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妄想女性とイケメン毒舌男  作者: 海埜 ケイ
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家に帰ってから考える




「ただいま~」


「お帰り、お姉ちゃん。夕飯で来てるよ」


「ありがと」


 大学二年生になった妹は、実家を出て私と二人暮らしをしている。

 実家を出た理由は家庭内の複雑な事情があり、私がこの年になって今だに結婚できていない理由の一つでもあった。私自身の性格に難があったとは言いたくない。


 妹は長い髪を一つに結び、ピンクのルームウェアに白いエプロン姿と言う完全な夫の帰りを待つ新妻感があり、とても可愛い。

 私と違い、華奢な細身で、簡単な化粧もするし、おしゃれもする。ついでに片想いをしている後輩の男の子までいる上に、年上の男性からアプローチをされているというリア充っぷりだ。

 優秀な成績も、今の体型も、日々の努力を怠らない結果なので、姉としては鼻が高い。

 最近は、こうして夕飯も作ってくれるようになり、どこまでハイスペックを目指すんだと訴えたくなる。

 素早く手洗いうがいを済ませて、リビングへ向かうと、今日はパスタだった。

 色とりどりの野菜が乗り、紫のスープの謎パスタだ。


「今日の夕飯は、料理サイトに載っていたスープパスタなんだけど、キャベツの千切りの所を、紫キャベツにしたら、毒々しい色のスープになっちゃったんだ。味には問題ないと思うから食べて食べて!」


 妹に促され、私は両手を合わせて「いただきます」と合掌して、食べた。


(味は、普通においしいね)


 これはアリだ。

 私は拳に親指を立てると、妹は嬉しそうに笑って、自分の分のパスタも食べ始めた。





 食事が終わり、お風呂も順番に入り終わると、後は自由時間だ。

 妹は自室で大学の課題に取り組み、私はリビングで音楽を聴きながらスマホをいじっていた。

 自室に戻ってもいいのだが、リビングにあるテーブルと椅子が気に入っているのもある。

 朝から溜まっているタイムラインを眺め、気に入ったものに印を付けて保存する。たまに広告漫画のページを飛んで試し読みをしては、ネットで検索して後日購入を考える。


(……何だろう、ダメ人間になってる気がする)


 私は立ち上がり、自室に戻って自分専用のノートパソコンを開いた。昔、夢見たのは小説家。しかし今はどこにでもいるような会社員。

 自分を変えたいと思うなら、行動をしなくてはいけない。

 待っているだけでは何も残らない。

 ただ凡庸に生きるだけなら毬藻だってできる。


(私は藻じゃない、生きてる人間だ。ちゃんと夢を持つ人間だ)


 ふいに思い出すのは、帰りの電車内での出来事。



『触るな、モ女。うつるだろ?』



 沸々と上がってくる怒りに任せて、私はワープロソフトを開き文章を打った。

 支離滅裂でも、語彙力が無くても構わない。

 これは日記だ。私の心だ。

 書き終わると、頭も心もすっきりしてくれるので、気持ち的に楽になる。

 ファイルに今日の日付を入力して、電源をオフにする。


「今日は色々あったなぁ~」


 いいこともいやなこともあったとしみじみしていると、スマホの時計が11時を表していた。


「……寝るか」


 明日も朝は早い。

 私は妹に一声かけてから、部屋の電気を消してベッドに潜り込んだ。


「いい夢が見れますように、明日も良い日でありますように」


 小さい頃から続けていた習慣を口にして、私は眠りに入った。



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