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私の知らない世界でも、時は刻まれている  作者: カドイチマコト
三章、外出編

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第35話、そっといる、白い頭と白いやつ3


「ところで先生、精霊さんはどのように育成するのでしょうか?」

「育成方法ですか?」

「はい」

「別に難しくはありませんよ。契約者の魔力を取り込み、自然に成長していきますので。ただし、心理状況は重要な要素ですね。楽しいとか、嬉しいとか、表現豊かで前向きな感情の人が向いています」

「ジュジュ先生とか苦手そう……」


 思わず名前が口から出た。しかし、その言葉とは裏腹なことをセイジは告げる。


「ジュジュさんは、結構育成上手だと思いますよ」

「そうなのですか?」

「魔法を放つ際に拝見しましたが、全ての精霊の大きさに差がないんですよ」

「なるほど」

「苦手な人といえば……そうですね、シエン殿とか……」


 予想外の名前を耳にして、ふと呟く。


「何でもそつなくこなしそうなのに、意外だな……」

「忙しすぎて、悩みが多いんですよ、多分」

「なるほどね」


 シエンとのこれまでのやりとりからして、何となく分かる気がした。そして少し間が空いた後、セイジが言葉を発する。


「話が逸れましたが、その他にはこの人のために頑張ろうと精霊に思わせる行動も必要ですね」


 さらりと述べているが、それだけでは何をすればよいのか、いまいちよく分からない。参考までに尋ねてみた。


「例えば、どのようなことをすれば良いのでしょうか?」

「そうですね、話しかけるとか」

「そんなことでいいのですか?」


 あまりの簡単さに、私は驚きの声を上げてしまう。


「はい、寝起きに守ってくれていた精霊に、労いの言葉をかけるとか……」


 ここでもう一つ興味を引く話が出てきたため、セイジに尋ねる。


「あれって、守っているのですか?」

「そうですよ。寝てる間に使役者が襲われでもしたら、精霊たちも困りますからね」

「てっきり遊んでいるものだと……」

「まぁ、遊んでいるのもいるでしょうけど」


 ここでセイジが話を戻してきた。


「しかし残念です。育成の才能ありそうなんですけどね」

「申し訳ございません」


 謝罪した後、沈黙が訪れる。気まずい雰囲気の中、話題を探していたところ、再び話しかけてきた。


「先ほどの件ですが、あなたの白い精霊は恥ずかしがり屋さんなのかもしれませんね」

「そうなのですか?」

「人もそれぞれ性格が違うように精霊も千差万別です」


 人間関係も大変だけど、精霊にもそのようなことがあるのかと、少し考えてしまった。そしてセイジが言葉を重ねる。


「しかし、一度くらいはお目にかかりたいものですね。ところで、その白い精霊はどのような能力をお持ちなのですか?」

「汚れを綺麗にしたり、小さなケガなら治せます」

「うーん、よく分からない性能ですね……しかし興味深い。一度、私に預けてみませんか?」


 提案に間髪入れず答えた。


「えっと……ごめんなさい」


 いなくなると、依頼を受けた後に装備を綺麗に出来ない。それよりも、物心ついた時から共に過ごしてきたゆえに、離れるのが嫌だったのである。


「まぁ、そうですよね。失礼しました」

「いえいえ」

「そうそう、一つだけ忠告しておきます。その精霊は、他人に見せないほうが良いですよ」

「どうしてですか?」

「希少ですからね。最悪、奪われる危険があるからです」


 珍しいだけで価値があるかどうかわからない。しかし、その理由で養女とはいえ、領主の娘に手を出すようなお馬鹿さんはいないだろうと思いつつ答える。


「わかりました。肝に銘じておきます」


 しばらくして、終業の鐘が鳴った。


「さて、終わりましょうか」


 セイジのその言葉を聞いて、礼を述べる。


「本日はありがとうございました」


 念のため、セイジを職員室まで送って行き、自室へ帰った後、ミナを誘い、一緒に昼食を取った。そして時間を調整し、二限の医療健康科を受講するため再び学園に向かう。


 授業を終え、寮へ戻ったところ、警備員に声をかけられた。


「お手紙を預かっております」

「ありがとうございます」


 ミナと別れ、自室で封筒を眺め、呟く。


「誰からだろう……」


 開封して中から出てきたのは、魔導鍛冶科からの知らせであった。


「きたーっ」


 ベッドに飛び込み、急いで内容を確認する。西の鉱山への集合時間は午前六時、土曜日に出発、火曜日に学園到着となっていた。


「あっちゃー」


 夕食時、食堂でミナにこのことを伝える。


「ミナ、私ね、土曜の朝から四日間、魔導鍛冶科の授業で西の鉱山に行くんだ」

「へー、泊まり? 気をつけてね」

「だから、月曜日の魔術科の終わりに迎えに行けなくなっちゃった。ごめんね」

「そんなこと気にしなくていいよ、アカリ。いつもありがとう」

「あと、一つお願い、帰ってきたら土曜日の医療健康科の内容教えて」

「うん、わかった。でも、西の鉱山ってどんなとこだろうね」

「ん? 知りたい? 本で読んだ範囲で教えてあげるよ、ミナ」


 この後、引くほど魅力を語って、満足した私は自室に戻り、眠りにつく。


 そして、木曜日と金曜日は予定通り自室で復習をして過ごし、待ちに待った土曜日がやってきたのであった。


ご拝読ありがとうございます。

次話更新は六月十七日となっております。


カクヨムでも同一名義で連載中。

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