第20話、大変だ、貴族はびこるゆとり校、2
ジュジュとの話を終え、寮に帰った私は、部屋に戻り普段着に着替える。
しばらくして昼食を取るため、ミナと一緒に食堂へ向かうと、そこに見知らぬ二人がおり、楽しそうに談笑していた。マキが以前話していた在校生だろうか?
「こんにちは」
声をかけたところ、顔をこちらに向け、二人は挨拶する。
「新入生? 三年のナナです。よろしく」
「二年のフミだよ。よろしくね」
気さくな雰囲気で応えた様子を見て、歓迎されていると安心したのも束の間。
「あなた、きれいな髪の色ね」
「ほんとね、それ、地毛?」
二人にそう言われて心臓がドキッとした。そして言葉に詰まり、沈黙していると、ミナが口を開く。
「ね、アカリの髪、綺麗でしょ」
言葉に二人が反応する前に、ぐぅと私のお腹が鳴ってしまう。
「あら」
その声で聞かれたことに気づき、恥ずかしさでいっぱいになった。
「もうこんな時間、お腹も空くよね」
「食事の邪魔しちゃ悪いから、私たち行くね。バイバイ」
二人が食堂を後にしたところで、ぽつりと呟く。
「ミナ、ありがとね」
「何か言った、アカリ」
「ううん、何でもないよ。ご飯食べよ」
そう言って私たちは席に着き、注文した後、食事を始めた。
昼食を終え、部屋に戻る。そしてイスに腰を下ろし、明日からの予定を考え始めた。
授業は月曜日からである。ミナは土日は孤児院に戻り、手伝うと聞いていた。同行して久しぶりの園長であるアスナに会いたい、そう思う考えもある。
「うーん……」
しかし悩んだ末、あれが成功するか確認したい気持ちの方が勝り、植物型の魔物の討伐に向かうことにした。
翌日、虫取り網を手に、前回と同じ道順で、意気揚々と冒険者組合に到着した私は、依頼を受け、大森林へと足を運んだ。そして、白いハンカチを探し、発見した後、辺りを見回してみる。しかし、植物型の魔物の姿はどこにもなかった。やはり、ネズミに似た生物が倒してしまったようである。
この辺りにはいないのであろうか、耳を澄ませても悲鳴はおろか、かじる音さえ聞こえてこない。
性質を逆手に取り、大声を上げて、植物型の魔物の蔓を呼び寄せようかと頭をよぎったものの、不測の事態が起こるとまずいのでやめた。
こうなったら勘を頼りに探すしかない。周囲を警戒しつつ歩くこと数分、ようやく発見する。それまで不思議なことに、ネズミに似た生物と遭遇することはなかった。
意気消沈しながらも気を取り直し、植物型の魔物と対峙する。せっかく準備してきたのに無駄になってしまった。しかし念のため、渦巻く竜巻をイメージしつつ、魔法を放つ。
「単式魔法陣、風」
魔法弾が命中し、花が切り離され、空高く舞い上がる。すると、けたたましい足音と共に、驚くべき速さでネズミに似た生物が数匹飛び出し、群がった。
どこかに隠れていたようである。
網を構え、タイミングを計っていたところ、他の植物型の魔物の蔓も伸びてきた。おかげで次の標的も定まった。
周囲を警戒しつつ、そこに歩を進めながら、花が落下し始めたのを見計らい、足の魔石に魔力を込める。そして上空へ飛び上がり、虫取り網を振るった。
「えぃ!」
花がすっぽりと収まり、思わず声を上げる。
「やったー!」
ローブもあまり汚れることなく、きれいなままであった。いい感じである。
再び魔石に魔力を込め、安全な場所に着地した後、伸びてきた蔓の先にいる植物型の魔物に魔法を放った。
ネズミに似た生物は、そこにも迫ってくる。しかし、一匹だけであった。
「あれ……」
拍子抜けしながら、花を回収しようと動き始めた時、異変を感じる。
かすかに地面が揺れ始め、ドスンドスンと音が聞こえてきたかと思うと、次第に大きくなっていく。そして突然、辺りが暗くなった。
「ん?」
ふと見上げたところ、巨大な何かが落ちてきた。
ご拝読ありがとうございます。
次話更新は四月二十五日となっております。
カクヨムでも同一名義で連載中。




