第3話、明日試験、急いで帰ろう屋敷まで、3
作者からのお断り。
構想は定まっていますが、執筆速度が激遅ゆえ、完結まで相当時間が掛かります。
興味のある方は作品をフォローして、気長にお待ちください。<(_ _)>
外壁の門から大森林までは、徒歩で約三十分。
この道は手前まで分岐点がなく、迷う心配はない。しかし、いつ魔物に出くわすか分からず、油断は禁物である。
暖かな日差しの中、周囲を警戒つつ小走りで足を進めると、大森林手前の十字路まで来た頃には、心地よく身体がポカポカと温まっていた。
「いち、にい、さん、しい」
軽くストレッチをしてから、昨日討伐を終えた場所に向かう。そして、目印である枝に結んだ白いハンカチを探し始める。
この依頼を何度もこなすうちに、私は効率よく倒す方法や、見つけるためのコツをつかんでいた。
死ぬときの悲鳴で、他の植物型の魔物が蔓を伸ばしてくる習性を利用すれば、次の標的の位置はすぐに特定できる。悲鳴を無力化するには、音が聞こえないくらいの遠距離から狙えばよい。
魔法の命中精度に自信がある私にとっては、うってつけの相手であった。
「見つけた」
白いハンカチを発見して、最後に蔓が伸びてきた方向へと歩き出す。目を凝らしつつ探索したところ、難なく植物型の魔物を発見した。
左手をかざし、一体の緑色の精霊を顕現させた後、魔力を供給して、魔法を放つ。
「単式魔法陣、風」
精霊がうっすら光り輝き、三日月状の鋭利な魔法弾が打ち出される。
風切り音を立てながら飛んでいき、花の付け根を打ち抜くと、植物型の魔物は赤い樹液を撒き散らしながら悲鳴を上げた。そして、いつものようにすぐさま他の蔓が近くに伸びてくる。
冒険者組合に提出するため、切り落とした花が必要である。とはいえ、この状態で向かうと蔓に襲われてやられてしまう。
再発動が可能になるクールダウンが終わるのを待ち、安全を確保するため、蔓を伸ばしてきた植物型の魔物の花を魔法で切り飛ばし、動けなくした。
普段は全身が汚れないように、赤い樹液が完全に飛び散るのを待ってから、ゆっくりと回収する。しかし、今日は時間を短縮するため、魔石を使うと決めた。
ブーツやガントレットに装着しているこれらは、水・火・風・雷・土の属性を行使し、刻印と文様によって、その範囲を自由に調整できる優れもの。
魔力さえあれば誰でも使え、一瞬で発動できるという特徴から、汎用性が高く、非常に有効な物であった。
その一方で、魔法とは違い強烈な威力を出すことは難しく、属性や形が固定されているという欠点も存在していた。
「せーのっ」
そう口にして魔石に魔力を込めた瞬間、地面を抉るような強風が巻き起こる。それと共に、最初に討伐した植物型の魔物の元へ一瞬で駆けつけた。そして、落ちている花を素早く拾い回収する。
赤い樹液を浴び、白いローブが染まり始めた。しかし、気にせず次の標的へ目をやり、即座に魔法を放つ。
「単式魔法陣、風」
四体、五体、六体……舞うように動き、蔓を目安に次々と倒しつつ花を回収していく。
植物型の魔物の悲鳴がこだまする中、不意にガクンとした感覚に襲われる。そして、疲労感が漂ってきた。どうやら、魔力を使い過ぎた反動らしい。
今日のところはこれで切り上げ、冒険者組合へ戻ることにした。
回収し忘れた花がないか周囲を見回すと、辺り一面は血の海のように、赤い樹液が地面を浸していた。
白いローブも見る影がないほど深紅に染め上がり、酷いありさまである。
「疲れたな……」
集めた花を数えるため、休息を兼ね、木にもたれかかってへたり込む。すると、べちゃっと音が聞こえ、地面から生温かい感触が伝わってきた。
「あっ、まあいいか……」
普段ならうわーっとなり、気にするところである。それなのに、今はとにかく座りたいという気持ちが先に立っていた。
状況から察すると、樹液に違いない。しかし、それが魔物の排泄物であっても、どうでもよいほど疲れていた。
袋を開いて中を見る。そこには刈り取った花が十三個入っており、活動時間の割には多かった。とはいえ、汚れもひどく、疲労感が強すぎる。
今後はゆとりを持って行動し、二度とこの方法は使わないと心に誓った。
しばらく休んだ後、ゆっくりと腰を上げる。そして、冒険者組合に戻るべく、大森林を後にし、ふらふらと歩き始めた。
ご拝読ありがとうございます。
視力が悪く文字を拡大して執筆しているため、改行が多く読みにくいかもしれません。
誤字脱字には気をつけておりますが、お気づきの点がありましたら連絡いただけると幸いです。
主人公の前日譚もあります。
https://ncode.syosetu.com/n3734jx/
カクヨムでも同一名義で連載しております。