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08.オーラ機械

 ――おまえら……いったいどこから来た――。


 ミナミは自分に向かって言われたことに気づき、その声の方向に顔を向ける。目の前に見える変な乗り物。その荷台に寝そべっていた彼女と同い年くらいの若者がそう言ったのだ。


 ミナミは「っていうか、あたしだってここに居る理由がわからないんだけど……」と心の中で呟く。


 そのとき「テメェ! 俺を無視すんじゃねぇ!」と、叫ぶ声が聞こえた。それはさっき、彼女に(から)んできた男で、ミナミに近寄ってくる。


 彼女は「ってか、酒臭い……」と言い、もう一発男に叩きこもうと腰を落として構えを取った。


 彼女の構えに一瞬男はたじろぐが、周りの目もあり引けない感じになったのか、急に胸を張った。


「この小娘! いい気になりやがって!」


 男がそう叫び、拳を振り上げながらさらに彼女に迫る。


 けれども、男は酒に酔っているので、足元がおぼつき安定していない。


 ミナミは、男の拳を軽くかわす。


「ミナミ!」


 ヒカルが彼女の名を呼ぶ。彼はため息を吐きながら、続けてミナミに向かって告げる。


「やりすぎるなよ。後々面倒になるから」


 ミナミは「う~ん。そうは言ってもなぁ……」と、ヒカルへ言い返す。


「ちょこまかと逃げやがっ……あっ!」


 男の声が途中で止まる。


 男はミナミじゃない「何か」に目を向けていた。


「ゲッ! 団長!」「えっ! 団長」


 男がそう声をあげたが、同時に別の方向からも同じ言葉が聞こえた。彼女はそれを聞いて、別の声をあげた男のほうへ振り返る。


 そのセリフを吐いたのは、からんできた酔っ払いの男ではなく、ヒカルと一緒にいたケルヒだった。ちなみにケルヒが言った「団長」は、酔っ払いが言った「団長」とは異なる人物。


 二人とも同じく「団長」と呼んだが、ミナミが思うにその二人とも、デカいオッサンだった……。


 そのデカいおっさんの一人が叫ぶ。


「こらぁリーチ! てめぇ、非番とは言え、こんなところで酒飲んで若い娘に絡むとは、俺の顔にドロォ塗る気か? アァ!」


 ミナミが感じるに、なかなかドスの効いた声だった。十分……ヤクザの親分さんが務まるだろう。


「マルカドゥ団長。もうその辺で勘弁してやったら? 俺らだってこれから飲むんだし」


 一緒にいたもう一人のおっさん(団長)が「マルカドゥ」にそう告げる。


 ミナミ的には、一緒にいるこのオッサンもなかなかの迫力がある。体格からして「うちのオヤジとよい勝負ができそうだ」と想像した。


 マルカドゥと呼ばれた男が、リーチと呼ばれた酒臭い男をにらみ、言い放つ。


「このオウミ団長に免じて、今日は勘弁しておいてやるからとっとと行け!」

「はっ、はい!」


 ミナミに絡んだ男は、まるで漫画のようにすっ飛んで行った。


 そして、ケルヒが「オウミ団長!」と、声を出す。


「おう! ケルヒ、お疲れさん。その様子なら駆除の依頼は大丈夫だったようだな」


 オウミがそう言葉を返すと、ケルヒはオーラクターの荷台に寝ているダイタのほうを見ながら「はい、でもダイタに熱があるので、団の駐屯地へ戻って休ませます」と答えた。


「そうか……。ところでケルヒ、そこの若いやつと、なんだ……この活発な娘はなんだ?」


 オウミは、ヒカルとミナミを面白そうな表情で見ながら、そう言った。


「ええと、駆除中に拾いました。なんでも森で迷ったとか……」


 ケルヒが、そう言いづらそうにオウミへ説明した。


 ミナミはヒカルの側へこそっと近づき、問いかける。


「あのさ……ここって……」


 彼女は、ヒカルにどう説明したらよいかと迷う。どこから聞いたらよいのかすらもわからない……。


「団長。この二人は俺の知り合いです。とりあえず、団に連れて帰ってもいいですか?」


 オーラクターの荷台に寝そべっていて、顔色の悪いダイタがそう告げた。


 オウミは怪しげに、片目を吊り上げながらダイタをジッと見て言う。


「ふ~ん、まぁいいか……面白そうだしな。俺が許可したと、駐屯地にいるジェーサには言っておいてくれ」


 そう言うとオウミとマルカドゥ、デカいオッサン2人は、近くの酒場へ肩を組みながら入っていった。


「ヒカル、この子も知り合いなんだろう? なんならコイツも一緒に連れてくぞ」


 ダイタがヒカルにそう告げると「あぁ……頼む、本当に悪い……」と、ヒカルが礼を言い返す。そして、ミナミに対して告げる。


「ミナミ、一緒についてきてくれ。いろいろと話したいだろうけど、あとにしよう」


 彼女はヒカルをジッと見て言う。


「わかった」


 


 オーラクターが街中を通り抜けると、(ひら)けた空き地へ出た。


「おぉ~」


 ミナミが声をあげる。空き地の中央には、大きな船が2隻見える。その周りには、さっき見た空を飛んでいた丸い物体と、人型のロボットのようなものがいたからだ。


 空き地の奥には、体育館くらいの大きな建物があり、そこの大きなゲートからオーラクターごと中に入る。


「お帰りケルヒ。ダイタも、案内ご苦労だったね……」


 最初に隊舎へ入ってきてそう言ったのは、高身長で緑色の長い髪。露出度の高い服を着ているが、どことなく上品な感じがする美人だと、ミナミは思った。その美人が続けて言う。


「ところで、見ない顔が二匹いるけど、どこで拾ってきたんだい?」


 ミナミはその言葉を聞いて「二匹って……。上品そうな感じは撤回だよ」と、心の奥底で叫ぶ。


「森での駆除の最中に拾いました。ヒカルとミナミです」


 ケルヒが、笑いながら答えた。


「それで、ここまで連れてきたと?」


 一瞬、美人の目が険しくなる……。


「ジェーサさん、俺の知り合いです。さっき街であった団長の許可は得ています」


 横からダイタが、そう告げる。


「ふ~ん、そうかい。ならダイタが面倒見るんだよ」

「はい……」


 ダイタは諦めたようにため息を吐きながら、そう答える。


「それよりもあんた顔色が悪すぎるよ。今日はもう部屋で休みなさい。そこの二人には、あんたの両隣の部屋を使わせるように。ちょうど空いていただろう。さぁ! 他の連中でオウミたちが持ってきたオルミーガを解体するよ!」


 ジェーサがそう言うと、周りにいたものたちがオーラクターに集まり、オルミーガだった黒い塊を下ろしはじめる。


 その様子を見てミナミは「あの巨大な虫みたいなのを解体って……」と、顔を青くしておののいている。

 

「ヒカルと……ミナミだっけ? すまないけど、ダイタの様子から一人じゃ心配だから、この子の部屋までついて行っておくれ。両隣の部屋も自由に使ってくれて問題ないから。あと、ミナミ」


「はい!」


 ミナミはジェーサの問いかけに、元気よく答えた。


「あんたは、トイレとシャワーは3階を使うようにね」


 ジェーサがそう言ったが、そのあと「3階は女子用だから」と、ケルヒが付け加えた。

 

 三人はこの建物。「隊舎」と呼ばれているその二階へ上がる。


 二階の奥にダイタの部屋があった。わりとそっけない部屋に入りダイタを寝かせると、ダイタは疲れていたのか、すぐに寝息を立てはじめた。


 ミナミとヒカルは、二人で話をするためにダイタの部屋を出る。そして右隣の部屋、ヒカルの部屋にしたところに入ったが、ミナミはその前に3階のトイレに行ってみた。3階では女性をチラホラと見かける。トイレも水洗でわりと綺麗だと彼女は感じた。


 部屋に戻り硬い木の椅子にミナミは座る。ヒカルはベッドに腰掛けた。


「とりあえず……俺のことを話す前に、ミナミの状況を最初から教えてくれ」

「…………」(最初からって……)


 ミナミは言葉に詰まる。正直自分の今いる環境が、理解できていないからだ。


 ヒカルはそんな彼女を見て少し考えたあと、言いにくそうに切り出した。


「ミナミはさ……ここが夢の中だと思うか?」

「えっ! 夢? 夢って……」


 そう言われた彼女の反応が鈍い。


 ミナミはヒカルの言葉に「いきなりなにを言って……ん?」と思う。でもそう言われて、ここ(●●)が現実離れしていることに気づき思い出した。


「あっ! 確かにあたし、自分の部屋で寝落ちしたわ」


 ヒカルはミナミの言葉を聞き、困ったような表情で自分の右手で頭を()いた。


「ハァ~、まったく……。そもそも気づいてなかったのか」

「でもさ……だってさ。夢にしては、はっきりし過ぎじゃない? 夢ってさ……もっとなんていうか、モヤっとした感じとかあるじゃん!」


 ミナミの言ってることはヒカルにも理解できる。それでも言い返した。


「だけど、ミナミも見ただろう? この世界の様子は「俺たちの世界」とは違い普通じゃない。空を飛ぶ巨大な物体。巨大な虫。それに……おまえはもう見たのか? この世界の姿を」


 ――この世界の姿?


「なによ……その世界って?」


 そう言ったミナミをヒカルはジッと見据えた。そして告げる。


「今……この俺たちがいる陸地は、空に浮いている」

「ふぇ? 空にって、なに言ってるの?」


 彼女は、両手の手のひらを上に返して「why?」の表情をして見せる。


「フゥ~」


 ヒカルは、ミナミの態度を見て深いため息をついた。


「まぁいい……。でも、寝落ちしたってのは自覚あるんだよな?」

「ええと……変な子にあった日に、道場でこっぴどくしごかれてさ……そのあとに疲れて寝落ちしたのよね。それで……」

「変な子? まぁいい。それで?」


 ヒカルが続けざまに、ミナミに聞いてくる。


「起きたら、ここの大きな公園でさ……。何しろ見るもの全てがファンタジー満載じゃん♪ 面白くて見て回ったり、優しいお爺さんにご飯食べさせてもらったり、ウロウロしてたら……」

「さっきの男に絡まれたのか?」

「うん♪」


 ハァ~。


 ヒカルは、大きくため息をついて言う。


「だからって、夢の中でケンカするなって……」

「大丈夫よ。ちゃんと手加減したから」

「「…………」」

「それよりも、ここがあたしの夢だとしたらなんでヒカルがいるのさ? そっちのほうがおかしいじゃん!」


 ヒカルは「……俺は別に寝落ちしたわけじゃない」と言い返す。


「えっ、じゃぁなんで? いや待って……だとしても、ヒカルがあたしの夢の中に勝手に登場する理由にはならないじゃん! 不法侵入だよ! ストーカーだよ!」


 ミナミは口から唾を吐きながら、勢いよく言う。


「不法侵入って……ここはおまえの夢の中だとは言ったが、おまえだけの夢とは言ってない」

「ぶー! もー、ますますわけワカメだよ。だったらさー!」

「ギャャャ――――!!!」


 彼女がヒカルに言い返そうとすると、突然悲鳴が聞こえた。


 二人とも一斉に立ち上がり、同時に部屋の外へと向かう。その悲鳴は隣の部屋。ダイタの部屋からで、彼の声だったからだ。


 バン!


 ヒカルがダイタの部屋の扉を開ける。


「「!!!」」


 そこには、ベッドから上半身を起こし驚愕の表情のダイタがいた。


 そして、その向かいには……光に包まれた人が立っていた。


 その人は女性。いや、女の子で、白い服を着ている。金色の髪がとても綺麗で……って……「ん?」


 その女の子を見て、ヒカルが何かを言いかけたその瞬間、ミナミがぽつりと呟いた。 

 

「あれ? メイダじゃん」

「えっ!」


 その名前を聞いて、ヒカルが驚いたような声とともにミナミを見た。そして聞く。


「ミナミ……なんでメイダを知っている?」

「えっと……昨日? いや、今日かな……。うちの近くで知り合ったんだよ。さっき変な子って言ったじゃん。ヒカルの知り合い? てか……なんか身体が光ってるけど」


 ミナミの話を聞いたヒカルは、両手で頭を抱えて困った表情をしている……。


 メイダがヒカルのほうを向いた。


「あっ! やっと追いつきました。探すのに苦労したんですよ!」


 メイダはそう言うと、今度はミナミのほうを見る。


「…………」(メイダ)

「…………」(ミナミ)

「……えぇ――!!! どうしてミナミがこの世界にいるのですか!」


 メイダの叫び声を聞いて、ミナミは「この子、やっぱ変な子だ……」と、ジト目で感じる。


「いったいなんなんだよ……お前たちは!」


 そこに捨て置かれていたダイタが声を出し、三人を見ながら言葉に出す。


「これは、良くないですねぇ~。でも、おかしいですねぇ~」


 メイダが、困ったようにそう言った。


「ちゃんと、ほかに誰もいないことを確認してから、転移してきたのですけれど……」


 ヒカルが「転移ってどういうことだメイダ? 説明してくれ」と、彼女に問いかける。


「いいですけど、その前に……」


 メイダがそう言いながらダイタのほうへ向く。その瞬間、ダイタの身体がビクッとした。メイダはベッドに近づき、はいつくばるような姿勢でベッドへ上がる。そしてダイタに近づき、真正面から彼を見つめる。ダイタは逃げたそうにしたが、背中が壁に当たり動くことができない。


「あなた……。名を「ダイタ」というのですね。それにしてもあなたのオーラは、一般の人たちとは、何かが異なる感じがします。それがあたしの感知を阻害したのでしょうか?」


 ミナミは、この光景を見て思う。「このかわいいメイダに、あんなに接近されたら……。普通の男子ならキュン死するかも」


 メイダはダイタに、突き刺さるように言葉を吐く。


「ダイタ……。あなたはここで見たことを、秘密にしなければなりません」

「な、なんでだよ……」


 ダイタは、怯えながらもなんとか聞き返す。


「私は……『神官』です」

「えっ!」


 ダイタの驚いた表情が、さらに深刻になる。


「わかりますね。本来なら、あなたが『このように』見てもよいものではありません。私の権限であなたを消すこともできます」


 ダイタは、見開いている目をメイダからそらすことができない。


「おい、メイダ!」


 その光景を見て、ヒカルが声をあげた。


「君が言っていることは、まだよく理解できないが……。彼は俺の命の恩人だ」


 ヒカルの言葉に、メイダが振り向き微笑んだ。


「そうなのですか? はい。でも、安心してください。私も彼を消そうとは思っていません」


 メイダが再びダイタを見返す。一瞬、彼女の瞳に冷たい光が宿ったが、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。


「私のことを秘密にしておいてくれれば、あなたを消すようなことはしません。それと、この御二方(おふたかた)ともうまく接してくださいね。間違っても危害を加えるようなことがあれば……。どうなるかは、想像はつきますよね?」


 その様子を見てミナミは、声に出して「「(マジ)(こわ)っ!」と言ってしまった。


 ダイタは、大きく首を縦に振る。続いてメイダは、両手でダイタの顔を抱きしめた。


 突然のメイダの行動に、ダイタは硬直している。しばらくして、メイダはダイタから離れたが、彼の顔は真っ赤になっていた。横を見るとヒカルも驚いた表情をしている。


「メイダ……。あんたは天然の「たらし」になれる素質が100パーあるよ」


 そう言ったミナミに、メイダが彼女のほうへ振り向く。


「タラシとはなんでしょう? まぁ、それよりも皆でお話をしましょうか♪」

「「ハァ~~……」」


 メイダの言葉のあとに、ヒカルとダイタ二人の大きなため息が、部屋全体に広がった……。


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