第33話 ダンジョンコアの秘密
フラルジークへ向けて旅を続けていた俺達は降り始めた雨を避ける為に、地図を広げ一番近い小さな村へ補給を兼ねて立ち寄った。
フムフムの背中には俺とリディア以外にも小さな女の子が乗っている。
この少女は村の側にある花畑に居たのをリディアが見つけて、雨が降り出して村へ戻ろうと走っていたのでフムフムに乗せてあげている。
フムフムの背中の荷台には雨よけの屋根もあるので、乗っている限り雨に濡れる心配はない。
今は二人で仲良く話しており、リディアも笑顔が絶えない。
今思えば、リディアは俺と出会ってからずっと年上ばかりと接していたので、年の近い少女と話せてとても嬉しそうである。
街道沿いの村には冒険者や商人が補給や休憩を兼ねて立ち寄る要所となっている。
その為、補給は村の産業として一端を得ていた。
村人は旅人が訪れると、我先に群がり補給の契約を取る為に群がってくる。
補給には一つのルールが存在しており、買い主が補給元を選べるらしい。
★ ★ ★
「ようこそいらっしゃいました。旅の人、本日は何をご所望ですか?」
来訪者にはまず村長が挨拶を行う。
俺達は巨大な移動獣で旅をする老人と子供の旅人として見えているだろう。
移動獣を用意できるだけの財力を持っていると判断されたのか?
村人たちの対応も悪くない。
先ずは補給に必要な物を告げると、それを用意できる村人を紹介してくれるとの事だった。
「食料と飲める水。それと調味料を買いたいのだが…… 最後に今晩休める宿も提供して欲しい」
「かしこまりました。では早速提供出来る者達を集めましょう」
そして村長に紹介された者達は村長を含む三名であった。
最初の一人は村長本人。そして次に太った男性。そして最後の一人が子連れの女性であった。
その連れ子は先程村までフムフムに載せてあげていた少女だった。
提供できる者達は順番にアピールを始めた。
村長は広い家を持ち、俺達がゆっくりと休める事を保証してくれた。
食料や調味料も在庫、種類も十分ある。
次の男性は毎日、新鮮な水をストックしているみたいだ。
食料も新鮮な水で育てた野菜だから美味しいと言っている。
部屋は二部屋用意出来るようだ。
最後の女性は食料は干し肉とパン。
そして数種類の調味料を用意できると言っていた。
だが空き部屋は一つだけで備え付けのベッドも一つとの事だ。
条件で言えば村長か太った男性の所だろう。
だけど俺の事をジッと見つめてくるリディアの様子を見れば言いたい事はわかる。
俺はリディアに向けて笑みを浮かべた後、最後の女性を指名するとリディアの表情にパッと花が咲いた。
村長達もまさか女性が選ばれるとは思っておらず。
悔しそうな表情をしている。
その後、俺達は先導する女性の後に続き、今日泊まる事となる家へと向かう。
リディアと少女は手を繋ぎ、楽しそうにしている。
★ ★ ★
案内された家に住んでいるのは母親と子供のみであった。
旦那さんは遠方へ狩りに出かけているようで、帰ってくるのは一月後との事だ。
普通の冒険者や商人相手の場合は旦那が居ない時は宿の提供を断っているみたいだが、今回の客は老人と少女と言う事で家を荒らされる事や、自身の危険も少ないと判断して立候補したと説明を受けた。
迂闊に泊めると危ない事もあるのだろう。
家に入るとまずは食事を振る舞われる。
食事後には購入材料の価格の話を詰める予定になっていた。
リディアは少女と共に食事を取り、一緒に風呂にも入ると言っている。
リディアを見ているとお姉さんの様に振る舞っており、楽しそうにしていた。
俺はリディアが少女と風呂に入っている間に母親から干し肉や調味料の値段を確認する。
商会で買うより少し高いが、適正価格範囲内だと思ったので買い取りの意向を告げた。
俺が値切り交渉をしなかったので彼女も驚き、少し量を増やして入れておくと言ってくれた。
リディア達が風呂から上がりその後に俺も入る。
俺が風呂から上がるとリディアが近づき今日は少女と寝たいと告げてきた。
迷惑にならないなら、と了承するとリディアは少女と手を繋ぎながら母親の元へ走っていく。
そして俺は用意された部屋に一人で眠る事となった。
★ ★ ★
今ベッドの上でダンジョンコアを眺めている。
旅に出てから一人で眠るのは久しぶりだ。
だが急に一人になると暇を持て余してしまっている。
つい手持ち無沙汰からゴブリンのダンジョンコアを取り出し、果実水を飲みながらランプの光に当てながら眺めていた。
「緑に輝くゴブリンのコア…… んで、こっちが紫色の蜘蛛のコア……」
俺が持っている2つのコアを交互に見比べる。
ゴブリンより蜘蛛の方が一回り大きい、魔物の種類が違う為だろうか?
「ダンジョンコアって売れば金になるのかな? でも迂闊に売るのも危険な気がするし……」
コアはダンジョン攻略の証である。
持っているだけで注目を浴びるのは目に見えていた。
今後このコアをどうすればいいのか? とランプの明かりに照らしながら考えていると、突然部屋のドアが開かれた。
俺は見られたらヤバイと感じ、咄嗟にコアをギュっと手の平で握りしめ隠す。
その瞬間に頭の中に効果音が鳴り響く。
「……おじ様」
「何だリディアか? どうしたんだ?」
「チャスカちゃんにご本を読んで上げたくて……」
どうやらリディアは本を取りに来た様だった。
アーデルに居る時にリディアが意外と本好きと知った俺は、旅に出る前に数冊の冒険譚をリディアの為に買い与えていた。
「そうか、なら持って行くといいよ。でもドアを開ける前にはノックしないとな」
「……あっ! ごめんなさい」
「次から気を付けていけばいいさ」
リディアは本を抱きかかえると、急いで部屋を出て行く。
早く少女に本を読み聞かせてあげたいのだろう。
俺はドアが閉まった後に、先ほどの効果音の事を考えた。レベルアップ時とは違う音で聞いたことがない。
そして握りしめた手の平を開いてみると、ダンジョンコアは無くなっていた。
「どういう事だ?」
とりあえず先程の音がステータスにどんな影響があるのかを調べるために画面を表示させる。
「新しいスキルを覚えている…… モンスタースキルだって!? もしかしてダンジョンコアは魔物のスキルを与える事が出来るのか?」
試しに蜘蛛のコアを取り出し先程と同様に力強く握り締めると、同じように効果音が頭に響く。
「これは間違いない! ダンジョンコアは攻略者にダンジョン特有のスキルを与える物だ。これならダンジョンをガンガン攻略した方が強くなれる」
俺はステータス画面を見ながら、蜘蛛のスキルも手に入れた事を確認する。
俺は強くなる為にダンジョンの攻略を目指すと決めた。
★ ★ ★
クラウス・ブラウン
レベル-11 必要魔物討伐数 7,400匹 累計魔物討伐数101,960匹
職業 ヒーロー レベル2
能力
力 48+3
素早さ 50+3
魔力 56+3
アクティブスキル
【変身】取得難度:3 取得条件:職業選択でヒーローを選択
効果:ヒーローに変身する。能力補正+効果範囲の敵の注意を一身に受ける
【フォトンソード】取得難度:1 取得条件:ヒーロー レベル2
効果:自身の武器に光属性付与による攻撃力上昇。超振動属性の付与による切断力の上昇。スキル使用中は継続的に魔力を消費
パッシブスキル
【逆転】取得難度:10 取得条件:不運
効果:取得者の成長が逆転する。
【武具の心得】取得難度:8 取得条件:レベル99
効果:職業に関係なく全ての武器、防具をマスターレベルと同等に扱う事が出来る。
【魔力の真理】取得難度:8 取得条件:レベル99
効果:全てのスキル及び魔法使用時の必要魔力量を99%減少させる。
【ゴブリンと戦う者】取得難度:1 取得条件:ゴブリン撃破数1,000匹
効果:対ゴブリンとの戦闘において、全ての能力値が+10。ゴブリン発見率の上昇
【集団戦闘】取得難度:4 取得条件:一対三倍以上の集団戦闘における勝利回数20,000回
効果:自分を中心に半径四メートル範囲内の絶対空間認識能力。
【罠の達人】取得難度:3 取得条件:罠による魔物討伐数20,000匹
効果:自身が設置した罠の認識阻害効果(大)、罠の威力向上(大)。設置された罠を必ず発見する。任意の者に対してのみ罠を発動させる事が可能。
【研ぎ】取得難度:1 取得条件:刃物の研ぎ回数10,000回
効果:砥石でなく、普通の石であっても刃物を研ぐ事ができる。研ぎ作業の砥石の摩耗率減少。刃物の攻撃力の上昇(小)
【ピンチ】取得難度:3 取得条件:職業選択でヒーローを選択
効果:危険度に合わせて能力値が上昇・守る者の数だけ+能力値補正。
【魔物討伐者】取得難易度:5 取得条件:【魔物を狩る中級者】+【観察者】+【看破】
効果:魔物の特長や弱点、動きを瞬時に把握し魔物の行動を予測できる。戦闘時に能力値が1.5倍となる
モンスタースキル
【ゴブリン】取得難度:3 取得条件:ゴブリンダンジョンを攻略する。
効果:毒耐性。どんなに腐った物を食べたとしても、身体に影響がでない。
【大蜘蛛】取得難度:4 取得条件:スパイダーダンジョンを攻略する。
効果:身体が接していれば、壁や天井などを重力関係なく移動する事ができる。
魔法
【女神召喚】取得難度:9 取得条件:レベル100
効果:創造主を召喚する事が出来る最上位魔法




