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9.

2人の目の前に大きな熊のような魔獣が現れた。

「なっ⁈魔獣は襲って来ないんじゃなかったの…私が読み間違えた?本が間違えてた?」

急いで2人に結界を張っている事を確認しつつも、突然のことにパニックになっていたクリスティーナ。

シルバートはそんなクリスティーナを守るようにして前に出て、魔獣に立ちはだかった。

「シルバート⁈」

「いいから下がってて」

そう言うとシルバートは右手を魔獣に突き出し魔術を発動し、炎に包まれた魔槍を放った。

魔槍は真っ直ぐに魔獣を刺し、倒した。魔獣の肉体は霧散し、雪の上に魔石が光っていた。

「ま…魔法が使えたの?」

「僕だけじゃないよ。パーゴスの国民は魔物の森に近いせいか、魔法を使える人がたまに生まれるんだ。数は多くないけどね。そういう人は、いつ魔物と戦うことになってもいいように訓練される。」

そう言いながらシルバートは魔石を拾った。

「そうだったの…さすがね、パーゴスは。本当に私の国は平和ボケしてたわね。」

「平和が一番だよ。」

ーーどの口が言うのよ、と言いかけてやめた。今は嫌味を言う場面じゃない。

「…助けてくれてありがとう。」

シルバートの瞳が少し驚いたように見開いて、ふっと力が抜けて穏やかな笑顔になると、拾った魔石をクリスティーナに渡してくれた。

「もう君を失いたくないからね。今度こそ…」

並んで立つとクリスティーナより少しだけ背が高いシルバートと顔がすごく近くなる。

真っ直ぐに見つめられてクリスティーナの心は揺れた。あまりにも好きだった。ずっと好きだった。前世から好きだった。

クリスティーナはシルバートの胸に自分の両手を拳にして叩きながら気持ちをぶつけた。

「だったら!何でっ!なんで裏切ったの⁈ 私の気持ち分かってたんでしょう?利用して嘲笑って…国を、家族の命を…私の命も奪って…そんな人を信じられると思う⁈⁈」

言いながらシルバートの胸をドンドンと叩く。そんなクリスティーナをシルバートはそっと抱きしめた。

「本当にごめん。確かに最初は利用するつもりだった。でも…クリスの事が大切になっていくに連れて…迷っていたんだ。結局国に逆らえなくて、君を失って…絶望した。あの後結界は全て消えたから魔物も国に入ってくるようになって、ただパーゴスはその対策もして軍事力を上げていたし、魔法士もどんどん育てて派遣していたから。僕もそれに加わって、死んだ。」

「!!」

「神に祈ったよ。もしやり直せるなら今度は君と生きていきたいって…」

そしたら何か声が聞こえて…

『機会をやろう…』って…

「そんな…じゃあ私の人生のやり直しもその声の主が…?」

「クリスにも記憶が残ってるなんて思わなかったから驚いたけどね。」

シルバートはクリスティーナを抱きしめていた腕をほどき、今は目的の場所に急ごうと、また歩き始めた。

クリスティーナは涙を拭いながら、その背に続いた。

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