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第30話 救出

 捕らえられていたシルビア達を救出してみると、かなり衰弱しているみたいだった。

 

「ふぅ…… 衰弱しているけど、命の危険は無さそうだ」


 その事を確認した俺は安堵の息を吐く。

 俺は真っ先にリディアへシルビア達の無事を伝える。


「おじ様、ありがとうっ!! おじ様じゃなかったら、シルビア姉様は絶対に助かってなかった」


「俺もお前を泣かせずにすんで、良かったよ。それにしても今回は疲れたな」


「……おじ様にお返ししないといけないね」


 そんな会話をしていたが、今は衰弱しているシルビア達を早くダンジョンから運び出さないといけない。

 しかし魔物に囚われていた冒険者の数はシルビアを含め三名。

 能力値が高い俺でも三人を担いでダンジョンから出るのは一苦労だ。

 それに引きずって帰る訳にも行かずに思案していると遠くから大勢の声が聞こえて来た。


 どうやら、シルビアの仲間が冒険者ギルドから応援を呼んで来てくれたのだろう。

 俺は彼達にシルビア達を運んで貰えばいいと考えた。


「リディア、皆を呼んで来てくれ。たぶん応援の冒険者達だ。この惨状を冒険者に見せるのは嫌だが、今回は仕方ない。どうせ見つかるならシルビアさん達を冒険者達に運んで貰うのがいいだろう。それと俺は余り目立ちたく無いから嘘をつくが、リディアも話に合わしてくれないか?」


「……ん。わかった」


 テクテクと駆けだしたリディアを見つめながら、俺はこの惨状の言い訳に頭を悩ます。

 目の前広場には、百個近いジャイアントスパイダーのドロップアイテムとダンジョンマスターのコアが落ちている。


「さて、何て説明したらいいんだ? 誰もが納得する言い訳…… あっそうだ。架空の人物を作り上げるか!? こんな爺さんが一人でダンジョンを攻略したと言われるより、信用されるだろう」


 俺は一番目立つダンジョンマスターのコアだけを手に取り、そっとウェストポーチの中へ放り込んだ。




★   ★   ★




「おいっ!! これは一体どういう事なんだ!」


 応援メンバーの中に居た、ギルド古参の男性冒険者が驚きの声を上げている。

 彼のレベルは30台でアーデルの街の冒険者の中ではトップレベルの実力を持っていた。


 彼が驚くのも無理は無い。

 彼の目前に広がるのは、この地域では高難易度を誇るビックスパイダーの素材が数えきれない程に点在する光景だからだ。


「信じられないが、まさかアンタがやったのか?」


 この質問を受ける事は俺も解っていた。

 この場所にいたのは俺とリディアだけで、二人で倒したと本当の事を言っても絶対に信じて貰えないだろう。

 それほど異常で、あり得ない無数のドロップアイテムの数が転がっている。


 俺の能力値はレベルと比例したものでは無く、俺よりレベルの高い冒険者達よりも能力値は高い。

 しかしそんな事は他の冒険者には関係のない事であり、俺もわざわざ言う事でもなかった。


 ハッキリ言って、俺は目立ちたくない。

 俺は【逆転】のスキルの効果でレベルを上げれば若返ってしまう。

 もし俺の姿を覚えている者がいれば、きっと俺が若返っている事に気付く者も現れるかもしれない。

 そうなれば周囲から気味悪がられる事間違いなしだった。

 周囲の者たちから差別されるのは、アイール村だけで十分である。

 なので俺はは大人しく誰にも気づかれないまま、レベルを上げていこうと決めたのだった。


 なのでここは一芝居打つ事にする。


 咄嗟に俺が描いたストーリそれは……

 俺がダンジョンへ入った後に、物凄く強い冒険者が極秘任務でこのダンジョンに偶然入って来る。

 そして俺と出会い、俺が案内役となって二人組の冒険者とダンジョンを攻略した。

 ちなみに殆どの魔物は冒険者達が倒して俺は付いて行っただけ。

 最後にダンジョンを攻略した冒険者達は、この程度の素材など要らないから最後まで付いてきた俺に全部やると言って去っていった。


 ちょっと無理があるかも知れないが、レベル20以下のプレートをつけた爺さんが一人で倒したと言われるよりかは、信用出来る話だろう。

 実際説明してみると、男は腑に落ちない顔をしているが他の理由も見つからず、最後は信じてくれた。


「その二人組の一級冒険者って言うのはどんな奴らだったんだ?」


 その問に一瞬言葉を詰まらせたが、どうせ冒険者は星の数ほど居るはずだ。適当に言ってもバレないだと考えた。


「えっと…… 確か白い装備を来た剣士と…… 黒い装備の魔法使い?」


「それって、最近名を馳せている。特級冒険者で二人だけのクラン【エムブレイ】じゃねーのか!? だとしたら納得だ。彼達は風のように現れて、任務を片付けるとすぐに姿を消すとも言われているからな。それにしても誰も死ななくて良かった」 


 そう告げると俺から離れて応援メンバーの元へ戻り、次々と指示を与えていた。

 後で確認した所、無理矢理感は在ったが他の冒険者達もルーキープレートの俺がダンジョンを攻略出来るとは想像出来ずに、やはり俺の嘘を信じている。

 そしてアーデルの冒険者達は俺に【運の良い爺さん】の称号を与えた。




★   ★   ★




クラウス・ブラウン

  

レベル-11    必要魔物討伐数 7,805匹  累計魔物討伐数101,555匹


職業      ヒーロー レベル2     


能力


力       48+3

素早さ     50+3

魔力      56+3



アクティブスキル


【変身】取得難度:3 取得条件:職業選択でヒーローを選択 

効果:ヒーローに変身する。能力補正+効果範囲の敵の注意を一身に受ける

      

【フォトンソード】取得難度:1 取得条件:ヒーロー レベル2

 効果:自身の武器に光属性付与による攻撃力上昇。超振動属性の付与による切断力の上昇。スキル使用中は継続的に魔力を消費


パッシブスキル      


【逆転】取得難度:10 取得条件:不運

 効果:取得者の成長が逆転する。


武具の心得(マスターウェポン)】取得難度:8 取得条件:レベル99

 効果:職業に関係なく全ての武器、防具をマスターレベルと同等に扱う事が出来る。


魔力の真理(マジックマスター)】取得難度:8 取得条件:レベル99

 効果:全てのスキル及び魔法使用時の必要魔力量を99%減少させる。


ゴブリンと戦う者(ゴブリンスレイヤー)】取得難度:1 取得条件:ゴブリン撃破数1,000匹

 効果:対ゴブリンとの戦闘において、全ての能力値が+10。ゴブリン発見率の上昇


【集団戦闘】取得難度:4 取得条件:一対三倍以上の集団戦闘における勝利回数20,000回 

 効果:自分を中心に半径四メートル範囲内の絶対空間認識能力。


罠の達人(トラップマスター)】取得難度:3 取得条件:罠による魔物討伐数20,000匹

効果:自身が設置した罠の認識阻害効果(大)、罠の威力向上(大)。設置された罠を必ず発見する。任意の者に対してのみ罠を発動させる事が可能。


【研ぎ】取得難度:1 取得条件:刃物の研ぎ回数10,000回

効果:砥石でなく、普通の石であっても刃物を研ぐ事ができる。研ぎ作業の砥石の摩耗率減少。刃物の攻撃力の上昇(小)


【ピンチ】取得難度:3 取得条件:職業選択でヒーローを選択

 効果:危険度に合わせて能力値が上昇・守る者の数だけ+能力値補正。


魔物討伐者(モンスターハンター)】取得難易度:5 取得条件:【魔物を狩る中級者(ベテランハンター)】+【観察者】+【看破】

 効果:魔物の特長や弱点、動きを瞬時に把握し魔物の行動を予測できる。戦闘時に能力値が1.5倍となる


魔法


【女神召喚】取得難度:9 取得条件:レベル100

 効果:創造主を召喚する事が出来る最上位魔法




★   ★   ★




 俺がステータス画面を見て大きな変化に気がついた。

 それは覚えていたスキルが消えて、新たなスキルが産まれていた事だった。

 新しく手に入れたスキルは【魔物討伐者(モンスターハンター)】である。

 取得条件として【魔物を狩る中級者(ベテランハンター)】+【観察者】+【看破】の三つが必要となっていた。

 俺は【看破】のスキルなんて持っていなかったので、ジャイアントスパイダーとの連戦中に覚えた事になる。

 その三つのスキルが一つに統合されて俺は上位スキル【魔物討伐者(モンスターハンター)】を手に入れていた。

 父さんからスキルの説明を受けた時には合成や統合って言うスキル属性は無かった。

 確か【レベル系】・【カウント系】・【ギフト系】の三つの筈だ。

 ただ単に父さんが知らなかっただけなのか? 誰も知らないスキル系統なのかは分からないが、俺は今回覚えたスキルを俺は【統合系】と呼ぶ事にした。


 次に気づいたのは職業レベルにはマイナスが付いていない事だ。

 俺のスキル【逆転】の効果は俺の基本ステータスに影響し、後から覚える職業には影響しない様である。


 色々と大変な目に遭ったが、無事レベルも上げる事が出来て俺も満足していた。




★   ★   ★




 その後、宿に帰って俺はリディアと食事を取りながら嬉しそうにレベルが上がった事を話した。

 嬉しい時に食べる食事の味は格別で、俺は舌鼓を打つ。


「おめでとう、おじ様。実は私もおじ様の援護をしている間にレベル上がったの。おじ様が弱らせていた魔物なら何とか倒せたから」


 俺は少々嫌な予感がしながらも、聞かずにはいられなかった。


「へぇ~、リディアも上がってたんだな。それで幾つ上がったんだ?」


 リディアは肉を口に頬張りながら、指を三つ立てていた。


(俺の方が確実に多くの魔物を倒しているのに……)


 突きつけられた過酷な現実に俺は大きく肩を落として遠くを見つめた。


「おじ様……? どうしたのおじ様? おじ様~!」


 リディアは死んだ眼をする俺の心情に気づく事は無かった。

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