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クリスマスの迷惑なお客

作者: マージェリー・アリンガム

昨年に引き続き、未訳のクリスマスミステリを、クラシックミステリファンの皆様にお贈りいたします。

作品についての詳細は後書きに記しましたので、ぜひそちらもご覧ください。

「親愛なるアルバート


来たる休日、素敵な村の人たちを招いて小規模なホームパーティーを開くことにしました。あなたが来てくれたらとても嬉しいわ。十時四五分にリヴァプール・ストリート駅を出る列車に乗れば、クリスマス・イヴのランチにちょうど間に合うように迎えに行くことができます。ねえ、このお誘いを断らないでくださいね。シェイラはここもと気難しくなったし、私はウェルキン家の人たちをおもてなししなければならないの。アーダ・ウェルキンは素適な女性よ。彼女の宝石はとても貴重なものらしくて、きっと身につけてくることでしょう。でも、シェイラは好ましからざる青年を招いてしまったわ。事業が破綻したピーターズ家の息子よ。一文なしの上に、しかもダーリン、多分自暴自棄になっているわ。母親として心配するのは当たり前のことよね。あなたを頼りにしているのを忘れないで。


あなたの親愛なるメイ・タレット


追伸:もし必要でないのなら、車は置いてきて。きっとウェルキン家の人たちが二台持ってくるはずだから」


 セレブなアマチュア犯罪学者として巷では知られているアルバート・キャンピオン氏は、かつて自分のことを「僕は世界中の人たちの伯父さんなんだ」とどこか悲しげに語ったと言われている。この手紙を二度読み、そして屑カゴへと投げ入れる間にも、やや乱暴に、しかしきっぱりと、同じようなことを口にした。それから、朝食室の隅にある書き物机に向かって、便箋を一枚引っ張り出した。


「親愛なるメイ」 彼は簡潔に書いた。

「その問題は扱えない。僕を引っ張り出すのは諦めてほしい。シェイラとジョージに愛していると伝えてくれ。


いつもあなたの友人であるアルバート


追伸:君の窮地には同情する。そこで、その状況にぴったりの男を紹介したいと思う。P・リチャーズだ。チズウィックのアカシア・ボーダー十三番地に棲んでいる。彼は首都警察を引退したが、僕同様に裏のない、誠実で見苦しくない男だ。彼が君の家にいる間は君のお客の貴重品は絶対に安全だし、それに彼の賃金はごく安価につくだろう」


 彼は便箋を畳むと封筒に入れて封をし、サフォーク州、ファラオズ・フィールド、ファラオズ・コート、レディ・タレット宛と書いた。

「言っておくがね、親愛なるメイ」と封筒をマントルピースの上に置きながら、彼は大きな声で言った。「私服警官を家に置きたいというのなら、金で一人雇えばそれで済む。尊大ぶる訳ではないが、僕にも矜持というものがあるのだよ」

 朝食のテーブルにぶらぶらと戻ったキャンピオン氏は、残りの手紙を手に取った。郵便公社総裁の年次の警告をいささか深刻に取った賢明な人々は、グリーティングカードを一週間は早く発送したものらしい。その山の下に、もう一通私的な手紙が埋もれていた。大きな青い封筒には、ほとんど活字のような几帳面な文字で宛名が書かれている。手紙の主は、二〇年代初頭に幼年学校に通ったのに違いない。

 キャンピオン氏が手紙を開くと、シェイラ・タレットの心から零れた叫びが噴き出した。


「愛しいアルバート


クリスマスにうちに来てください。きっととんでもないことになるわ。お母様は妙なことを考えているし、ウェルキン家の人たちは不気味だし。マイクは素敵な人よ。少なくとも私は彼を好きだし、きっとあなたもそうなると思うの。マイク・ピーターズは、会社が潰れた時に刑務所に行かなきゃいけなかったリプリー・ピーターズさんの息子よ。でもそれはマイクのせいではないでしょう? まだ捕まっていないというだけで、本当は刑務所に行かなきゃいけない良き父親だって大勢いるにはずだわ。いえ、お父様のことを言っているんじゃないのよ(お父様のためにも来てくださらなきゃ。アゾレス諸島から帰って以来落ち込んでしまったわ。ウェルキン家の人たちのことを考えたら当然ね。お父様ったらお気の毒)。私たちの問題であなたの時間を無駄にしてほしいなんて頼めないけれど、でもアーダ・ウェルキンはダイヤモンドについては随分卑しいし、お母様はマイクがそれを盗むと考えているみたい。父親が刑務所にいるからですって。ダーリン、もしよかれと思うなら、どうか私たちを助けてください。だって、クリスマスなんですもの。


(もし来てくれるなら)いつでもあなたの親愛なるシェイラ


追伸:私はマイクのことを愛しているの」


 しばらくの間、キャンピオン氏は手紙と痛ましい追伸を繰り返し眺めた。それから少し残念そうに、しかし心の裡の美徳を発揮して、レディ・タレット宛ての手紙を破り捨て、もう一通の手紙を改めてしたためたのであった。


 クリスマス・イヴの天気は、いかにも冬といった風情だった。街は、凍えるような濃い霧に頭まですっぽりと包まれてまるで夜のようだ。しかしその中でも、電飾に飾られた店先だけは伝統的な祭りの雰囲気に照らされて明るくなっていた。単に寒いというだけではない。ジメジメとして煤に汚れた大気は骨身に容赦なく食い込む。ファラオズ・コートは、三百エーカーの寒々しくわびしい土地にそびえる邸宅である。河口の向こうに広がる潟のように真っ平らなこの土地は、土壌が塩っぽくて草も生えない。この土地についての褒め言葉は、残念ながら思い浮かばなかった。

 シェイラと彼女の父親について考えることで、彼の心は少し浮き立った。おかげで心配性のメイのことを考える憂鬱は概ね相殺することができたようだ。分厚いオーバーのボタンをしっかり掛けて、最善を望むことにしよう。

 駅はまるで、幸福なる大混乱の極みであった。休暇に東海岸を訪れることのできなかった者全員が、贈り物をここに送り付けたかのようだ。キャンピオン氏は、自分が用意した贈り物のことを思い出してスーツケースを思わしげに眺めた。ジョージの葉巻の箱は大きすぎたかもしれない。メイの香水瓶は控えめすぎたかもしれない。シェイラはチョコレートを喜ばないほど大人になってしまったかもしれない。あるいは、想定外の子どもたちの群れが、物欲しげに彼の部屋の周りをうろついて薄っぺらな旅行鞄にじっと視線を注いだらどうしようか……

 列車には余裕をもって乗り込むことができたが、ちなみに発車は四十五分も遅れている。隅の席に座って、プラットフォームの群衆をぼんやり眺めると、そこにチャーリー・スプリングがいた。見覚えのある顔だとすぐ分かったが、名前を思い出すのには少しばかり頭を働かせなければならなかった。

 牢獄に入っていたせいか、スプリング氏は恰幅が良くなっているようだ。キャンピオン氏は頭の中で、彼の特徴的な眼差しを、がっちりした肩と発達した胴体に組み合わせた。半年前、オールド・ベイリーの被告席に立っていた時にはひょろひょろだったはずだ。その時には、小さな体、狭い額、そしてその下でぎょろりと睨む世界で最も愚かしい瞳に、窓から日光が注いでいたのが思い出される。

 元犯罪者のチャーリーはひどく楽しげだった。地域共同体にとっては凶兆と言える。しかし、キャンピオン氏には関係のない問題だ。今はクリスマスだし、彼は既に自分の問題を抱えているのだから。

 しかし習慣の力により、キャンピオン氏の注意は自然とその男に向いていった。どうやら「ショバ」に出てからそれなりに時間が経っているようだ。それは、牢獄に入っていた者が自然と発してしまう、廉恥の雰囲気を既に纏っていないことからもはっきりしている。彼の神経は大分落ち着いているらしい。見積もりでは、釈放から一週間かそこらといったところか。一点付け加えるなら、スプリング氏はキャンピオン氏の存在に気づいているようだ。彼は脳なしだが、奇妙なずる賢さを被告席で示していた。

 スプリング氏が下の等級の列車に乗り込んだので、キャンピオン氏は眉をひそめた。チャーリー・スプリングは何か考えがあって自分を避けた。彼はスプリング氏に会った最後にしてただ一度の機会のことを思い出そうとした。その日、彼は法廷に専門的な証人として呼ばれていたはずだ。スプリング氏が刑罰を宣告された日、彼は同じ裁判所の中にいた。スプリング氏が家宅侵入の罪を犯したこと、そして証拠を読み上げる刑事の落ち着いた声を、彼は思い出した。

 しかし何かがある。もっと決定的で彼固有の何かが。この疑いは彼の心の片隅でずっと浮き沈みしていたが、捕まえようとするたびにひょいと逃げてしまった。その心配はごくぼんやりとしたものだったが、チェルムズワースまでの道のりの間中、消え去ることはなかった。


 チャーリーは、一五〇人もの陽気な乗客の一団とともに、イプスウィッチで電車を降りていった。キャンピオン氏は、彼がプラットフォームをさっさと通り過ぎるのを、彼の曲がった首筋を、手に握った大きくて真新しい鞄を、じっと見張り続けた。

 ふと、キャンピオン氏に天啓が降りてきた。あの男の服装は、どうも彼らしくなかったようだ。氏の覚えていたスプリング氏は、チェックのスーツやピンクのシャツといったけばけばしい、しかも古ぼけた服装をしていた。しかし、今日の彼はどうだろう。真新しい海軍外套を着た彼は、まるで謹厳実直そのものといった風だったではないか。いや、キャンピオン氏の記憶に居座ったのは服装についての違和感だけではない。あの男には何だか妙な所がある。変わっているというか、滑稽というか……

 はっきりした結論が出ないことに微かな苛立ちを覚えつつ、キャンピオン氏はチェルムズワースまでさらに十マイル分列車に乗った。田舎の駅舎の中には、夏であれば素朴な風景美を感じさせるようなものが稀にある。しかしチェルムズワースの駅舎はどの季節であっても、吹きさらしで荒廃しきっていることだろう。キャンピオン氏が降車したのは、狭いコンクリート敷きの通路である。小さな町は谷底にあったが、そこに降りていく途中で激しい雨に打たれて、肺がしょっぱい水で一杯になった。そんな状況だったので、編み上げ靴がコンクリートを踏みしめる音が聞こえ、そして黄褐色の服を着た姿を目にした時、しばらくぶりに心躍る物に出会って、彼は衝撃を受けた。蜂蜜色の瞳、赤い頬、白い歯、柊の枝を添えた、小さくて洒落たツイードの帽子、そこに収まりきらない赤い奔放な巻毛。

「ご機嫌いかが?」 シェイラ・タレットは嬉しそうだ。「こっちよ。あなた、ランチには遅れたわね。みんなお腹を空かせた子どもみたいにイライラしているわ」

 彼女は腕を組んで強く引っ張った。

「来てくださるなんて……あなたは英雄よ。私もお父様もとても嬉しい。あなたがやってきて、やっとクリスマスが始まるのかもしれないわね。天気はあいにくだけれど、なんて素晴らしいことかしら」

 キャンピオン氏は、雰囲気が明るくなってきたと無理やりに受け入れようとした。このだだっ広い風景の中でどこまでも伸びていくように思える灰褐色の影でさえも、名状しがたき魅力を備えているかのようだ。

「今夜には雪が降るでしょうね」と、彼女は羽根布団のような空を見上げた。「ねえ、すごくない? クリスマスになるといつもワクワクしてくるのよ。あなたにもプレゼントを用意したわ。ねえ、あなたは何か持ってきてくれた?」

「僕は君のお客なんだよ?」とキャンピオン氏は威厳を込めて言った。「クリスマスの朝に、君にチョコレートを渡そうと思っていたんだ。でも、サプライズの方が良かったかな?」

「ダイヤモンド以外なら何でも大歓迎!」と、シェイラは元気に車に乗り込んだ。「アーダ・ウェルキンはダイヤモンドを持って来たわ。二千ポンドの価値があるんですって。首にぐるりと巻き付けているけれど、あまりの不名誉さに鰐だって嫌がりそうな代物。嫌味っぽく聞こえたらごめんなさい。でも、食事の度に見せびらかされて、ゲンナリしてるの」

 キャンピオン氏は、彼女の隣から車に這い上った。

「ねえ、君」と彼は言った。「僕は幸福なクリスマスがいいんだがなあ。平和で善意に満ちている奴だ。村の子どもたちが声を限りに大騒ぎし、みんなの耳に聖歌、というか少なくとも元はそうだったものが届くような。その間、僕は消化に悪いものをせいぜい腹に詰め込むことにするよ」

「小さな村の素敵な子どもたちにはすぐ会えるわよ」と、ミス・タレットは笑った。「二五〇人もいるの。壮観よ。アーダ・ウェルキンでさえ、お母様がお屋敷でやるつもりの年一回のクリスマス・イヴ・パーティーを止めさせようとしたくらい。お屋敷につく頃には、少し寝て昼ご飯を抜いてお茶を一杯飲むくらいでちょうどいい時間になるでしょう。その後は音楽室へ。お母様たちが準備をしているから」

 キャンピオン氏は微かに身じろぎすると、そっと溜息を吐いて眼鏡の位置を直した。

「ジョージが前に何か言っていたのを思い出したよ」と彼はもぐもぐと口を動かした。「伝統的な奴じゃなかったかな?」

「大体そんな感じね」と彼女は上の空で話した。「お母様は何年か前に、それをモダン風に改良したの。お茶を飲んで、クリスマスツリーを置いて、サンタクロースを呼んで……プレゼントの箱をみんなで手渡しするの」

 そのことを思い出した彼女は、落ち込んでしまったようだ。車が吹きさらしの道に出た頃には、彼女はすっかり黙りこくってしまった。

 キャンピオン氏は密かに彼女のことを気にとめていた。彼女は確かにとても美しい女性に成長したようだ。であれば「会社の経営が破綻したピーターズ家の息子」が、彼女の額に浮かんだ不安よりも価値のある存在であってほしい、と望まずにいられなかった。

「父親が逮捕された若い紳士はどうしているんだい」と、おずおずと踏み込んでみた。「彼は今、ファラオズ・コートにいるのかな?」

「マイクのこと?」と言った彼女は目に見えて元気になった。「そうよ。この一週間で一番いい時に来てくれたの。お父様は率直に言って彼を好いているし、お母様のために氷を切ってくれた時なんかは、最高の瞬間が訪れた!と思ったくらい。でもそれはウェルキン家の人たちが来るまでのこと。それ以降、ことはそう単純ではなくなってしまったの。彼らは、いつものように約束よりも一日早く来て、それからもう二日も居座っているのよ。息子はいやらしいし、父親はその後ろをぴったりついて回るし、それにアーダはぞっとする」

「不愉快な人たちなの?」とキャンピオン氏は穏やかに尋ねた。

 シェイラはもう笑わなかった。

「アーダに会ったらすぐに分かるわ……でもその前に言っておく。ウェルキン家はびっくりするほどお金持ちで、しかもお母様は山羊褒めをするの。それが問題なのよ」

「山羊褒めって?」

 シェイラは大まじめな顔で頷いた。

「上流階級の女性の多くがたしなむ作法よ。個人広告欄にこんな感じの小広告が出ているのを見たことはない? 『爵位持ちのレディは若い女性の付添役(シャペロン)をするか、より年上のレディのためにパーティーを催しましょう』とか『レディたるXさんは、ロンドンの社交シーズンに適切な人物をもてなしましょう』とか。要するにXさんは、レディと認められるのと引き換えに、社会的な野望を持った山羊たちを褒めちぎらなくてはならないの。まったく不愉快だわ。でも心配なのは、お母様がアーダをトップの地位に置くために支払っている対価。お母様は結構な大金を使ってるの。お父様はもちろんそのことを知らないし、知るべきではないわね。きっと卒倒しちゃう。彼がウェルキン家の人たちをどれほど信頼しているか、想像もできないくらいなのに」

 キャンピオン氏は何も言わなかった。その罪の報いを家族に支払わせるとは、いかにもメイ・タレットらしい話だ。シェイラは話を続けた。

「ウェルキン氏とその息子には今回初めて会ったわ」と、彼女は一息に言った。「お母様はこのシーズンだけでアーダのために二度パーティーを催しているし、ウェルキン家はダイヤを見せびらかすためにオペラ座にボックスシートを持っている。その上、どうしてうちの地元の人たちを大勢集めなきゃいけないの? 本当に最悪だわ」

 キャンピオン氏は耳をそばだてた。

「両家の子どもたちが互いに親しくなるのはいいことではないかな」と彼は言ってみた。

彼女の顔が真っ赤に染まった。「そんなところね」と短く言葉を切り、そして一拍置いて続けた。「父親が大物だからというだけの理由で、責任ある地位に就いている若者に会ったことは? 自分よりも五十倍知的な人を、部下だからというだけの理由でペコペコさせている、尊大で冷ややかで、しかも陰気な若者はご存知? 視界に入ると蹴り飛ばしたくなるような若者は?」

 キャンピオン氏は、深くため息を吐いた。「ああ、知っているよ、良くね」

 シェイラは直角カーブを切り抜けた。彼女の額には皺が寄り、その目は思慮深げであった。

「ケネス・ウェルキンはそういう類の人間よ。くだらないし馬鹿馬鹿しいことだから口にするのも恥ずかしいけれど、でもあなたには言うわね。ウェルキン家の人たちをもてなそうとして、私たちは何度も大変な目に遭ってきたの。あの人たちは遠乗りも狩猟も読書もしないから。それで今朝、私とマイクが飾り付けの仕上げをしていた時に、ケネスに手伝いを頼んだの。ほら、ヤドリギには馬鹿馬鹿しい言い伝えがあるじゃない。ケネスは飾り付けのやり方についてあれこれ口出しをするものだから、彼がおふざけをし始めた時にはもううんざりしていた。私は、ヤドリギの下でキスされたからって別に気にしないけど、でも……本当にそんなことをする人がいるなんて!」

 彼女が思い切りアクセルを踏み込んだので、決して神経質ではないキャンピオン氏も、車にひっしとしがみつかざるを得なくなった。

「ごめんなさい」 少し落ち着いた彼女はそう言って、話を続けた。「キスされた時、私は少しもがいたの。でも彼が離そうとしなかったからマイクが怒ってしまって。それで、自制心を働かせるか、自分にぶっ飛ばされるか、どちらか選べと言ったわ。とてつもなく芝居がかった、馬鹿げた状況だった。身を離して、ケネスにそんなことをされたのを忘れてしまえばよかったのに。でも彼は自分にそんな口を利くとは生意気だとか言って、それからマイクのお父様のことを口にしたの。卑怯なことだし、喧嘩になると思った。でも、その場にサンタの衣装を持ったお母様が飛び込んできたの。お母様はマイクを見て、「ねえ、これを着てくださらないかしら。今日の午後屋敷にいる人の中では、あなたが一番似合うと思うのよ」と言ったわ。彼がそれに返事をする前に、ケネスが口をはさんだの。甘やかされた子どもって感じで、顔は真っ赤ですごく怒ってた。「君がサンタクロースになるなんて知らなかったな」って」

 タレット嬢は一つ息を吸って、目を大きく見開いた。

「こんな馬鹿馬鹿しい話ってあるかしら。マイクは自分が役に立つってことを証明したくて、うちに来た時から色々な仕事を買って出てくれた。へとへとになるまで働いてくれたの。誰も彼にそんなことをさせたいと思ってないとは、考えもしなかったのね。お母様だって彼の働きには驚いていたと思うわ。でもその時、お母様は大笑いしてこう言ったの。「うふふ、あなたを巡って男たちが角を突き合わせているなんて」って。それから私たち三人を残してふらふらどこかに行ってしまった。ケネスは衣装を手に取って「ハリッジの品か」と言った。「母さんがレディ・メイと一緒に注文しに行ったと言っていたな。サイズはぴったりだろうから、俺が着ることにしよう」って」

 キャンピオン氏は笑った。彼は自分がだいぶ年を取ったような気がした。

「察するに、マイケル君は紳士らしく手を引いて、ケネス君が聖ニコラスに扮することになったという訳だね」

「いいえ、そうじゃない」とシェイラは少し恥ずかしそうに答えた。「マイクはまだ怒っていたわ、分かるでしょ、ケネスの振る舞いは本当にひどかったから。彼は譲らないことに決めたみたい。お母様が彼にその仕事を頼んだのだから、それは自分の役目なんだって、そう彼は言ったの。話に決着はつかないかと思った。本当に不毛。でもその時、一番馬鹿げたことが起こったの。外で立ち聞きしていたウェルキン氏がのこのこ入ってきて、ケネスにマイクに「譲ってやる」ようにと言ったの。本当はね、もっとベラベラまくし立てていたけど。ああもう、あなたに説明しているだけでムカムカしてくる。でも本当にマイクは素敵な人なのよ」

 キャンピオン氏は彼女の最後の言葉の意味を考えつつ、顔をしかめた。


 ドライヴを終えた彼らが辿りついたファラオズ・コートは、思いのほかくつろいだ感じがする、季節に合わせた雰囲気の良い邸宅であり、人を招き入れるような様子を醸し出していた。キャンピオン氏は冷たく灰色の世界から、巨大なエントランスホールに足を踏み込んだ。大きな暖炉では火がチロチロと燃え、蔦と柊の葉で作られたたっぷりとした花綵が天井の梁に沿って飾られている。

 灰色の髪、そしてケルビムのように優しげな相貌の男であるジョージ・タレットが彼らをそこで待っていた。彼は来訪者の手を熱烈に握り締めた。「君が来てくれて嬉しいよ」ともごもごとした声でジョージは言った。「君に会えて本当に嬉しい」

 彼の強烈な熱心さは明白だった。シェイラは彼の首に腕を巻き付けて、「野蛮人の群れに文明人をやっと一人連れて来たわ」と言った。

 ジョージの罪深き抵抗は昼食を知らせる鐘により打ち切られた。列車が遅れたのに合わせて昼食を遅らせたのだ。キャンピオン氏はずうずうしい使用人にせかされるままに上階の客室に駆けこんだ。

 しばらく経って、彼が階下に向かう途中、階段の踊り場で振り返った時に突然時計が視界に入った。コンソールテーブルの上に佇立するそれは、急いでいたとしても、思わず見ずにはいられない奇怪な代物だ。メイ・タレットはインテリアに凝っていると噂されているが……田舎の大邸宅には、たとえその持ち主が厳格な趣味を有していたとしても、奇妙な家具が集まってくるものらしい。

 キャンピオン氏は、芸術的な異形に対して特別反応してしまうような過敏な神経を持ち合わせた人物ではなかったが、ヴィクトリア朝中期のバロック風美術の一例であるそれを前にして、敬意ある驚きをもって足を止めずにいられなかった。桃色の大理石製のナイトガウンを纏う、野蛮な見た目のブロンズの女性像は金メッキの丸太に腰掛けているが、丸太の端は青と白のエナメルで彩られた時計であった。珍奇なからくりを見つめていると、鐘が大きく元気に鳴り始めた。昼食を知らせる二度目の鐘だ。

 階段を下りてダイニングルームに入るや、キャンピオン氏は時計のことをすべて忘れてしまった。メイ・タレットは小さく愛情に満ちた叫びを上げて彼に飛びついたが、それはまぎれもなく彼女の陽気さを現していた。

「ああ、愛しいアルバート!」と彼女は息もつかずに叫んだ。「あなたが来てくれるなんて、ホントに嬉しいわ! お祭りみたいだと思わない? 庭師は今夜にも雪が降るって言っていたわ。家族が集まる昔ながらのクリスマスパーティーって本当に素敵だわ、そう思わない? まさに今の私たちみたいに……もう最高! ねえ、私の最高の親友を紹介させてちょうだいな。ウェルキン夫人、こちらキャンピオン氏ですわ」

 キャンピオンは大柄な中年女性に注意を向けた。垂れ下がった頬、愚かしげな瞳は彼を値踏みし、嘲笑っているように見えたが、ふいとそっぽを向いてしまった。

 昼食は、色々な意味で愉快なことにはならなかった。レディ・タレットの教養豊かなお喋りでさえ寸断された。しかしキャンピオン氏は、ここまでさんざん聞かされてきたよそ者たちを観察する十分な機会を得ることができた。

 マイク・ピーターズを見て彼は驚いた。生意気で神経質な若僧、何もかも父親の不祥事や不運のせいにする、自己憐憫の過剰摂取で中毒を起こしたような輩だと思っていたが、がっしりとして寡黙な若者で、きっぱりとした頬笑みと決然とした顎を持ち合わせていた。自分が何を欲しているか、それを手に入れるために何を着実にこなしていくべきかということを、彼が弁えているのは明らかだ。

 相まみえる前に手にした多くの批判に惑わされずに、ウェルキン一家が朗らかで誤解された人々なのだと考える準備は整っていた。彼は誠実に評価を下そうとした。しかし、ここにきて彼はまた間違った。ケネス・ウェルキンは清潔な顔とぎらぎらと怒りに燃える目をした青年で、敢えてノンシャランな風に見せようとした、しかしいかにも金の掛かった服装をしていた。彼はシェイラの隣に座り、食事中はずっとむっつりしていた。彼がキャンピオン氏に唯一注目を向けたのは、氏はどういう車に乗っているかという質問をした時だけだったが、その答えには大いに不満を鳴らしていた。

 間近で観察しても、ウェルキン夫人の第一印象を崩すことはできなかったが、その夫はなかなか興味深い存在だった。エドワード・ウェルキンは大柄な男で、その鋭すぎる目つきと粗暴に過ぎる口吻とで際立っていた。彼の招待主に対する態度は、妻の媚び阿るようなそれや、息子の狷介で不必要なまでに排他的なそれとは目に見えて違った。彼について明らかに言えることの一つが、彼が場に馴染もうという気がないこと、そしてそれを面白がっていることだった。彼はジョージをただの愚か者だと、そしてレディ・タレットを自分の妻に金を落とす財布だとしか考えていなかった。恐ろしく無神経な男だ。

 サヴィル・ロウの紳士服店で購ったらしいゴルフ用半ズボンは、彼が恥知らずにもジャラジャラと付けている宝飾品の効果を台無しにしていた。シグネットリングを二つ(一つは瑪瑙、もう一つはサファイヤ)。タイピンにはドでかい宝石が付いている。胴着のポケットからは金と縞瑪瑙で飾られたペンと鉛筆が覗き、それらを明るい緑の革ケースに入れている。人差指にはめられた指輪は、見たところ何らかの勲章を象っているように見える。

 全員が席を立つちょっと前に、ウェルキン夫人が咳払いをしてこう言った。

「今夜、小作人たちがここにやってきた時には、メイ、ダーリン、これを身につけているのは止めた方がいいかしらねえ」 彼女はクスクスと笑い、キャンピオン氏に一瞥をくれた。

「何を身につけるですって?」とレディ・タレットがぼんやりと台詞を口に上せたので、ウェルキン夫人は傷ついたようだ。

「ネックレスのことよ」と彼女は仰々しく応えた。

「ダイヤモンド! ええ、もちろん止めた方がいいわ。不適切だもの」 この言葉は彼女の立場を考えれば不本意なものだったに違いないが、即座に自分を取り戻したようだった。「もっとシンプルな物を付けるのがいいわよ」と彼女は機械的に微笑んだ。「パーティーになったら大忙しだもの。マイク、何をすべきかはちゃんと分かっているわね? パーティーが終わって彼らが帰る時になったら、衣装を身につけて舞台の裏手の小部屋で待機してください。頃合いを見て、ツリーの下に進み出て、プレゼントを下ろしてね。残りの私たちは、それを受け取って子どもたちに渡していく、という流れになりますから」

 ウェルキン夫人は頭をもたげた。「やっぱりあれを身につけておいた方がいいと思うのよ」と彼女は苛立たしげに言った。「あなたが言う通り、置きっ放しにしておくのは安全ではないかもしれないし……」

「お母様は安全じゃないなんて言ってないわ、ウェルキンさん」とシェイラは言った。村を愛する彼女は中傷には黙っていられないようだ。「不適切だ、と言っただけよ」

 ウェルキン夫人は真っ赤になり、我を忘れて怒った。

「随分と無礼な口を聞くのね、お嬢さん。適切かどうかが問題だというなら、ケニーがやるという約束だったサンタクロース役をピーターズさんが演じることこそ、不適切なのではないかしら?」

ウェルキン夫人の、ごたついた論理と憤激が混じり合った発言は皆をぎょっとさせた。マイクとシェイラは顔を深紅に染め、ジョージはおろおろ妻を見つめた。ケネス・ウェルキンは粗暴に母親に向き直った。そしてエドワード・ウェルキンは、場を収めるというよりは単に落ち着かせようとしたものか、「レディの言うとおりにしなさい」と雷鳴のような声を発した。「話は終わりだ、アーダ。お前がこの件についてごちゃごちゃ言っているのを、私はもう聞きたくない」

 ひどく間の悪い瞬間ではあったものの、場は一応平穏を取り戻した。ジョージはキャンピオンの腕をつかんだ。

「葉巻でもどうかな。書斎で」ともごもご伝えると、彼は素早く退場した。

 キャンピオンは彼に従った。


 大きな本を詰め込んだ書斎にもクリスマスの飾りつけは行われていた。暖炉の前に置かれたウィングチェアに身を落ちつけ、『ロミオとジュリエット』をつまみ読みしていたキャンピオン氏は、クリスマスの精神が今一度戻ってきたと感じていた。

 ジョージは自分の娘の幸せを心配していた。

「私はピーターズ君のことが好きだ」と彼は真面目な顔で言った。「彼は父親の失敗で挫けてはいない。メイは彼がお金を持っていないことから反対しているが……私と君の間柄だから言うけれどね、キャンピオン、彼女が結婚するなら、ロールスロイスを持っているゲス野郎よりも貧乏人の方がずっといいと思っているんだ」

 キャンピオン氏が頷くのを見て、彼は続けた。

「マイクはエンジニアなんだ。ゆっくりと足場を固めているところさ。シェイラは彼を愛している。しかし、メイは父親の不名誉を気にしている。そういうものは遺伝するというのだ。君はどう思う?」

キャンピオン氏は間をおかず、そんなものはありえない理論だと答えた。その時、ドアの外でパタパタという音、カサカサと言う音が聞こえた。そしてウェルキン氏が、元気な婦人と一緒に入ってきた。ジョージは立ち上がって手を差し出した。

「おお、ミス・ヘア。お会いできて嬉しいです。今年も慈善訪問でいらっしゃったのかな?」

 大柄で活発そうなミス・ヘアは大声で笑った。

「ええ、今年もお金をせびりにまいりましたよ。あなたの言うのがそういう意味ならね、サー・ジョージ」と朗らかに口にした彼女はキャンピオン氏と旧知の仲であるように頷いてから続けた。「毎年クリスマス・イヴには、老婦人たちのために寄付を頂いて回ることになっているんです。救貧院に四人いらっしゃいましてね。あの人たちのクリスマスのディナーをほんの少し豪華にしてあげたくて、皆さんに一シリングか二シリングかお願いしています。多くは要らないんです。ほんの一、二シリングで結構なんですのよ」

 彼女は手に握った小さな手帳に目をやった。

「サー・ジョージ、去年は十シリングくださいましたね」

大地主は彼女が求めるままに寄付を渡した。キャンピオン氏はそっとポケットを探った。

「半クラウンで十分なんです」とミス・ヘアは元気いっぱいに言った。「おやまあ、なんとありがたい。神様はご覧になっておられますよ」

 彼女は硬貨を受け取り、今度はウェルキンに向き直った。すると彼は一歩踏み出した。

 彼は「私はこういうことだって厳密にやりたいんだ。おい、ペンを貸してくれ」と言った。

 そして小切手帳を取り出した彼は、薦められもしないのにジョージのデスクに腰掛けた。

 ミス・ヘアは押し留めようとした。「おやまあ、止めてくださいな。お分かりにならないのですか。こういうのは余りでいいんです。私は六ペンス玉を集めているようなもので……」

「ペンはないのか?」とウェルキン氏は繰り返した。

 キャンピオンは、ウェルキン氏の胴着のポケットに収まった精巧な飾りに目を向けたが、しかし彼がそのことを口にする前に、ジョージは従順にも自分の万年筆を手渡した。

 ウェルキン氏は小切手を書きあげると、吸い取り紙も使わずにミス・ヘアに手渡した。

「十ポンドですって!?」と元気な婦人は震えた。「ああ、でも……」

「まったくナンセンスだな。さあ、帰るんだ」とウェルキン氏は彼女の肩を親しげに叩いた。「クリスマスだからな」とジョージとキャンピオンの方を見据えた。「クリスマスには良いことをしないといかん、もしその余裕があるならだが」

 ミス・ヘアは、助けを求めるようにあちこちに目をやった。

「と、とてもご親切に……ありがとうございます。でも、半クラウンで十分なんですよ……」

 そして彼女は逃げ去った。ウェルキンはジョージのペンを机に放り投げた。

「私はこういうやり方が好きなんだ」

 ジョージは咳払いをし、どこか遠くへ行ってしまいたいという目になり、「ああ、そう……そう、ですよ、ね」と言ってへたり込んだ。ウェルキンは部屋から出て行った。

 キャンピオン氏もジョージも、このことについてこれ以上口にしなかった。キャンピオンは顔をしかめた。いまや彼の意識には二つの些細な問題が立ち上がっている。一つ。チャーリー・スプリングの旧罪に関する細かい情報を思い出せないこと。二つ、ウェルキン氏の奇妙な振る舞い。この二つは、彼の頭を強烈に悩ませることになる。


 ファラオズ・コートの子どもパーティーは問題なく進行し、キャンピオン氏は、ここ二週間では最良の時を過ごしたと思った。午後七時半になり、ハイティーの残骸は綺麗に片づけられた。音楽室には、お腹いっぱいだがまだまだ元気な子どもたちとその母親が詰め込まれ、熱心に踊ったりゲームをしたりしていたが、彼らの眼はその晩の次なるクライマックス、すなわちピカピカ輝く飾りを施された十四フィートのツリーへと、逸れることなく向けられていた。

 キャンピオン氏は、時に踊り、時に給仕を受け持ち、さらには一つ二つ手品を披露したりしていたが、ふとスーツケースに入れっぱなしの紙巻きタバコを吸いたくなった。英雄のように奮闘するジョージを一人残していくことに申し訳なさを感じつつ、音楽室を抜け出すと大急ぎで自室に駆け戻った。屋敷の中はがらんとしていた。ウェルキン家の人たちでさえ音楽室で働いていたし、使用人はみなキッチンで片付けをしていた。

 キャンピオン氏はタバコを一本取り出すと、火を付け、少しの間ふかしながら自分が子どもの頃のクリスマスは今日と同じような感じだったな、とぼんやり考えた。いいことをすると気分がいいな、と思った。庭師の言っていた通り、雪はどしどし降り始め、窓の外でどさりと落ちる音がした。

 良心がもういい加減戻らなければと叫び出したので、電灯を消し、廊下を歩き始めた。すると、思わぬところでサンタクロースに出くわした。いかにも疲れた雰囲気の聖人は、肩に大きな袋を背負っていた。キャンピオン氏は、ハリッジの衣装の出来の良さに感心した。ブーツはつやつやとしているし、毛糸で縁取りされた上着は素晴らしく赤い。にこやかな表情の仮面に付けられた綿の付け髭はまるで本物のようだ。

 敬すべき老爺の邪魔にならないようにと一歩脇にどいた彼だったが、ふとおふざけをしたくなって元気な声で呼びかけた。

「袋には何が入ってるんだい、おじいさん」

 この何の気なしの一言は、とてつもない魔法であるかのように驚くべき効果を現した。サンタクロースは言葉にならない叫びをあげたかと思うと、袋を落っことし(キャンピオン氏の足元でガシャンという音を立てた)、影のように逃げ去った。

 数瞬、キャンピオン氏は驚きのあまり立ち尽くしてしまった。彼が己を取り戻した時には、真っ赤な姿は階段を駆け下りて姿を消していた。袋を拾い上げて中を探ってみると、何やら堅くて重いものが入っていたので改めたところ、それは桃色の大理石とブロンズと金メッキでできたあの時計だった。

 自分の見つけた物をまじまじと見つめた彼は、ふと満足のため息を漏らした。今日一日ずっと心配していた問題の一つは、どうやら解決したものらしい。


 彼が音楽室に戻るまでにさらにニ十分の時を要した。

 彼が部屋に入ったのを誰も見なかった。というのは、部屋にいた人々の注目は演台に集まっていたからだ。張り切るアシスタントたちとともに、サンタクロースがそこに立っていて、今しもツリーからプレゼントを下ろそうとしていた。

 キャンピオンは場の状況をじっくり観察した。衣装はどうやら同じものらしい。同じブーツ、同じ上着、同じ仮面だ。上階で逃がした相手の体格を思い出そうとしたが、ぶかぶかした上着の下は判然としなかった。

 人込みから離れたところに椅子を見つけた彼は、事の成り行きをそこで見守ることにした。

 最後の招待客が疲れた顔で、でも笑いながら退出した後、レディ・タレットは肘掛け椅子にどっかりと身を投げ出し、幸せそうに大きく息を吐きだした。その時、ファラオズ・コートの執事であるポウターが静かに室内に歩み入り、主人の耳に二三耳打ちをした。ジョージが驚いた声で「なんてこった!」と口にし、椅子に座ったままのキャンピオン氏に向かって歩き出した。しかし、彼は途中でウェルキン氏に遮られ、立ち上がったキャンピオン氏が合流する時には、大声が轟いていた。

「泥棒だと? ここで道化芝居をやっている間にか? おい、何がなくなった。何がなくなったんだ」

ポウターは、紳士の立ち居振る舞いという物に彼なりのどこか曖昧な基準を持っていたので、主人の客に対して、いささか冷淡な態度を取った。

「私どもの把握しているところでは、西棟二階の廊下にございました時計と銀の盆、ホールにございました銀の大杯の揃い、階段の踊り場にございました真鍮の仏像とメッキの香炉の五点が見当たりません」と彼は言った。

「まったく、なんということだろう」とジョージはまた言った。「なんて異常事態だ」

「異常事態なぞくそくらえだ!」とウェルキンは突然叫んだ。「貴重品を持って来ているんだぞ、おい、アーダ!」


「ネックレスが!」とウェルキン夫人は金切り声を上げた。彼女の愚かしげな目にも驚愕が噴出した。「私のネックレス!」

 彼女は部屋を飛び出し、代わってシェイラがサンタクロースと一緒に駆け付けた。彼は仮面を取り去り、フードを脱いでいたので、マイク・ピーターズの無表情でハンサムとは言いかねる顔立ちが露わになっていた。

 レディ・タレットは立ち上がることもできず、顔面蒼白で苛立たしげなケネス・ウェルキンは、彼女を見下ろしていた。

「ふざけるな!」とエドワード・ウェルキンは叫んだ。「もし私の妻のダイヤモンドが……」

 それ以上は続けられなかった。アーダ・ウェルキンがよろめきながら戻ってきた。震える手に空の保管箱を握りしめて。

「なくなってしまった」と彼女はヒステリーじみた声で言った。「なくなってしまった、私のダイヤモンドが……部屋中探したのに。盗まれてしまった。ネックレスはなくなってしまった」

 彼女が卒倒してしまう前に、彼女を助けて椅子に座らせるほど心に余裕があったのはマイクだけだった。夫はわめき散らし、憑かれたような眼で妻を睨み据え、息子に「こいつの面倒を見ておけ」と大声で命じた。そして状況を取り仕切り始めた。

「ことは重大だ、おい、間抜け。お前の名前なんぞ知らんが、家じゅうの召使を今すぐここに集めろ。私は盗まれたんだ」

 ポウターは、無言で主人に目線を送り、ジョージは軽く咳払いをした。

「ちょっと待ってください。ウェルキンさん」と彼は言った。「落ち着いて。最初にすべきことからやっていきましょう。ポウター、この家や敷地の中で今夜不審者が目撃されていないかを確かめてきてくれ。頼んだぞ」

 執事はすぐに歩み去り、ウェルキンは怒り狂った。

「あんたには自分がやっていることの意味が分かっているのかもしれないが」と彼は言った。「しかし私の方法が最善だ。あんたは盗人に逃げる時間を与えている。言わせてもらうがな、時間は貴重なんだ。警察をすぐに呼ぶべきだ」

「警察ですって?」とシェイラは呆気に取られていった。

 ウェルキンは彼女に向って大口を開いた。「もちろんだ、お嬢さん。私がいましも二千ポンドを失おうとしているのが分からないのか? 宝石はもちろん保険に入っとる。だがな、私が警察を呼ばなかったとして、誰が保険金を払うかね? 今すぐ電話を掛けに行ってくる」

「ちょっと待ってくださいよ。お願いですから」 ジョージの静かな声は少し震えていた。「ポウター、そこにいるな?」

 執事は何とも居心地悪そうな雰囲気であった。

「二人のメイドが、旦那様」と彼は言った。「下働きのハウスメイドと、シェイラお嬢様付きのメイドのルーシーがホールに控えております。二人は男が車通りを駆けていくのを見たとのことです。ええ、クリスマスツリーの催しが始まる前のことでございます」 彼は躊躇った。「二人が言うにはですね、ええ、男はサンタクロースの扮装をしていたとのことでございます。口を揃えて申しております」

 全員の眼がマイクに向いた。シェイラの頬は燃え上がった。

「なんですって?」と彼女は反論しようとした。

 ウェルキン氏は突然笑い出した。「事の顛末が分かったな」と彼は言った。「若き悪漢は賢く立ち回ったが、しかし目撃されていたという訳だ。お前さんは自分が思っているほどには賢くはなかったと、そういうことだぞ、ガキめ」

 マイクは素早く動いた。彼の顔面は蒼白で、目はギラギラと危険な輝きを放っていた。ジョージは彼の腕に手をかけた。

「待つんだ」と彼は命じた。「ポウター、もう行くんだ、さあ」 彼は使用人がドアから出ていくまで話を進めなかった。「ウェルキンさん、きちんと説明をしてもらおう」

 ウェルキン氏は、じっと我慢していた。どこか面白がっているようにも見えた。

「なあに、ごく単純な話さ。この若造はこの仮装をして一晩中歩き回っていたんだ。子どもたちを驚かせるために、音楽室に入ることをレディに禁じられていたからな。だが、それ以外なら屋敷のどこでも一人で行くことができる。そうして気に入ったものを片っ端から盗んだんだ。私のダイヤモンドもそのうちの一つだ。こいつがそんなことをしていると気が付く者はいるか? いやいない。なぜなら、サンタクロースはいつでも袋を持ってるものだからな。それでこいつは車通りを走り抜け、車で待っている相棒に盗品を渡して、何食わぬ顔でパーティーに戻ってきた」

 マイクは何か言おうとしたが、シェイラがそれを遮った。

「マイクがそんなことをしたって証拠がどこにあるの、ウェルキンさん」と彼女は反論した。彼女の声は怒りに震えている。

 エドワード・ウェルキンの重々しい口が、にたりと酷薄な笑みを浮かべた。

「悪人の血筋だろう?」と彼は言った。

 マイクは飛び上がったが、しかしジョージは彼を引き留めた。「落ち着け、なあ君、落ち着くんだ」 彼は息もつかずに言った。「老人を殴るもんじゃない。同年配なんだぞ、君の……」

 マイクはジョージが意図せず持ちだした比喩にたじろいだ。

 キャンピオン氏は自分が口を出す頃合いだ、と歩み出た。

「なあ、ジョージ」と彼は言った。「もし君とウェルキンさんと僕とで一緒に書斎に行ってくれるなら、ぜひさせてもらいたい提案があるんだけどね」

 ウェルキンは動揺した。「ケン、そいつをしっかりと見張っておけ」と肩越しに息子に声をかけた。「お前の話を聞いてやろう、キャンピオン、だが私はダイヤモンドを取り戻したいし、すぐに警察を呼びたいんでな。五分間だけくれてやる。それ以上はないと思えよ」


 三人が到着した時、書斎の電灯は消えていた。キャンピオンは全員が椅子に落ち着くのを待って、灯りをつけた。気まずい沈黙の瞬間だった。部屋の片隅はまるで古代スコットランドの市場のようだった。そこには期せずしてキャンピオン氏の持ち物となった大きな袋の中身が店開きされている。それを見たジョージの天使のような顔が暗く翳った。

「それは何だね、質の悪いジョークか何かなのか?」

 キャンピオン氏は首を横に振った。「そうじゃない。僕はこれらの品物を、上階の廊下で出会った妙な格好をした紳士から受け取ったんだ。で、何か言うことはあるかな、ウェルキンさん」

 ウェルキン氏は頑固に食い下がった。「私のダイヤモンドはどこにある。私に興味があるのはそれだけだ。こんなガラクタに興味はない!」

 キャンピオンは微笑んた。そして「彼の言う通りだ、ジョージ」と言った。「ガラクタというのが肝心な言葉なんだ。見た時すぐに分かった。哀れなチャーリー・スプリング――そう、僕は彼を知っているんだよ、ウェルキンさん――彼はいつだってけばけばしいガラクタを盗まずにはいられない。成功の味を知らない男なんだ」

 エドワード・ウェルキンは机に寄り掛かって立ち尽くした。

「お前の言っている意味が分からんな。私のダイヤモンドが盗まれて、警察に電話しなくてはならない、という状況に変わりはない」

 キャンピオン氏は眼鏡を外した。「もし僕があなただったら、そうはしないだろうね。そう、あなたは……」

 最後の言葉を放つや否や、キャンピオン氏はウェルキン氏に飛び掛かり、ちょっとした揉み合いになった。諍いが終わった時、ウェルキン氏は床に倒れ、その傍らには大理石とメッキの時計が落ちていた。キャンピオン氏は、一瞬前には相手の上着のポケットに入っていた、黄金のペンと鉛筆を挿してある革のケースを掴みだしていた。

 ウェルキンは足をばたつかせた。彼の顔の色はどす黒い紫に変わり、彼の眼は少し怯えているように見えた。彼は怒鳴りちらそうとした。

「殺人罪で法廷に行くことになるぞ。おい、私の財産を返せ」

「それでは、「すべて」お返ししましょう」とキャンピオン氏は恭しく答えた。「偽のペン、偽の鉛筆、その下の隠し場所に入っているのは……はい、あなたの奥様のダイヤモンドだ」

 最後の一言をもってこの事件は解決し、彼の手から輝く手がかりの糸は放り出された。

 長い、長い沈黙だった。

 ウェルキンは気難し気な顔で、部屋の真ん中に仁王立ちした。

「一体何だ? お前らは二人して、何を企んでいるんだ?」

 キャンピオン氏はジョージに目をやった。彼は机の傍の椅子に腰かけ、びっくり仰天した顔をしながらも、容易には疑いを崩さぬ眼差しを湛えていた。

「私に言えるのは」と、ジョージは訥々と話し始めた。「ウェルキンさんには家族とお帰り頂いて、クリスマスはここではないどこか別の場所で祝ってもらうのがいいだろう、ということだ。そうは思わないか。お互い、トラブルを避けるためにもね」

 ウェルキンは手を握りしめた。

「いいだろう、ダイヤモンドは持って帰る」

 キャンピオン氏は首を振った。「あなたがこの屋敷を去る時に……」と微かな笑みを浮かべて言葉を紡ぐ。「そのネックレスがまたなくなっていなければいいんですけどね」

 ウェルキンは肩を震わせて、「ああ、くそ、お前の勝ちだ」と言葉少なに言った。「私はもう行くぞ、アーダに荷造りをするように言っておくからな」

 彼は部屋から出ていった。ドアが閉まるとすぐ、ジョージはぴょんと椅子から立ち上がった。

「絞首刑になるところだったんだぞ……」と彼は話し始めた。「なあ、奴はマイクが盗みをしたなんていう根も葉もない話で最後まで押し通す気だったんだろうか」

 キャンピオン氏は深刻な表情を崩さなかった。「いや、あれは良くできた後付けだろう。君の言う「根も葉もない話」で犠牲になるはずだったのは、我らが不愉快なる友人だったはずだ。元のアイディアは、「クリスマス・イヴに泥棒がこの屋敷に忍び込んで盗みを働く」というだけのことだった。これを思いついたのは、妻がメイと一緒にサンタクロースの衣装をハリッジに注文したというのを聞いた瞬間だったんだろう。彼がなすべきことは、もう一着それを手に入れることだった。それから、この完璧な扮装を、本物の泥棒に渡せばそれでいい。その男はこの屋敷に忍び込んで、ちょっとしたものを適当に持ち出して、逃げてしまうという手筈だった。泥棒がイプスウィッチで車を借りたこと、ここまで運転してきたこと、道のどこかで乗り換えたことは、すぐに突き止められるはずだ」


 ジョージはまだ不思議そうな顔をしていて、「だが、彼の息子のケネスがサンタクロースを演じるはずだったぞ」と言った。「少なくとも、彼はそれを望んでいるようだった」

 キャンピオンは頷いた。「その通り。ウェルキンは、今回の問題を片づけること、そもそも準備することが容易ではないのを予見していた。もし、ケネスがサンタクロースを演じることになったとして、同じことが起こったなら、あの若者に確実なアリバイがあっただろうことは想像できる。思い出してくれ。泥棒は見つかるはずではなかったんだ。彼は万一の場合に備えて変装していた。実際に話が進んできて、マイクと泥棒の体格が似ていなくもないことをウェルキン氏が知ったときに、計画は一石二鳥のそれに変更された……試しても悪くないと思ったんだろう」

 ジョージはダイヤモンドに話題を切り替えた。話の全体を理解するまでにはまだ時間がかかりそうだ。

「どうして自分の資産を盗むんだ」と彼は述懐した。

 キャンピオン氏はため息を吐いた。「君は本当に黄金の心の持ち主なんだな、ジョージ。君の友人の性格の悪さは、きっと君を驚かせることだろうが……我が友ウェルキンが、このネックレスに保険を掛けているというのは聞いたな?」

 ジョージの眉毛がピクリと上がった。どうやら真実に思い当たったようだ。 「ああ、なんということだ。あの野郎、私の家でそんな……君は奇跡のような人だな、キャンピオン、本当にとんでもないことだ。保険金は受け取り、ダイヤモンドは手元に残す。唾棄すべきトリックだ」

 彼は、メイ・タレットと、マイクとシェイラが揃って入って来た時にもまだ怒りを露わにしていた。

「ウェルキン家の人たちは帰ったわ。車に乗ってね。一体全体何が起こったっていうの、ジョージ」

 彼女のレディとしての態度は、一度は脅かされたものの目に見えて回復してきていた。

 キャンピオン氏は説明した。「一日中気に掛けていたんだ」と、お話の主たる部分を語り終えた後に彼は言った。「チャーリー・スプリングが妙な奴だということは知っていた。でもあの時計を袋から取り出す瞬間まで肝心なことが分かっていなかった。あの時、僕は彼のバロック好みを、そして物の価値をまったく把握していないという悲しい習性を思い出した。となると、彼がダイヤモンドを盗んだというのには違和感を覚える。チャーリーにとっては物足りない物だろうからね。一つ思い出すと、他の悪癖も次々に思い出すことができた。彼は絶対に一人では仕事をしない。スプリング氏が仕事をするときには、必ず家の中に協力者がいる。大抵の場合は使用人だがね。これらの事実が手の中にあれば、あとは簡単だった」

 マイクはすぐにお礼を言った。「俺のことを助けてくれてありがとうございます」

 ジョージは目を上げて「そうじゃないぞ、坊や」といった。「我々は完全な道化にならずに済んだという訳だよ」

 レディ・タレットは顔を赤くした。「もちろんそうよ、マイク、素敵な人」と言った時の彼女の笑顔はとても魅力的だった。「どうかシェイラを幸せにしてあげて。こんなこと言うのはウェルキン家の人たちに別れを告げる前だってよかったのに。私は本当の馬鹿者だわ」

 出ていく前に、シェイラはその手をキャンピオンの手の中に滑り込ませた。

「あなたが来てくれて本当に良かったわ」

 ウェルキン家の人たちを詰め込んだ二台の車とともに、ダイヤモンドもその他諸々もみな雪降る道路へと消えた。ジョージはキャンピオン氏の腕をつかみ、書斎へと連れ戻した。

「考えていたんだが、君はミス・ヘアが今日の午後にここに来た時から、あのペンが偽物だって分かっていたのか?」

 キャンピオン氏はにやりと笑った。「ああ、自分でペンを持っているのに使わないなんて妙だと思ったよ」と言いながら、彼は暖炉の前の椅子に座った。「彼がペンのことをうっかり忘れた時、私は臭いと思った。あの手の隠し場所は、特に合衆国ではよく見られるんだ。貴重品を持ち歩くのに使われるケースだ。ベークライトとかで作られているみっともない代物だから、誰も盗もうとは思わない。だが、ウェルキン氏はみっともない物なんて持っていなかった――彼の行動はお粗末なものだったが」

 ジョージも椅子に背をもたせかけ、感触を楽しんだ。

「気難しい奴だった」と彼は言った。「最初から気に食わなかったんだ。ろくに話もできやしない。射撃に誘っても興味を持たない。狩りに行こうと言っても大口をあけてぽかんとするばかり。釣りの話にはあくびで返事。おまけに彼の言ってることはさっぱり分からない。まったく会話にならない奴だった」

 彼はにこりと笑い、少し恥ずかしそうな目つきをした。

「キャンピオン」と彼は柔らかな声で言った。

「なんだい?」

「先週、素晴らしい発見をしたんだ」 ジョージは声を低め、秘密を打ち明けるようにぼそぼそと話し始めた。「ワインセラーでコバーンの六八年を一本見つけたんだ。六八年だぞ、おい。親父が飲み忘れたのに違いない。明日開けようと思っていたんだ。でも、ウェルキンの奴を見ていたら、とても飲む気になれなくなっていた。奴がいるだけで最悪だった。だが、奴は去った……」 ジョージの声は段々聞きとりにくくなっていった。

「まったく、メリー・クリスマスとはよく言ったもんだな」とキャンピオンは一言付け足した。


Fin.


"The Case of the Man with the Sack", 1936

[解題]「クリスマスの迷惑なお客」について


近年、日本でもマージェリー・アリンガムの評価が高まってきているのはありがたいことです。昨年から本年にかけて、創元推理文庫から『窓辺の老人』、『幻の屋敷』、』『クリスマスの朝に』の短編集三冊が刊行され、来年には、論創海外ミステリよりついに(本当に十年来刊行予告に出たり消えたりした)『葬儀屋の次の仕事(仮)』が刊行予定と、十年ほど前の盛り上がり再び、という感じがいたします。

今回紹介した短編は、マージェリー・アリンガムの第一短編集 Mr. Campion: Criminologist (1937) 収録作品のうち、唯一未訳のまま残っていた作品です。本作は、ストランド・マガジンの一九三六年一二月号に掲載されたアリンガムの数多いクリスマスストーリーの一つです。「世界中の人たちの伯父さん」であるキャンピオンが、お人よしの貴族の一家を悪辣で下品な成金の手から救うという爽快で分かりやすいストーリーが嬉しい冒険譚を、ぜひお楽しみください。


三門優祐 拝

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