プロローグ
「勇者一行よ、よく此処までたどり着いたものだ。まずはその功績に賛辞を贈ろう。」
「ジェナザード御託はいい、始めようじゃないか。」
「ははは、勇者様は大変せっかちなのであるな。だが、その意気や良しッッ。」
そういうとジェナザードは剣を構えた。
気圧されそうだ、足がすくむ。ただ剣を構えただけなのに逃げ出したくなる程の圧力、これが四天王の実力か。
向き合って初めて認識する相手の実力。悔しいが僕一人では勝てる相手ではなさそうだ。
「おいおい良いのかよアル、敵さんが御託を並べてるうちに切っちまった方が良かったんじゃないのか。」
「カルドラ、そんな隙がジェナザードに有るように見えるのか。たわけが。」
「おうおう、ユミリアは今日もおっかないね。だが、ちげぇねぇ、どこに打ち込んだらいいかまったくわかんねぇな。」
いつも飄々としてるカルドラの額に汗が滲む。それだけの相手という事だ。今まで相手にしてきた者達とは格が違う。
「うへぇ、ここは平和的に話し合いで解決する訳にはいかないんですかぁ?、平和が一番ですよぉ。」
「ナータリア、その平和の為にあいつを倒さなきゃならないんだ。」
「アル、分かってますよぉ、私はただ、希望的観測を述べたまでですぅ。」
「何だ、嬢ちゃんの頭の中はいつもお花畑って訳じゃねぇのか。」
「うへぇ、カルドラさんはいつも意地悪ですぅ。あと、嬢ちゃんじゃなくてナータリアですぅ。」
「ふむ。そろそろ始めてもいいかね。御託はいいと言っておきながら随分と待たせてくれる。」
そう言い放つとジェナザードの纏う空気が変わる。しかし、それより早くジェナザードの側面から無数の火球が襲い掛かった。
「いつから私達が呑気におしゃべりをしていると思った!!とっくに戦いは始まっているぞっ、ジェナザード。」
ユミリアの火炎魔法だ。火球は全て命中し、ジェナザードは爆風に包みこまれた。
吹き荒れる爆風の中、奴の姿は見えないが、いくらジェナザードといえどあれだけの上位魔法をくらえば、無傷では無いはずだ。
「これはたまげた。人間の中にもこれ程に魔道を極めし物が居るとは、無詠唱でここまでとは天晴れ。」
次第に鮮明になっていく視界の中、どっしりと立つジェナザードの姿が現れた。
「「なっ、私の魔法を受けて無傷だとっ!!」」
「無傷な訳ではあるまいよ、魔法使い殿。ほれ、大事な鎧がボロボロだ、恐れ入った。長く貴様ら人間と戦をしているが、攻撃をまともに頂いたのは、これが初めてじゃ。」
確かに鎧はボロボロだ。しかし、本体の方は?
「まぁ、ワシ自信は少し熱かった位じゃがの、しかし、魔法の気配に気づくのが遅れるとは、歳は取りたくないもんじゃな。」
ボロボロになった鎧を脱ぎ捨てながらジェナザードは関心している。
「この鎧も魔王様から賜った、なかなかの代物なのじゃがな。何せ素材はオリハルコンじゃ。しかし、ワシは生まれつき丈夫でな、本来なら動きを制限される鎧なんぞ要らなんだが、兵達の手前、威厳が大事じゃろ?大将が裸同然で戦うにはいくまいて。それを危惧して魔王様がワシに下さったのじゃ、じゃから大層なこの鎧を身に着けてはいたが、これで動きやすくなったわい。」
魔族の寿命は種族にもよるが、およそ人類の十倍、巨人族で有るジェナザードはその中でも長寿であると言えど、齢1500才を超える為、老人に位置するはず。
しかし、鎧を脱ぎ捨てた彼の肉体は筋肉が盛り上がり、まるで衰えを感じさせない。
「いやはや、巨人族ってのは恐れ入ったモンだなアル?今回はちぃとばかしマズいじゃないか?」
「確かにねカルドラ、でもこの場に居るのは僕達だけさ、そして、この世界を救えるのも僕達だけだっ。」
「ちげぇねぇ。おい、ユミリア、ナータリア、アルの合図で一斉に掛かるぞ。」
皆、ジェナザードから視線は外さず、首をだけを縦に振る。
「行くぞっっ!!」
僕たちの決死の闘いが始まった____。