第14話、嬉しいな、再会できた親友と、2
「あった!」
「よかった!」
「また一緒に過ごせるね」
「ふふっ、よろしくね」
ミナとこうして話をしているうちに、ふと孤児院の園長先生の顔が目に浮かんだ。
「ところで、アスナさんは元気にしてる?」
その問いかけにミナは答える。
「すごーく元気だよ」
「たまには顔を出さないとね」
以前は定期的に足を運んでいたものの、冒険者登録をしてから疎かになっていた。
「うんうん、きっと喜ぶよ」
話が途切れた時、校舎へ顔を向けたミナが告げる。
「ごめんね、アカリ。そろそろ戻って手伝わないと」
その言葉を聞き、校舎にある時計に目を向けた。時刻は十一時を指している。
しかし、そう言って両手を合わせながら片目をつぶるミナの姿を目にしていると、可愛すぎて思わず抱きしめたくなった。
「ミナ、そこまで送るよ」
「ありがとう、アカリ」
一緒に校舎を通り抜け、学園の裏門をくぐり、建物の間を縫うように足を進めたところ、大きな広場に出る。そこに送迎馬車の停車場があり、馬車が止まっていた。
「じゃあ、またね!」
「うん、またね!」
別れの挨拶を交わし、遠ざかる馬車を手を振りながら視界から消えるまで見送った後、来た道を引き返す。その途中で、「王立学園女子寮」と書かれた館銘板が目に留まった。
通学時間や馬車の費用を思うと、寮生活も悪くないかもしれない。そう考え、建物に入ってすぐの場所にあった警備室で尋ねる。
「すみません。寮の案内をいただきたいのですが……」
「少々お待ちください」
そこにいた女性警備員はそう言った後、席を外し、奥へと消えた。そしてしばらくして冊子を手に戻ってくる。
「お待たせいたしました。こちらになります」
「ありがとうございます」
受け取った後、それをリュックサックしまう際、中を見てメイド服のことを思い出した。
「すみません。重ね重ね申し訳ないのですが……」
女性警備員に試験の時の事情を説明し、返答を待つ。
「了承いたしました。こちらより返却させていただきます」
「よろしくお願いいたします」
そう言って、軽くお辞儀をし、帰宅の途につく。
二時間ほどして屋敷に着くと、汗をかいた服を着替え、遅い昼食を取った。その後、部屋に戻って、先ほど女性警備員に貰った冊子に目をやる。それは、女子寮の案内書と申込書であった。
ベッドに寝転がり目を通す。
「凄い……」
一階には食堂、大浴場、ラウンジ、トレーニングルームがあり、二階は個室が八つある居住スペースとなっていた。寮費無料で、警備員が常駐し、メイドのサービスまである。
これを読んでいるうちに気持ちは固まった。
夜になり、父親が帰宅してから一緒に夕食を済ませた後、部屋を訪ねた。そして、思いを伝えるため、意を決してドアをノックする。
「お父様、お話がございます」
「入りなさい」
緊張しながらドアを開けると、父親は書類を広げて、熱心に読んでいた。深呼吸した後、姿勢を正し、落ち着いて話しかける。
「王立学園に合格しました」
「そうか、アカリおめでとう」
「実は、寮に入ってそこから通学させていただきたいと思っています」
その言葉を聞いた父親はゆっくり顔を上げ、老眼鏡を外した。そして、私を見つめ、静かに告げる。
「アカリがそう望むなら、儂は反対などせんよ」
その一言で一気に緊張感が緩んだ私は、弾んだ声で礼を述べた。
「ありがとうございます。お父様」
「おお、そうだ。必要なものがあれば今のうちに買いに行きなさい」
ごそごそと引き出しから袋を取り出し、父親は手渡そうとする。それを見てとっさに答えた。
「大丈夫です。必要なものは既に揃っています」
「そうか。分かった」
父親は疑問なく納得してくれた。そして、目的を達成したこともあり、仕事の邪魔にならないよう、ここで切り上げる。
「では、そろそろ部屋に戻ります。おやすみなさいませお父様」
「ああ、そうしなさい。寮生活、楽しみだな」
部屋に戻ると、急いで申込書に必要事項を記入し、執事に投函をお願いした。
数日後、結果が届き、それを開け、思わず声を上げる。
「やったー!」
入寮許可書と共に、私は新しい生活への第一歩を踏み出すのであった。
ご拝読ありがとうございます。
次話更新は四月十日となっております。
カクヨムでも同一名義で連載中。




