第8話 マッハ20。②
「西の森にオークキングが出たらしいわ。どうしましょうおとうさん。」
「村の衛兵に、街の討伐隊を寄越してくれと言ったんだが、どうやら先方が渋っておるようでな。」
「でも冒険者組合に払うようなお金もないですし、彼らを待つ以外に方法はないですよね。」
2人はそこで話を終えるとハァと深いため息を付いて肩を落とした。
すると主人が俺の視線に気付いたのか、申し訳無さそうに頭をかきながら近づいて来た。
「いやはや、見苦しい所をお見せしました。旅のお方と見受けられますが、早くこの村から立ち去られた方が宜しいでしょう。オークキングが出たという事は、もしかしたらこの村を襲うかも知れませんので。」
かなり疲れた様子でご主人は言う。
「オークキングが出てんのに何で逃げようとしはらないんですか?」
アンナがご主人に尋ねる。それはそうだ、普通オークキングが出たら討伐隊が来るまで他の地域に避難するのが一般的だ。
しかしご主人は首を振る。次の言葉を繋いだのはエリンさんだ。
「そうしたいのは山々ですが、ここから安全な村や場所に避難するには、害獣がうろつく林道や、険しい山を越えなければならないのです。またこの村には馬がいないので歩かなければなりません。私達は大丈夫ですが、小さい子供やお年寄り達は無理でしょう。それらを見捨てて行くのは私には出来ません。」
そこには諦めた表情をした父娘がいた。
「僕が討伐しますよ。エリンさん。」
エリンさんの手を握りながら言う俺。
でっ、出た〜〜、通りすがりの旅人なのに村を救う為に戦ヤツ〜〜〜〜。
はい、それ俺です。/
きっと今最高にカッコ良いわ〜俺。間違いなく瞬間最大俺速出てる。今なら月を半壊に出来そう。
「はぁ⁉︎アンタ何言ってんの⁉︎アタシらのランクはアイアンやで。ムリに決まってるやろ!」
「そうですお客様、無理な事は言いません、おやめ下さい。」
アンナとご主人が声を揃えて反対してくる。
まぁ、そうだろうな。今までの俺だったら戦わねえよ。
でもな、俺は今エリンさんに恋してるんだ。ラブなファイアに燃えている俺の戦闘力は普段の13倍は固いぜ!!!
俺の真剣な目を見たエリンさんは震えながら尋ねてきた。
「出来るの、ですか?」
「コッ、コラ!エリン何を言うんだ。」
エリンさんの言葉に焦るご主人。
ふっ、神よ、良いアシストしてくれるじゃねえか。これが触るだけってやつか。良いぜ良いぜ、だが俺は触るだけなんてそんなセコイことはしねぇ。
思いっきり振り抜かせて貰うぜ!!
その声を聞いた俺は握った手にキスを落としこう言った。
「我が命に代えても。」