第3話 天使と悪魔。
俺、マイケルシンプソン、通称ミックは農場で婆ちゃんと二人暮らしだった。
14歳の時に近所の湖で釣りをしていたら、お腹を空かせた自称400戦無敗、ステゴロ最強を名乗る魔法使いと偶然出会い。何やかんやあって弟子入りする事になり、その約1年後「ごめん、俺ちょっと用事あるし行くわ。」と飲み会を途中で帰る時みたいなテンションで修行を打ち切られ、殆ど魔法を教えてもらってない状態で放り出された。
その後生きる為に仕方なく放浪し、小うるさいコソドロ娘となし崩し的に一緒に行動している。
そして今、
「天使や。天使はおったんや。」
「アタシの真似すんなや。キショいねん。」
俺は麓の宿屋で天使に会った。
「あの~、すみません、ご宿泊ですか?それでしたらお二人で1泊銀貨1枚になります。もし別々にされると言う事でも本日は部屋が余ってますので同じ値段でご用意させて頂きますが。」
目の前の茶髪の天使は、天国と言う名の宿に俺を連れて行こうとしてくれているみたいだ。
だが俺が欲しいのは場所ではない。君自身だ!
「君の心は幾らで買え「アホな事言わんとさっさと金払って風呂行き、アンタ今むっちゃ臭いで。」
スパンッと金髪の悪魔に頭を叩かれるが、それ以上に深刻な言葉を聞きそそくさとお金を払い風呂場に向かった。
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「良~い湯っす~ね、ゲヘヘ。良~い湯っす~ね、ゲヘヘ。」
二週間ぶりの湯船はとても気持ちいい。ついつい故郷の歌を歌っちまう。
ちょっと体が痛むけど、ちょっとあちこちに青アザが見えるけど、気にしないぜ!!!
ここ最近川や井戸でしか体洗ってなかったからな。流石銀貨1枚払う価値があるぜ。
「あの、お客様。バスタオルはここに置いておきますんで。」
あっ、天使ちゃんだ!!
さっそくお話お話。
「ありがとうお嬢さん。ついでに名前とスリーサイズを教えてくれるかな?」
俺、知ってんだ。最初は軽めのジョークで軽快にラリーするのが良いって。週刊誌に書いてあったもん。
「スリーサイズはすいません。測ったことがありません。名前はエリンです。」
エリン!!何てプリティな名前なんだ!!
それにスリーサイズ測った事無いのか、これは楽しみ(?)だな。ゲヘヘヘヘ。
「エリンさんて言うんですか。良い名前ですね。あなたに良く似合う。」
「は、はぁ。では私はこれで。」
そう言うとエリンさんは足早に立ち去っていった。
ふふっ、効果覿面だな。週間センテンスサマーの激モテ虎の巻第1章、女の子は全て褒めるべし。
照れちゃってもう、可愛いなぁ。
ひとしきり余韻を楽しんだところで、
「うしっ、そろそろ上がるか!」
これ以上入ってるとのぼせそうだしな。
風呂から上がり替えの服に着替える。
あと宿屋のオッチャンに牛乳貰った。
「くぅ~!やっぱ風呂上がりは冷たい牛乳だぜ!!」
天使のように綺麗な娘さんに気の良いオッチャン。理想的な宿屋だなここは本当に。
感慨に浸り、腰に手を当て唸っていると後ろから蹴られた。
「おっそいねん風呂から上がんの。女の子待たせるていっちゃんアカンやつやで。あっ、アンタ風呂場でチビってへんやろな?」
うっわ、出たよ悪魔のように悪辣な女。
こいつは小悪魔とか言うレベルじゃねぇからな。大魔神レベルだからな。
「うっせぇな。チビってねえよ。ってかエリンさんの前でそういう事言うなよ。品の無い奴だと思われるだろ。」
本当に、勘違いされたらミッちゃん大プンプンだぞ!
「まぁ、それは別にどうでもええねん。アンタわざわざここまで来た理由忘れんなや?ただ登山しに来た訳ちゃうぞ。」
「分かってるよ。これ飲んだらちゃんと情報収集行くから。」
うるさいなぁ。分かってるって、俺らは金稼がなきゃ生きていけない事ぐらい。
「ホンマに早よ行きや?アタシが上がるまでここにおったらシバくからな。」
「あ~、もううっせぇな。行くって言ってんだろ。」
せっかく良い気分だったのにこいつのせいで台無しだわ。
「ホンマに分かってる?あ、あと行く時はケーシーの実ちゃんと持って行きや。そんで何かあったらすぐ潰して連絡しい。」
ケーシーの実と言うのは寒い地域の山奥に生息する特殊な木になる果実だ。その実を半分に割り、片方を軽く潰すともう片方も光る旅人やトレジャーハンター御用達の必須アイテムだ。お互いが近ければ近いほど強く光るから、迷子になった時はこれに頼るのが1番。最も粉々にしたり、互いの距離が遠すぎると光らないからその辺の注意は必要だが。
「あんまり遠くに行ったらあかんで。あと夜ご飯までには帰ってこなアンタの好きなエリンさんに要らん事吹き込むからな。」
お前は俺の母ちゃんかよ。
あとエリンさんは巻き込むな。
「へいへい。じゃあ今から行ってきま~す。」
俺は髪を拭き終わるとサッサと外に出た。