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第5話、明日試験、急いで帰ろう屋敷まで、5

作者からのお断り。

構想は定まっていますが、執筆速度が激遅ゆえ、完結まで相当時間が掛かります。

興味のある方は作品をフォローして、気長にお待ちください。<(_ _)>

 扉を開けて建物を後にし、屋敷へ戻るべく、製造特区行きの乗合馬車に乗り込む。来るときと同じく、乗客はいなかった。


 貸し切り状態で出発した車内で、ローブを触って状態を確認する。表は乾いてガビガビだが、ボタンを一つ外して内側を見たところ、そこまでは染みておらず白いままであった。


 さっと脱いで裏返し、目立たなくしてから、終点まで仮眠する。


「う~ん」


 約一時間後、到着して起きると、眠ったおかげか、体調が少しマシになった気がした。


 馬車を降りて、鍛冶師組合に向かう。そこに預けていた靴と赤いトランクケースを受け取り、路地裏へ足を踏み入れる。


 誰にも見られないようにフードのついたローブを脱ぎ、仮面を外す。それらを袋に入れて、帽子を被って本を手に持った。


 その後、袋を赤いトランクケースに収め、ブラウスとスカートが汚れていないか確認してから、路地裏を後にする。そして、教育特区行きの乗合馬車に乗り込んだ。


 仕事の終業時間がまだなのか、私しかおらず、ここも貸し切り状態である。


 ここでも再び仮眠しようと思った。しかし、寝過ごして終点まで行くと、屋敷が遠くなり帰るのが遅くなるため、本を読みながら頑張って起きることに決めた。


 無事に屋敷近くの停留所で降り、ゆっくりと足を進め、帰宅する。


「お嬢様、お帰りなさいませ」


 門をくぐり玄関を開けると、執事が深々と頭を下げて出迎えてくれた。


「ただいま戻りました」


 笑顔で応えた後、階段を上がり部屋に向かう。


 いつもは帰りが遅く暗い部屋である。しかし、今日は窓から差し込む夕日の光が、柔らかく照らしていた。


 部屋のドアを閉め、赤いトランクケースから袋を取り出し、その口を開ける。そして、左手をかざし、白色の精霊を顕現させ、魔法を放った。


「単式魔法陣、光」


 白くうっすら光り輝くと、赤い樹液で汚れた装備一式が、洗濯した後のようにきれいになる。


 いつも起床時に目にしていた大変便利なこの精霊は、当初どう扱えばいいのか分からなかった。


 ブーツの扱いに慣れるため練習をしている最中、転んでしまった際に現れ、服の汚れを落としてくれたことがきっかけとなり、理解することとなる。


 他にも軽い傷程度なら治せるため、おかげで怪しまれずに、冒険者として活動できていた。


 そんなことをしていると、ドアをノックする音が聞こえた。


「はい」


 慌てて袋をベッドの下に押し込み、返事をする。


「お嬢様、お飲み物をお持ちしました」


 執事がティーセット一式を持って部屋に入ってきた。


 テーブルに置かれたティーカップに、琥珀色の液体が静かに注がれる。ほどなくして、部屋にレモンの香りが広がった。


 礼を述べようとしたとき、執事が先に口を開く。


「お食事のご用意ですが……」


 そう言われ初めて、出かける前に早く帰宅する、ということを伝えていなかったと気づいた。


 いつもより早いせいか、まだ準備ができていないようである。


 普段より完璧な仕事をこなしてくれる執事に、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


 このままではまずい。とっさに思いついた言い訳を微笑みながら返した。


「明日の準備をしたいので、後でお父様と一緒にお願い申し上げます」

「では、後ほどお呼びいたします」


 執事が部屋を後にすると、安堵のため息をつく。そして、イスに腰を下ろし、淹れてくれた飲み物を静かに口に運ぶ。


 疲れた体に染み渡る爽やかな酸味とほのかな渋みをゆっくりと味わいながら、冒険者組合での出来事を思い浮かべる。


「受付嬢のお姉さんに心配をかけちゃったな……」


 そう呟いた直後、馬の鳴き声が聞こえた。窓の外に目を向けると、屋敷の門前に、馬車が停まっている。


 お父様が帰ってきた。


 慌てて立ち上がり、テーブルにティーカップを置く。そして、出迎えるために階段を駆け下り、玄関へと急いだ。


「お帰りなさいませ、お父様」

「おぉ、今日は早いな!」

「明日、王国学園の試験なので、早めに帰ってきました」


 少し驚いた様子の父親に、微笑みながら答える。

 その後、部屋に戻ると、しばらくして執事が尋ねてきた。


「お食事のご用意ができました」


 それを聞いたとき、最近父親と一緒に食事をしていないことを思い出す。


 父親のシドウは毎日早く出かけるため、寝るのも食事の時間も早く、暗くなってから帰ってくる私とは、なかなか時間が合わない。


 久しぶりに一緒に食卓を囲み、明日の王国学園の試験のことを話しながら、食事を済ませる。


 その後、父親の入浴を待ってから、温かい湯に浸かり、疲れた身体をゆっくりと解きほぐした。


 風呂を出て部屋で髪を乾かし、明日のことを考えながらベッドに横になる。そしていつしか眠りに落ちていた。

ご拝読ありがとうございます。

視力が悪く文字を拡大して執筆しているため、改行が多く読みにくいかもしれません。

誤字脱字には気をつけておりますが、お気づきの点がありましたら連絡いただけると幸いです。


主人公の前日譚もあります。

https://ncode.syosetu.com/n3734jx/


カクヨムでも同一名義で連載しております。

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