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第9話 ゴブリンダンジョン

 新しい装備は俺に大きな力を与えてくれた。

 一番大きく違ったのが黒剣である。

 今までは草刈り用の鎌でゴブリンと戦っていた。

 鎌と剣では攻撃範囲が段違いで広く、攻撃範囲が広がるだけで、殲滅速度は格段に上がる。

 次に嬉しかったのは、全力で武器を振り回しても刃こぼれしない事だ。

 草借り用の鎌を使っている時は、当たり所によってはすぐに刃こぼれしていた。

 パッシブスキル【武具の心得】の効果で、出来る限り丁寧に使ってはいたが、力を抑えていた。


 ザイルさんが言うには、この黒い鉄剣は様々な金属と魔物のドロップアイテムが混ぜられており、強度だけで言えば一ランク上の武器よりも高いとの事だ。

 この武器だけで金貨十枚の価値があるとの事で、二級冒険者達が使う武器だと教えられた。

 

 次に軽装防具は軽くて動きやすかった。

 今までは全ての攻撃を避け続けていたが、今では両腕に付けられた篭手で受け止める事も出来る様になっているので、防御の選択肢が増え、より多くのゴブリンを一度に相手出来るようになっている。

  

 最後に武器と同じ位に俺にとって大きな意味を持つアイテムを手に入れた。

 それはポーション。

 ホーションとは怪我を直したり、体力を回復させる薬で何処の街でも売られている薬だ。

 魔物はバイ菌だらけで、軽症だったとしても放っておいたら悪化する場合が多い。

 そんな時はポーションで簡単に消毒や治療が出来る。

 種類は体力や怪我を治す青色のポーションと、魔力や精神力を回復させる赤いマジックポーションが存在する。

 そのどちらにも品質の高さによってランク別けがされてあった。

 ランクの高いポーションの事を高級ポーションと呼ぶ。

 

 俺が初めてゴブリンと戦った時に受けた怪我も、ポーションで治療していれば大事にならなかった事を知りポーションの大切さを理解する。

 それ以降はストックを切らさない様にザイルさんへの注文でポーションをよく頼む様になっていた。




★   ★   ★




 今は森を抜け広大な草原の中を歩いていた。

 最近は日に二十匹以上のゴブリンを倒しているので、森の中でゴブリンと遭遇する事が少なくなっている。

 だから捜索範囲が毎日少しづつ広がっていた。


「へぇー 中々広々とした良い所じゃないか?」


 季節の花が咲き乱れ、初めて立ち入る草原に感動を覚える。

 全面には雄大なアイール山脈がそびえ立っている。


 森から出る事はあまり無かったので、新鮮な気持ちだ。

 草原地形で見通しが良い事もあって、見渡してみたが周囲にはゴブリンの姿は見えない。

 ここはハズレか? と考えていた時、山脈の麓に大きな穴がある事に気づいた。


 俺は大穴の側に近寄ってみる。

 

「大きな穴だな。何処までも続く地獄の入り口のようにも見える」


 俺が穴の中を観察していると、洞窟の奥からゴブリンの騒ぐ声が聞こえてきた。


「ゴブリンの声!? この洞窟の中にゴブリンが居る!? それじゃもしかして、この洞窟は父さんが教えてくれたダンジョン!?」


 初めてダンジョンを見て額には汗が浮かび上がっていた。


「全ての魔物はダンジョンで産まれる。地上にいる魔物は全てダンジョンから這い出た者達だ。ダンジョンは魔物の巣窟で危険だが、資源が豊富だと言っていた」


 俺はその後もダンジョンの入り口から中を見続けた。


(父さんはダンジョンは幾つものギルドがレイドを組んで攻略するもんだと言っていた。一人で入るのは自殺行為なのだろう。だけど俺は少しでも早くレベルを上げたい。地上にゴブリンが居ないのなら、もうダンジョンに潜るしかないだろ!!)


「ええいっ!! ちょとだけ、中を見てくるだけだ。危なくなったらすぐに逃げる」


 言い訳を口にしながら、俺はダンジョンの中へと飛び込んでいった。





★   ★   ★




 ダンジョンの内部は意外と明るかった。

 入り口部分だけは暗闇に覆われていたが、十メートル程度進んだ場所からは、壁や天井・床から薄っすらと光が発光していた。

 この光っている場所から取れる鉱石でランプとして使われている光鉱石が作られていた。


 その光で視界は確保でき、戦闘には問題がなさそうであった。

 

「初めて中に入ったけど、意外と広いじゃないか。この広さなら十分戦えそうだぞ」


 ダンジョン内の通路幅は目測で五メートル程あり、天井も高い。

 一度に多くは相手できないが、各個撃破なら十分戦えそうだった。


 ダンジョンの中は地上よりも魔物の数が多いと聞く、流石に繁殖期ほどではないと思うが、注意した方がいいだろう。


 数十メートル程、進むと早速ゴブリンと遭遇する。

 数は三匹の小規模の集まり。


「丁度いい人数だ。早速狩らせてもらうぞ」


 相手ゴブリンは俺には気づいていない。

 俺は忍び足で岩陰に身を隠し、ゴブリン達へと近づいていった。

 そしてゴブリン達との距離が十メートルまで近づいた時に、一気に駆け出し攻撃をしかけた。


「ギィッ!? ギィーーッ!!」


「今更気づいても、もう遅い!!」


 ゴブリンは驚いて、ビクンっと身体を硬直させた。

 俺は相手の事情などお構いなしで、使い慣れ始めた黒剣を振り抜いた。

 大ぶりの俺の攻撃は、二匹のゴブリンを一度に引き裂き、斬られたゴブリン達をそのまま吹っ飛ばす。

 俺はワザとゴブリンを吹き飛ばしていた。

 複数の魔物と戦う時は、足場が広い事が結構重要なポイントである。

 死体がゴロゴロ転がっていたら、躓く危険もあった。

 なので可能であるなら、出来る限り死体は分散させた方が良い。


 残り一匹は吹き飛ばされた仲間を見送った後、果敢に攻めて来たが、既に時遅しといえよう。

 俺は連撃の構えを既にとっており、敵ゴブリンがこちらに顔を向けた瞬間には頭と身体は二つに別れていた。


「ギッ??」


 目を見開き、理解できない様子のゴブリンは自分の頭が落ちた時に見えた自分の身体を目にし、赤い目を最大限まで見開いている。

 

 そしてそのまま動かなくなる。


「まずは三匹!! 残りは一七匹だな。急ごう」


 俺はその後もダンジョンの中を進んでいく。

 父さんから聞いたとおり、ダンジョン内は魔物の数が多く、数十メートル~百メートル程度歩けば、新しいゴブリン達を見つける事ができた。

 見つけた全てのゴブリン達を倒していくと、あっという間にノルマである二十匹を倒しきっていた。


「流石はダンジョンだな。ゴブリン達が多い。まだ時間も残っているし、もう少し狩っておくか!」


 そのまま俺はゴブリンを倒しながら、ダンジョンの中を進んでいくと一つの小部屋へとたどり着いた。

 小部屋と言ってもダンジョン内に自然に形成されたポケットの様な場所。


 顔だけのぞかせてみたが、気になる所は無かった。


「なんだこの部屋は……」


 俺は注意しながらポケットの中へと入っていく。

 壁や天井から光が発光されているので、暗い場所ではない。

 十五メートル四方の少し広い広場であった。


「中に入ってみたけど、やっぱり何もないのか?」


 俺が踵を返した瞬間。

 壁と天井がモコモコと盛り上がってきた。

 その様子はまるで天井と壁が生きている様にも見える。


「おいおい。一体、何が始まるんだよ」


 盛り上がりは、小刻みに激しさを増して行き、ついに壁の中からゴブリン達が産まれだした。


「本気かよ。ゴブリンってこうやって産まれるのか……」


「ギギィィィー!!」

 

 ドサドサと十匹前後のゴブリンが産み落とされた。

 産まれたての子供のゴブリンと言う訳ではなく、毎日戦っている普通のゴブリンと変わりはない。


 産まれた瞬間であるにもかかわらず。

 俺を見た途端に戦闘態勢をとっていた。


「産まれたてで申し訳ないけど。許してくれよ」


 俺は相手よりも早く動き始める。

 一番近くのゴブリンに駆け寄り、一撃で倒す。

 ゴブリンも反撃しようと一斉に駆け寄って来たが、攻撃範囲の広い黒剣を薙ぎ払い、二匹同時に切断する。


「やはり鎌とは全然違って剣は戦いやすいな」


 買って間もない剣であったが、慣れるまで戦い辛いと言う事はない。

 俺のスキル【武具の心得】の効果でどんな武器であろうと、一瞬で使いこなせてしまうからだ。

 手足の様に自由自在に剣を振り上げる。

 十匹居たゴブリンは十分程度で全て倒し切る事ができた。


 ダンジョンに潜ってから既に三十匹以上のゴブリンを倒している。

 余りの効率の良さに、今まで来なかった事を少々後悔した位だった。


「今後はダンジョンメインで狩りを続けよう。地上のゴブリンは村に近づかないように見つけたら殺せばいい」


 ダンジョンの入り口まで戻ると、再びダンジョンに視線を移した。


「ダンジョンにはダンジョンマスターが居るって父さんが言っていた。ダンジョンマスターを倒せば、そのダンジョンでは魔物が産まれなくなると。じゃあ、このダンジョンのマスターを倒したら、もうここでは狩りが出来なくなるって訳だよな」


 俺は腕を組んで考えた。


「仕方ない。俺のレベルが適正から外れるまでは、ダンジョンの攻略はしない。だけどレベル10になったら覚悟しとけよ!!」

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