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第7話 レベルアップと復讐の方法

 初めての繁殖期で苦汁をなめた俺は、その年の繁殖期を村で過ごした後、再びゴブリンを狩る日々を再開させていた。

 たった一ヶ月の繁殖期だが、その間に俺が得た経験は大きい。

 冒険者から見て盗んだ戦い方や身体の使い方を自分の物にしていく。

 武器を振るう軌道や攻撃を避ける為の体重の移動の仕方など、参考になる物が多かった。

 その結果狩りの効率が上がり、一日十体が限界だった狩りも軽く十五体は倒せる様になっていた。

 

 その後も狩りを続け、俺は二回目の繁殖期を迎えた。

 今回の繁殖期は入念な準備をした上で挑んだ結果、美味しくゴブリンを狩る事が出来た。




★   ★   ★




 そして今は、狩りを始めて二年と数か月後、俺は遂に念願のレベル3に到達する。

 当初の計算では三年位はかかると思っていたので、頑張った分だけ前倒しになった形だ。


「やったぞ! やった。 長かった……」


 レベルアップを知らせるファンファーレが体中を駆け巡り、アドレナリンが大量に溢れ出ているのが解る。

 興奮がいつまでも冷めずに、身体から発する熱は普段よりも高い。


「さっそく調べて見ないと。ステータスオープン!」




★   ★   ★




クラウス・ブラウン

  

レベル-3    必要魔物討伐数 9,620匹  累計魔物討伐数19,810匹


職業      無職     


能力


力       18

素早さ     21

魔力      20



アクティブスキル



      


パッシブスキル


【逆転】取得難度:10 取得条件:不運

 効果:取得者の成長が逆転する。


武具の心得(マスターウェポン)】取得難度:8 取得条件:レベル99

 効果:職業に関係なく全ての武器、防具をマスターレベルと同等に扱う事が出来る。


魔力の真理(マジックマスター)】取得難度:8 取得条件:レベル99

 効果:全てのスキル及び魔法使用時の必要魔力量を99%減少させる。



魔物を狩る中級者(ベテランハンター)】取得難度:2 取得条件:累計魔物討伐数 10,000匹


 効果:戦闘時に能力値が1.2倍となる


ゴブリンと戦う者(ゴブリンスレイヤー)】取得難度:1 取得条件:ゴブリン撃破数1,000匹

 効果:対ゴブリンとの戦闘において、全ての能力値が+10。ゴブリン発見率の上昇

 

罠を設置する初心者(トラップビキナー)】取得難度:1 取得条件:自身が設置した罠による魔物討伐数1,000匹

 効果:罠設置時の認識阻害効果の上昇(小)。罠の威力向上(小)


魔法


【女神召喚】取得難度:9 取得条件:レベル100

 効果:創造主を召喚する事が出来る最上位魔法





★   ★   ★




 ステータス画面にもマイナスはついているが、しっかりとレベル3と表示されていた。


「よし、ちゃんと能力も上がっているから、これから狩りもやりやすくなるはずだ」


 ステータス画面のチェックが終わった後、一番大事な事を確認する為に俺は一度家へ戻り、母さんの手鏡で自分の顔を確認する。


「目尻のシワが減っているよな……? それに少し肌に潤いがでている気がする」


 俺はレベルが上がる少し前から毎日鏡を見ていた。

 レベルが上がった時にちゃんと若返っているのかを確認する為、必死で自分の顔を見続けていたのだ。


「多分だけど、いや絶対に若返ってる。やっぱりそうだ!! これは確実に若返っている。そりゃそうだろう。【逆転】のスキルの効果は【成長が逆転する】その効果で産まれた時は老人の姿だったんだ。レベルが上がれば若返るのは道理」


 若返る事を知った俺は飛び上がり喜んでいたのだが、突然一つの妙案が浮かんだ。


「待てよ…… 俺はレベルが上がると若返る。ならもっとレベルを上げていけば、俺の姿は年相応に戻るだろう。そうなったとしたら、昔の俺しか知らないアイツは俺には絶対に気付かない…… なるほど、これは使えるぞ!! よし俺は決めた。俺はレベルを上げて若返り、勇者マリアに信頼される男となってやる。そして信頼され、頼られる存在となった所で、俺は勇者を捨ててやる。それと同時に大勢の人の前でアイツの本性をばらして、信頼を失わせ絶望へと叩き落とす」


 俺がされた事をそのままあの勇者にやり返す。

 いやそれ以上にだ!!!

 それであの女がドン底に落ちた時、初めて俺の溜飲も下がる。

 

 周囲から絶対的な聖者だと思われている、あの女の化けの皮を俺が剥がしてやるんだ。

 

 俺は強くそう誓った。


 しかしその為には俺が強くなる事が最低条件となる。

 幸いな事に、俺はレベル99で覚える筈の強力なスキルを持っている。

 それに最近気付いたのだが、俺は今の所、レベルを一つ上げる為にゴブリンを約一万匹倒している。

 けれど考え方を変えれば、普通の冒険者達が高レベルになれば、ゴブリンより数十倍も強力な適正の魔物を一万匹倒さないとレベルが上がらないと言う事にもなる。

 そんな事が可能なのだろうか?

 いや多分不可能だ。


 逆に、俺はレベルが上がればそれに比例してレベルを上げる為に必要となる討伐数は、減少していく。


「俺を不幸のどん底に落としてくれた【逆転】のスキルだが、強くなる事だけを考えれば、これ以上のスキルは無いのかもしれない」


 俺は産まれて初めて【逆転】のスキルを持っている事を嬉しく思った。




★   ★   ★




 レベル-3になってから変わった事と言えば、複数のゴブリンが相手でも戦う様になっていた事だ。

 相変わらず防御は避けるか受け流すの一辺倒であったが、この頃から少しづつ俺の動きに変化が現れる。


 それは何故だか解らないが、ゴブリン達がどんな動きをしてくるか、自然と頭の中でイメージ出来る様になった事だ。


 ゴブリンが何匹群がっていても、一匹づつの動きが瞬時に予想でき、実際にその通りの動きをゴブリンが行う。

 予知と言えばいいか解らないが、ゴブリンだけを狩り続けてきた俺だから何となく理解できている感じと言えば分かりやすいだろうか?

 今までゴブリンだけを一万匹以上倒してきた。

 そんな特殊な力が身に付いていても不思議ではない。


 今も三匹のゴブリンと戦っており、俺は油断する事無く身体を動かしていた。


(正面から向かってくるゴブリンは爪で仕掛けてきて、その後ろにいる奴は石を投げつける。最後に残ったゴブリンはサイドから遅れて突っ込んでくるって所か)


 それらの予想を元に戦術を組み立てる。

 基本的な俺の戦術は【攻撃される前に倒せ!】だ。 

 なので一番早く倒せるゴブリンから倒す事にしていた。


 その結果、正面から襲ってくるゴブリンを一瞬で切り伏せ、その反動を利用したまま、次に迫るゴブリンを倒し、最後は後方にいたゴブリンへと駆け寄り鎌で斬りつける。

 一連の行動を全速力で行う。

 殆ど止まる事の無い動きで、一瞬にして三匹のゴブリンは地に倒れ込んだ。


 今の俺の狩りの速度は、以前とは比べ物にならない位に上昇している。

 今では一日に二十匹以上のゴブリンを狩れる様になっていた。

 年齢も九歳になっている事もあり、両親も俺が遊びに出る事をとやかく言う事はない。

 母さんは、村の用事で夕方まで家を空ける日には弁当を渡してくれる。

 そんな日はチャンスと判断し、ギリギリまでゴブリンを狩り続けた。

 

 けれど一日に二十匹のゴブリンを狩り続けていると、ゴブリンと遭遇する頻度が落ちてきている事に気づく。

 森中を走り回り、やっと出会える程度。

 

 もしかしたら、俺が狩り過ぎてしまったのでゴブリンが居なくなったのかもしれない。

 もしそうだとしたら、新しい狩場を見つける必要があるだろう。





★   ★   ★




 そんなある日、村に商人が定期的にやってくる事が決まったと、村長が嬉しそうに村民へ言い回っていた。

 今までは半年に一回程度の頻度で商人がやって来ていたが、これからは二ヶ月に一回、一年で六回も商人が来てくれる。

 それは村の人口が増えた事で、行商になると判断した商人が現れた為だ。

 村人もこれで暮らしも楽になると大喜びだ。

 この村から様々な品が買える街に移動するには、何日も日数を要していた。

 長い間、仕事を空ける訳にも行かない村人達は、滅多な事では買い出しには行けない。

 半年に一度の商人が来た時か、近くの村との物々交換などで必要な物を最低限だけ揃えるだけだった。


 けれどこれからは違う、もっと気楽に商品を手に入れる事が出来る様になるだろう。

 父さんも興奮して夕食の時に、話題に上げていた。


「クラウスも知っているだろう? これからは二ヶ月に一回、この村に商人が来てくれるんだ。何か欲しい物は無いのか? 父さん、買ってあげてもいいぞ」


 お酒を飲みながら、父さんは上機嫌で告げる。

 夕食の少し前に、父さんは母さんにネックレスを買う約束をしていた。

 母さんは大喜びで、今晩の料理は何時もより少し豪勢な品が出ている。


「欲しい物? 特にないなぁ…… あっでも道具置き場に置いてあった、鎌の予備がもう無くなっていたよ。新しいの沢山買っていた方がいいんじゃない?」


「ん? そうなのか? 鎌が無くなれば困るから、かなりの備品を置いていた筈なんだが……」


 酔っているので、思考力も落ちている。

 ちょっとだけ考えていた父さんは買えばいいかと納得する。

 本当は鎌のストックは十本程あったのだが、俺が全て使い果たしていた。

 それもそうだろう、いくら大切に整備をしながら使ったとしても魔物相手に使っていたのだ。

 一万匹以上のゴブリンを倒しての十本なら、十分に元を取っている。


 この六年間で俺の砥ぎの技術が、鍛冶士並に向上しているのを知っているのは、俺自身だけだ。


 武器の不安を払拭したかった俺も、いつの間にか上機嫌になっていた。

 その時に俺はある事を思いついた。


 それから一ヶ月後、今日から一週間、辺境のアイール村に商人がやってくる。

 村人たちは朝からソワソワとしている。

 誰もが心待ちにしているのだろう。


 そして三台の馬車が街道を進み遠くから見えてきた。

 その瞬間村人達は大きな歓声を上げる。

 商人の馬車は村の中央にある小さな広場に停車すると、その場所でテントを建てて簡易の商店を作り上げた。

 護衛の冒険者は二名付いて来ており、道中の護衛及び村に滞在している時の強盗対策で雇われていると父さんが教えてくれた。


 初日から大行列が出来る賑わいを見せ、それは最終日の前まで続いた。

 父さんも長時間並び、お目当てのネックレスと予備の鎌を大量に購入している。


 母さんが嬉しそうにネックレスを付けて食事を作っている時に、俺は父さんに商人はどんな人かと聞いてみた。


「そうだな…… 父さんより少し若い人だな。人当たりも良いし、あれは結構化けるんじゃないのか? 十年後は大商人になったりしてな」


 父さんの見立てでは人が良いとの事で、俺は無理は承知で明日尋ねる事を決める。

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