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亡国の始まり

作者: 気まぐれ
掲載日:2017/08/15

駄文で結構。コケコッコー

聖鐘騎士団(せいしょうきしだん)。

それはこの六鐘(りくしょう)王国を守る6の騎士団のうちの一つであり、

清く、気高く、そして勇ましいことを誉れとする、聖鐘院の守護者である。


聖鐘院は王国の中央、王宮と隣り合うように建てられた白亜の寺院であり、

国教ラウェの総本山でもある。

権欲と陰謀に満ちた上層部はともかくとして、国にあまねくは

心正しきラウェの信者たちは、聖鐘騎士団の庇護の下、200年にわたる安寧を得ていた。


しかし、そんな王国の繁栄にも翳がさす。

それまで無敗を誇っていた天槍騎士団が、他国との戦に破れたのだ。

天槍騎士団は王国の6の騎士団の最強と謳われ、実際200年負けることはなかった。

しかし、突如この数年で頭角を表した隣国ストゥーニアに壊滅させられてしまった。

残る5の騎士団のうち、王国守護を司る聖鐘騎士団をのぞいて全ての騎士団が

ことごとく滅ぼされてしまった。


ついに王は守護者たる聖鐘騎士団から精鋭を集め、、ストゥーニアの王アバロンを

暗殺するように命じた。

物語はここから始まる。


「ジェイ、この作戦、お前はどう思う?」

「どうもこうもない、我々は国王陛下の命に従うまでだ」

「うんで? 敢えなく討ち死にするってか?」

「じゃあ、どうする。すでに王国は四方をストゥーニアに囲まれてしまったんだ。今更逃げようにも逃げられまい」

「そうだけどよ」


ナックはため息を漏らした。

アバロン暗殺に派遣されたのは総勢5名。

その任務の特性から、隠密のため、人数はごく少数に限られている。

この5名で作戦を成功させなければならない。


「アバロンは不死の化け物だっつぅ話じゃねぇか。どうやって殺せってんだ?」


ナックは肩をすくめながら仲間たちをみる。

堅物のジェイは仏頂面で押し黙っている。

剣技の天才ハシュローと王国一の弓使いペンスも肩をすくめている。

ただ一人、紅一点のリリーだけがあわわとおどおどしながら何か必死に考えているようだった。


「ま、普通に考えりゃリリーを使えって話なんだろうがな? でもどうよ、そんなベタな作戦がうまくいくと思うか?」


天才的な武術を身につけた他の4人に対して、

特筆する能力もない平凡な女騎士であるリリーがこの暗殺部隊に選ばれたのだから

きっとそういうことなのだろう。


しかし、実際の行動は状況に応じて、リーダーであるナックが立てることになっている。

ナックの見立てでは、リリーに色仕掛けは無理だろう。

女とあっても男勝りなものの多い騎士団にあって、

珍しく華奢で可憐なリリーは確かに男にとって魅力的だ。

それでいて、並みの剣士と同等程度の能力は持ち合わせているのだから、

そこをうまく利用すれば、と考えての選抜なのだろうが。


「お前、今俺たちに色仕掛けしてみ?」

「あ、あうう」


小心者で恥ずかしがり屋の彼女は、いつもこんな感じである。

もちろん、エロティックな女性よりも、アバロンがこういった慎ましい女性の方が好みだという可能性はある。

しかし、こんな調子ではチャンスが巡ってきた時に任務を遂行できるかどうかの方が疑問である。


「できそうか?」

「無理ですぅ〜」


ナックは隠すこともなく大仰にため息をつく。

これではただの足手まといだ。

無論足を引っ張られようと、引っ張られまいと作戦が成功するとも思えないが。


「やはり、夜、城に忍び込んで寝首をかくほかあるまい」


黙って様子を見ていたジェイがぶっきらぼうに言った。

彼はかれこれ10回ほど同じ進言をしており、いい加減にうんざりしていた。


「オメェらはどう思う?」


これまでの10回と同じようにナックはハシュローとペンスに問いかける。


「俺は反対」

「オレも」

「じゃあ、他に何があるってんだ?」


ナックはイライラしながら二人に重ねて聞く。


「だからさ、リリーちゃん使ったげようよさ」

「そうそ」

「だぁから、こいつには無理だってんだろ?」

「本当に?」

「んああ?」


ナックは血管を浮き立たせながらペンスを睨んだ。


「本当に無理なのかい? リリー。僕らがこの作戦に失敗したらどうなるのかわかってんの?」

「おいっ」

「夜に寝首をかきにいくなんてのは、そもそもアバロンがどこで眠ってるのかとか、警備がどうなってるのかとか知ってないと絶対に無理だ。どちらにしろ誰かが先行して潜入して情報を得ておく必要がある。そうだろ?」


ナックはおし黙る。

限りなく正論に近かったからだ。

そして、その役目に誰が一番向いているかも明らかだった。


「リリーは兵装をしてなけりゃ、町娘と対して見た目が変わらない。俺たちみたいな筋肉ダルマが潜入するより疑われずに済むはずだ」

「はあ。ま、そうだわな」


ナックは改めてリリーを見る。


「で、どうだ。やるか? それとも聖鐘院に逃げ帰るか?」

「あ、あの」

「今すぐ、答えろ」


ナックが睨め付けると、リリーはこくりと首を縦に振った。


「じゃ、作戦たてるぞ」



★



ストゥーニア城。

今や大陸の覇者となったストゥーニアの王が住まう城。

その一室で、アバロンは赤ワインの香りを楽しみつつ、今日の贄が訪れるのを待っていた。

コンコン。

扉が慎ましく叩かれ、口上が述べられる。


「陛下、本日のお戯れの玩具を連れてまいりました」

「入れ」

「は!!」


正装をした兵に連れられて、一人の女が部屋に足を踏み入れた。

美しい真紅のドレスに、同じ色のティアラ。

ルビーでできたヒールに足をふらつかせながら、ゆっくりとアバロンに近づいてくる。


「ほう? 面白い。人間の女ではないか」


くつくつと笑うアバロンの口の橋からは獣のような鋭い犬歯がはみ出している。

そう、アバロンは人間ではない、別種の生き物だった。

アバロンと同じく、人間ではない、しかしながらアバロンと違い頭にツノを生やした兵士は

王にお辞儀をすると、女を残して部屋を後にした。


「それで、その方。名をなんと言う」

「あ、ああ、あの」

「答えよ」

「メ、メルヘリエナ・エルリーシャ・パラダートでございます。陛下」

「陛下? 私のことをそのように呼ぶのか? 人間」

「ももも、もちろんでございます。何か、お気に障りましたでしょうか」


アバロンはワインを一口、ゆっくりと堪能すると所在なさそうに立っている娘に空いている椅子を薦める。

恐縮した様子の女は、何度かためらったり、断ろうとしたが、アバロンが命令だと言うと応じた。


「それで? この城に何をしきたのかな? 人間の娘よ」

「え、と。あの。そ、その」


メルヘリエナは聞かれ、少し顔を赤らめてベッドの方をちらりと見た。

アバロンの夜の相手をする。そのために連れてこられたはずだった。


「なるほど、この私の寵愛を望むか。それもよかろう。して、寵愛を得てその次に何をする?」

「え? ええと、あ、ああの」


メルヘリエナはどう答えれば良いか分からず、答えを求めるように窓を見た。

そしてアバロンはまたくつくつと笑う。


「ふふふ。面白い娘だ。よかろう。我が寵愛を授けてやろう」

「あえ? あ、ありがとうございます」


アバロンはワインをテーブルに置くと、ゆっくりと立ち上がり窓の方へと寄った。


「今宵は満月だ。この美しい輝きをお前も見て置くといい。こららへ来なさい」

「は、はい」


メルヘリエナは慣れない靴を気にしながら、窓へと歩いた。

そして、窓の外にある塀をちらりと見た。

そこには何人の影もなく、静かにきらめく月の明かりだけが、周囲を照らしていた。


「どうだ。美しいであろう」


促されて、は満月をみる。

それは今までみたどの月よりも大きく、強く輝いていた。


「この城より見ゆる月は近く、大きい。何度見ても飽きぬよ」

「す、すごいです」


メルヘリエナは感心して大きな月をじっと見つめていた。

その体にアバロンの腕が回される。


「ひっ?」

「ふ。初な娘だ。こちらへ来なさい」


アバロンは腕を彼女の腰に回したまま、ゆっくりと天蓋のついたベッドへと誘導する。

歩みを進めるに連れて、どんどん顔を赤くしていく娘を楽しそうに見ながら。


とうとうベッドにたどり着いて、メルヘリエナは思わず顔を両手で覆った。

これから自分が晒すであろう痴態を想像して、いても立ってもいられなかった。


「さあ、まずは腰掛けなさい」


言われて、メルヘリエナはゆっくりと腰を下ろす。

もはや腰が砕けて、再び立ち上がることはできないだろう。

メルヘリエナは、ゆっくりと丁寧に靴を脱がされながら、

踊り出そうな心臓を胸に押さえつけて置くのに必死だった。


「さて、では」


アバロンは靴を脱がしたメルヘリエナの足の下に腕を通し、もう一方の手で彼女の腰を支えて

いとも簡単に持ち上げた。


「それではまず、唇をいただくとしよう」


メルヘリエナはアバロンに抱きかかえられたまま、口を重ね合わせた。

アバロンの息がメルヘリエナをくすぐって、彼女の顔をかすかに震わせる。

すでにタコのように真っ赤になった彼女の顔は、今や湯気が出そうなほどに上気していた。


「さて、君は何になるのかな」

「ふえ?」


謎めいたささやきに、メルヘリエナはゆっくりと首を傾げる。

その姿は色めいていて、アバロンは自身が滾ってくるのを感じた。


「さて、お待ちかねだ」


アバロンはメルヘリエナをベッドに寝かせると、スルスルと自身の衣を脱ぎ始めた。

メルヘリエナは指を全開にした両手で顔を覆って、その光景と向き合っていた。


「ふむ? 脱がないのか? いや、脱がせてほいのか……。良い。待っていなさい」


アバロンは脱いだ衣装を無造作に放ると、メルヘリエナの待つベッドに体を乗せた。

メルヘリエナが4人は眠れるだろう、大きなベッドがわずかにきしむ。


膝を立てて、仰向けに寝転がっていたメルヘリエナを跨ぐように、アバロンは彼女の上に馬乗りになった。

アバロンの青白く、しかし鍛え上げられた体が目の前に現れて、メルヘリエナは口をパクパクさせる。


ああ、おっかさん。おとう。私、女になります。

メルヒリエナは心の中で随分と田舎臭い口調でそうつぶやいて、アバロンを受け入れた。

これは必要なことなのだ。

任務のために。王国のために。


もし人気が出れば、連載にしようかと。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「ホロフェルネスの首を斬るユーディット」の絵を思い出しました。 メルヒリエナがユーディットのようにアバロン暗殺に成功するか、それとも作戦がバレてピンチに陥ってしまうのか、ものすごく気になりま…
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