つ色を見て愕然とする。青いゆえ水系であった。単式であれば濡れる程度、食らったところでダメージはない。その後、放たれた魔法を目にして、思わず声が出る。


「おそっ!」


 全くもって当たる気がしない。


 しかしながら、こいつらの無能さには、怒りを通り越して呆れてしまう。貴族枠とはいえ王立学園という最高学府に入学というのに、勉学に励まずこの有様。正直、気分が悪い。


 さっさと終わらせるべく、行動に移る。つばの広い帽子を手で押さえつつ、地面に倒れ込む体勢になり、ブーツの魔石に全力で魔力を込めた。


 地面をえぐるような強風が巻き起こり、低空で勢いよく飛び出した私は、魔法をかわし、瞬く間に相手の裏を取る。


 そして、日傘をくるりと反転させると、両手で石突きを握り、持ち手の部分で身体を思いっきりぶん殴った。


「うげえええええっ」


 バキッという音が響き、生徒が嘔吐しながら倒れ込む。初めて依頼を受けた際に、同行してくれたジンが使った技の、二番煎じであるものの、上手く決まったようである。


 次の相手と対峙しようとした時、つま先に何かがコツンと当たり、目を落とす。日傘の持ち手がそこにあった。


「うそ……折れちゃった」


 それを眺めていたところ、風切り音が耳に届く。即座に反応してしゃがみ込み、距離を取るため、その体制から後方へ飛ぶ。すると、目の前にぺちゃんこになったつばの広い帽子が落ちてきた。


「お、お父様に買っていただいた帽子が……」


 そう言って、気配を探る。最後の一人が竹刀を構え、震えていた。こいつの仕業に違いない。睨みつけ、怒気を込めた声で告げる。


「あ、ん、た、ねぇ……」


 そして、ずかずか足を進めると、生徒はへたり込み、後退りしていく。大切なものを壊されたことにもさることながら、覚悟なく仕掛けてきたことに憤慨した。


「全く、何てことしてくれたのよ!」


 そう叫び、折れて鋭利になった中棒で、生徒を突っつきながら追い回す。しかし、避けるのが上手く当たらない。イライラが募っていく。

ご拝読ありがとうございます。

次話更新は九月二十日となっております。


カクヨムでも同一名義で連載中。

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