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3.

王宮内の応接室でシルバートと対面に座ったクリスティーナは、優美な彼の所作を見て王族や貴族への対応に慣れていると感じた。

「ずいぶん落ち着いてらっしゃるのね。」

「とんでもない、内心とても緊張していますよ。」

「そう、名前を聞いてなかったわね。私の事は分かるかしら?」

「大変失礼しました。フローガの姫君にご挨拶申し上げます。僕はシルバート。世界をめぐり人々に音楽を届ける者です。」

「先ほどの曲は本当に素晴らしかったわ。この後陛下にあなたの事を話すつもりよ。あなたに客室を使ってもらうから、安心してここで過ごして頂戴。」

「いえ、流れ者の自分にそこまでして頂くわけには…」

クリスティーナは目の前の男に対してもっと怒りが爆発するかと思っていたが、やはり前世では推し、前回の生で恋した人相手に、そこまで厳しく出来ない自分がいる。

ーーこの絆されやすさに付け込まれたのよね。

  でも今回は同じようにはさせないわ。

クリスティーナは周りくどく策略を巡らすのは得意ではない。直球勝負に出た。

「あなた、パーゴスの人でしょう?」

「!!」

相手が驚いているのをしっかりと見てクリスティーナは続けた。

「訛りでわかったわ。仲の良い国同士ではないけれど、商人も行き来してるし、そんな硬くならないで、安心して頂戴よ。」

「…では何が目的ですか?」

「あなたの国のこと、教えて欲しいのよ。」

シルバートはどういう事か必死で考えを巡らせているようだが、もっと理由は単純だ。前回はパーゴスがフローガを攻めた理由が分からないまま死んでしまった。だが元々両国はそれぞれ干渉せず上手く各々の国を纏めていたはずだ。それが何故あの時フローガを侵略したのか…それが知りたかった。

「何か理由があってフローガに来たのでしょう?私のことも広場で会った時から分かっていたみたいだし。戦、なんてことに繋がっては困るもの。」

シルバートは戦というワードに酷く悲しい顔になってこちらを見つめた。そして何かを考えたのち、彼は語り始めた。

「……パーゴスは…」

彼はパーゴスの南の方、つまりフローガ寄りの農村出身で4男坊。家は貧しく両親に負担をかけないために自分の食い扶持は自分で稼ぐ、と家を出て吟遊詩人となった。もともと自分に才能があるのは感じており、各地で歌を歌い儲けていた。その評判がパーゴスの王家の耳に入り、シルバートは王家御用達の音楽家となった。

そこでパーゴスの王太子クリオにも気に入られ、よく話すようになった彼は、国民には知らされていない秘密を打ち明けられる。

北の山々に張られていた結界に綻びが出ている。近々魔獣が国内に侵入してくる可能性がある、と。

クリオは好戦的な性格で、フローガによる陰謀だと決めつけて陛下に報告し、パーゴスの王家はフローガの裏切りに対し怒り、戦争も視野に入れているという。

シルバートはクリオに、フローガの王家に取り入って情報を自分に流すよう命じられた。

「だから僕は今ここにいるんです。」

クリスティーナは驚いた。まさか正直にここまでパーゴスの事情を暴露してくれるとは思っていなかったのだ。

何かがおかしい。彼の様子も、こんな話をペラペラと喋ってしまうのも…。まさかと思い彼に問いかけてみる。

「バカな事を聞くようだけれど…あなた、私が一度死んだあの時を覚えているの?」

シルバートは目を瞠り、どこが納得したような表情になって頷いた。

「あぁ、君もやっぱり記憶があるんだね。」

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