五話: そうだ、外行こう
昨日は色々とあったな。
たまには騒がしいのも良かったなー。
朝の剣の練習をしながら昨日のことを思い出していた。
「そういえば昨日の子、なんて名前だったんだろ。それくらい聞いとくべきだったか」
もしかしたらお世話になるかもしれない。
人生、どこでどんな出会いが役に立つかわからないからな。
それに昨日みた、あの町にも興味が沸いた。
面白そうだし。
転移魔法もあるから帰りはすぐだし。
せっかくだし行ってみようかな。
ただ、人たくさんいるんだろうな。
別に俺は人見知りとかじゃないけど、ここ数年は昨日の子以外にはあったことないんだから人酔いしそう。
「……まぁ、そのときはそのときだ。それに本の内容の確認もしたいしね」
この世界が地球と融合した、というのも知りたい。
うん、そうと決まれば早速準備開始だな。
そこまで決めて俺は素振りをやめた。
準備と言っても特にやることは少ない。
行き来は基本的に転移があるから一瞬。だから昼には戻れば良い。
寝床にも困らないし、食事にも困らない。
つまり、ほぼ何もいらない!
必要なものもアイテムボックスに詰め込んどけば問題はない。
問題は、着替え。
何着ていこう。
パーカーは今日は洗濯中。別に洗わなくても大丈夫という謎仕様だが、気分の問題だ。
という訳で、ワンピースは却下。はずい。俺は私でも俺だからな。
という訳でローブを着てくか。
なんだかんだ、見た目にこだわるようになってるんだが?俺ってそういう人じゃなかったんだがなぁ。
よし、魔法で一瞬で着替えて……下もちゃんと着てるよ?結界をログハウス周辺に張り巡らせて、シルクとグランはお留守番。
私は見た目は身一つで、町の近くまで転移した。
・・・
私はユウナ。
私はお父さんとお母さんにとても愛されて今まで過ごしてきました。
それに不満を思ったことはありませんでした。
ですが、今回はそれに不満を抱きました。
外に行かせてくれないのです。
他の私と同い年くらいの子たちは自由に外を遊び回ってるのに、私はいつも家のなか。庭には出れてもそこは庭であって家の一部。外とは言えません。
だから、外に出たいと両親に言いました。
けれど、答えは即答で駄目でした。
だから、私は家出をしました。
けれど外は私の思ってたほど綺麗ではなかった。
家出に成功しました。
けれど、自由になったとたん、何をしようか思い浮かびません。
うーん、って悩んでたら変な人に声をかけられた。
笑いながら私に何かを話そうとします。
けど私の直感が危険と判断した。
私は逃げ出した。
すると、血相を変えて、怒鳴り散らしながら私を追いかけてきました。
やっぱり悪い人です。
それから小柄な体を駆使して逃げ続けました。
足が痛いです。
声がします。
どこかに隠れなきゃ。
私は隠れながら、視界に森が写った。
あそこには絶対に入っちゃ駄目と厳しく言われてます。
けれど、それだけ言われる場所です。
そこなら追われない。
そう判断してそこに逃げ込みました。
迷いました。
そしたら魔物がいました。
私に気づいてまた追いかけられました。
しかもさっきのよりも、早くて、目を睨んでくる。
今にも飛びかかってきそうでした。
怖い。
必死で逃げ続けました。
出口は見つかりません。魔物もまだいます。
けど、私の息はあがってました。
体が重くなってきました。
息が苦しくなってきました。
『カァァァ!』
「キャァッ!」
私は突然飛びかかってきた魔物の攻撃に、頭をさげて丸くなった。
そしたら私の体は転がるようにして飛ばされて、頭を打ってしまい気を失いました。
次に目が覚めると、知らない家に寝かされていました。
声をかけられて、そちらを向くと、黒いフード、という物を被った、人がいました。
フードからはみ出した白い綺麗な髪、それと綺麗な声。けど、口調は男の人のもの。けど、悪意は感じられません。
その人は襲う気はない、送り返す、と言いました。
けど、それは問題ではありません。
私の頭の中ではこの疑問が埋め尽くしていました。
この人は、男性でしょうか、女性でしょうか?
それが気になって、けど聞くのは失礼と思ってしまって何も言えません。
体型とか、声質は女性のかたの物なのに、口調は男性のそれ。
振る舞いもなんとも言えないもので、どちらか判断できなかった。
そうこうしていたら、私のお腹の音がなってしまいました。
恥ずかしいです。
家出したあれから何も食べてない。それで走り続けたから、気が抜けてあんなに大きな音が……うぅ、やっぱり恥ずかしい。
それを聞いたその人は私に何か作ってくれました。
いただきますと言ってそれを箸で、すすっている。
これは、ラーメン、というものでしょうか。食べたことも、見たこともないからわかりません。知識として持っていてもそれがホントにそうなのかはわかりません。
ですが、美味しそうですし、何よりお腹が空いてしまって。
美味しくて、この美味しいお湯まで飲み干してしまいました。
あぁ、すすったときに服に染みが………お父さん、お母さん、心配してるでしょうか。
すると、その人がラーメンの入った器を下げたら、私の前にきて、これは夢だからな、って言って何かをしました。
すると、私の意識は落ちました。
次に目が覚めたのは、私の家の私のベットの上でした。
あれはなんだったんでしょう。
夢、なんでしょうか。
逃げ疲れて、いつの間にか寝てしまっていて、そのときの夢だったのでしょうか。
そのあと、両親とメイドたちにこっぴどく叱られてしまいました。
ですが、両親は縛りすぎも良くないと思ったのか、今度からたまに外に出ることが許可されました。何人か一緒に連れていく条件付きですが。
そのあと、私がどんな状況で発見されたのか聞くと、森の近くの門で突然発見されたらしい。
それについて何か覚えてないか?と聞かれた。
昨日までそこにはいなかった。
入ってくるところは見逃さないはず、それなのに突然見つかった。
両親もそれについてはよくわかっておらず、私に何か知らないか訪ねているのだ。
もしも誰かに助けられたとなればすぐに家に招いて礼をしたいというのもあるそうだ。
私はあの内容を話すか迷った。
あれが夢なのか、現実かわからないから。
けど、伝えた。夢かも知れないけどって、言ってその内容を全て話した。
すると、お父さんが、私のドレスからスープの染みがあったと言われた時に、あれが夢じゃないって知った。
私はお礼がしたいとお父さんに頼み、探してもらうことにした。
しかし、にわかには信じられないとも言っていた。
あそこの森は魔の森。
一度入ると戻ることはできない、異常に強い魔物の巣窟と呼ばれる場所だったからだ。
・・・
町の近くまで転移した。
誰にも、見られてないな。
よし、行こうかな。
道中弱い魔物に何回か遭遇したりするが、睨むだけで逃げていった。
この辺にいるってことはそこまで強くないと思うし。
カラスだけは逃げないから困った。
まぁ、一手間増えるということだけどね。
「もう少し、かな。………あぁ、やべぇ。楽しみ」
年甲斐もなく、初めての町に期待をよせる。
今の俺の心には楽しそうという文字がたくさん並んでいることだろう。
そして、一周回って冷静になると、問題とか色々と出てきた。
俺、あの門通れるかな?
通れるとしても間違いなく、怪しまれそうだよな。
体型、話し方、服装、色々と。
うーん、話し方は女の人のやつにすれば良いかな。
実は前に少し練習した。
あとは………そうだ、名前。
俺、名前どうしよう。
俺の前の名前は優希
この名前は特に珍しいものではない。
そのまま使う?……そうだな。
今から俺は、私は?この体の名前はユウキ。
そうしよう。
さて、次、俺がここにいる理由………それらしいの……親と旅をしていたときに親がなくなってしまい、一人で道もわからず歩いてた、ってのはどうだ?
100%嘘じゃないし、親は前世の俺、旅はしてないけど、道もわからなかったのは確かだしな。
よし、これでいこう。
服装は上の理由を盾に考えてもらおう。
これで、勝てる!
いざ、町へ!
門の前に歩いて、町に入ろうとしたら、兵士に止められた。
「君、一体、どこから?」
……思ってたんと反応が違う。
「あの森からきました」
ちょっと、いやかなり驚いて俺を見る。
「どう、やって?あそこには魔物がたくさんいたはずだよ」
そういうことか。
なら、逃げたことにしよう。
「隠れたりするのは得意だったから逃げて逃げて、逃げ続けたの。それで、ここにたどり着いた」
「そ、そうかい。町に入りたいのかい?」
「うん、駄目、かな?」
体の能力を最大限生かした攻撃。
上目遣い、そして少し目をうるうるさせて手を祈るようにする。
「うっ!……わかった。ただ、君身分証は?または冒険者カード。持ってる?」
なにそれ。身分証?ある分けねぇだろ。
「持ってない。ないと駄目なんですか?」
「駄目ではないけど、発行が必要になる。お金、持ってないよね?」
お金……忘れてた。最近自給自足で完結してたから。
どうしよう……そうだ!
「なら、今この場で物をあげるからそれを換金して、そのお金で作る」
「……わかった。じゃあ、おいで」
ひとまず中に入れそうだな。
一安心だ。
継続中 三日目
うーん、二人の名前が似てる。
間違えないように注意しないと。
それではまた