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第6話 飛ぶ豚は素晴らしい豚。


カサカサッ。さらに物陰から音がする。


音からするとそれ程大きくはないだろう。だが油断は出来ない、魔物は小さくても強い種族がいたりするからだ。


より一層集中して物陰を見る。


カサッ。

まだだ。


カサカサッ。

あと少し。


カサカサカサッ。

来る!!!



「おわっ!!!」


「ポテッ?」



首を傾げながら出てきたのは羽豚。ハネトンとも呼ばれる希少種だ。その生態は良く解明されていないのだが、基本的にピンクの肌に白い翼を持つのが特徴だ。ごく少数鼻から炎を出して攻撃するものも居るらしいが、基本は飛び回って逃げるタイプの魔物と言われている。


その可愛らしいルックスと大人しい性格から貴族達のペットとして人気がある。



魔物と言うものには大きく分けて3種類ある。一般的なイメージの人間を害するゴブリンやオークなどの種類を害獣と呼び、ドラゴンやグリフォンなどの上級種を魔獣や幻獣、そしてハネトンなどはそのまま魔物と呼ばれる。総称が魔物なのでやや分かり辛いが、偉い人が決めたことなので誰も気にしない。


そしてこのハネトンと言う魔物は魔物販売者からしたらホクホクもんの上物なのだ。


俺も冒険者の端くれだ。こいつを捕まえて業者に売れば、王都の平均月収3ヶ月分の収入が見込める。これは捕まえて売るしかない。売るしかないのだが……。


「出来ねぇ、俺にはそんな事出来ねぇよ。」


どうしてこんなに可愛い魔物を捕まえて、己の欲の為に売る事が出来ようか、いや出来まい。


つぶらな瞳、丸くてキュートな鼻、純白でふわふわな翼、先が黒い長めの尻尾、全体の絶妙なポテ感(ポッテリとした感じ)。全てが愛おしいとそう思ってしまう。


無理だ。この戦いは俺の負けだ。間近で野生のハネトンを見つけたと言うことだけでも良しとしよう。うん、そうだ。それが一番良い。


そう思った矢先。



「ポテェ~~~!」


ハネトンが俺の方に飛んできた。


あぁ、俺は幸せだ。

うんうん、ありがとうハネトン。もうこんな所まで来るんじゃないぞ。人を見たらすぐ逃げるんだぞ。


「ん?何だこれ?」

よく見るとハネトンが木の棒を咥えている。そして身振り手振りで何かを訴えかけている。


もしかして……



「お前俺と遊びたいのか?」


そう聞くとハネトンは大きく首を振ってうなづいた。


驚いた。魔物の中には人間の言葉を理解する種類が居るとは聞いていたけど、こうして対面すると感動するな。よ~し、いっちょハネトンと遊ぶとするか!!




~~~~~~~~~~~~~~~~


「ははっ、よしよ~し!」

ひとしきり遊んであげるとハネトンも満足した様で、座っている俺の頭上をクルクルと器用に回っている。


「ははっ、本当に可愛い奴だなぁポテ男は。」


あ、ポテ男と言うのは俺がさっき付けた名前だ。その名前で呼ぶと嬉しそうに飛び回っていた。喜んでくれて嬉しいぞ。まさか俺のネーミングセンスがここに来て光るとはな、罪なもんだぜ。


「しっかしどうするか、このままじゃアンナに怒られるとかよりも会えなくなる可能性の方が高いぞ。」


ふと我に返って悩んでいた所、何やらポテ男が俺の服を前足で引っ張っている。


「ん?どうしたんだポテ男。」


するとポテ男は少し離れてボディランゲージを始めた。地味に二足歩行になっている。当たり前にしてるが、お前それ中々凄いことだぞ。


右の前足を自分に向けるポテ男。

「なになに、お前が、」


次に左肩の前足を俺に向ける。


「俺を、」


また次は俺の服をまた前足で引っ張る。


「掴んで?か引っ張ってだな。」


そのまま翼をはためかせるポテ男。


「飛べば、」


ここまで来ると言いたい事がわかった。要はポテ男が俺を森の外に運んでくれるって事だな?


「なるほどなポテ男!お前は凄い奴だ!じゃあ早速お願いして良いか?」


俺の問いにポテ男は前足を胸に当てポムっと音をならす。任せろと言う事だろう。


「おっしゃ、こんな体験初めてだぜ。おらワクワクしてきたぞ!」


こうして俺は生まれて初めて豚に掴まれて空を飛ぶ体験をしたのだ。





そして……。




「ずびばぜんでじだぁ~。」


こうなった。

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