4.
応接室でシルバート話をした後、クリスティーナは前回と同じく父である国王に、彼を宮廷音楽家として推薦しておいた。そして実際に彼の歌を聴き、陛下も王妃も大層気に入り、早速今度開催される兄エドワードの誕生日会で曲を披露することになった。
それから数日後、クリスティーナは自室で先日のシルバートとの会話を思い出していた。
***
「シルバート、あなたに記憶があるのなら、何故またこの国に来たの?また私を利用し戦を仕掛け、同じ未来を辿ろうとしたのね?」
「っ…ちがう…」
「何が違うのよ!!前回はよくも私のことを騙してくれたわね。箱入り娘のお嬢様の私はさぞ扱いやすくて、裏で嘲笑っていたのでしょうね…」
「そんなことはない!」
「私が殺されるところを見ておきながらよく言うわ……。」
ーー私の気持ちにも気付いていたはず。女性からの人気も凄まじかったもの。こちらの感情をサラリとかわしながら、思い通りに女の人を動かすのは簡単だったでしょうね。本当にバカだったわ…
「信じてもらえないと思う…でも俺は、貴女にもう一度会いたくて、この国に来たんだ。」
真っ直ぐに見つめられてそう言われたら、どんな女もイチコロだ。前世の私が、今の私の中で舞い上がって喜んでいる気がする。でも一度騙され死んだこの身はもうそれを素直には受け取れなかった。
「陛下への推薦はちゃんとしてあげる。でもそれだけよ。この国から出ることも、外部と接触することも許しません。あなたは今日よりこの王宮内で用意する部屋にずっと監禁されるの。いいわね?」
シルバートはその瞳に悲しみの色を携えながら返事をした。
「分かりました。仰せの通りに…。」
***
そうしてシルバートはとある一室に今も隔離されている。表向きには宮廷音楽家として王族に気に入られたから、としている。パーゴスの者であることは誰も知らない。例の会話をしている時も、腕輪の力でクリスティーナが結界を張って防音していたので、扉の前で控えていた従者や他の誰にも聞かれていない。
クリスティーナは腕輪を見ながら呟いた。
「私の魔力をなんとかしなくちゃ…結界が弱まっているなら、それを修復すれば戦は避けられるんじゃ…」
そう思い、クリスティーナは図書室へ向かった。