第2話 とある日の厄日。
「悪い、俺ちょっと用事あるから行くわ。」
ふらりと立ち寄った食堂で師匠がいきなりそう言った。
「えっ、どこに行かれるんですか?」
「アレだよ。魔王的なヤツだよ。ほら俺1000年に1人的なヤツじゃん?女王から召集かかってさ。だからお前との旅はここまでだわ。」
そして目の前で爪楊枝を咥えながら無精髭をポリポリと掻く。
「いやいやいや、修行ってまだ1年も経ってないじゃないすか!魔法もまだ二つしか教えて貰ってないし。幾ら何でもここで修行終わんのはキツイっすよ。国家魔術師の採用試験絶対受かんないじゃないすか。」
突然の宣告に動揺が隠せない。国家魔術師になって、良い暮らしぶりをする為に弟子入りしたのにこれはあんまりだ。
それに女王から召集とか絶対嘘だわ。だって師匠の顔と名前誰も知らないんだもん。そしていつ1000年に1人的なヤツになったんすか、こないだまでは400戦無敗のストリートの帝王でしたよね。
ってか1000年に1人的なヤツてそもそも何だよ。的なヤツて。割と居そうだぞ。
「良いか我が弟子よ。本当に大切なのは使える魔法の多さじゃない、心さ。」
微笑みながら胸に手を当て呟く師匠。
一昨日は使える魔法の多さが全てって言ってたんすけど、あの理論どこ行きました?
「本当に困ります!結局教えてくれたの山羊になる魔法と足が速くなる魔法の2つだけじゃないすか!これでどうやって魔法使い名乗るんすか……。山羊になって足早くなるだけじゃ試験官に鼻で笑われますよ!!」
「大丈夫大丈夫、今ハンパな魔法使い多いから誤魔化せるって。あははは!」
いや、あははじゃねぇから!
正直な話、そのハンパな魔法使いはアンタじゃないかって最近疑ってますから!
これはもう最後のチャンスかも知れない。今まで気づかないふりをしていたけど、どうせ別れるなら確かめよう。
「師匠、最後に師匠の青い炎を「すまん今日は品切れだ。」
「ならせめて龍の変身を「在庫切れだ」
なんだよ、品切れとか在庫切れとか。雑貨屋かよ。できるできる詐欺じゃないか。青い炎も龍になる魔法も結局1度見せて貰えず仕舞いだった。
うん、やっぱこの人ハンパ魔法使いだ。
最悪だ。1年も修行したのに……。
今までの苦労は何だったんだ。必死に肉体労働したり、身の回りの世話したり、タップダンスしたり。
「まぁ、そんなに悲観するな。もう十分独り立ちしても良い頃だ。お前はギャリーの奴より飲み込み早いし。」
すぐそんな適当な事言う。
でもよく考えれば、何だかんだ言って1年も俺の面倒を見てくれた事は事実。
この後の事も少しは考えてくれているだろう。
よしっ。
「じゃあ、これから俺はどうしたら良いんですか?」
「そこはホラ、何て言うか。こう、上手くやるんだよ。」
よし、こいつの事は忘れよう。
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「なぁ、なぁって。いつまで寝てんねん。」
鈴の様な声で目が覚めた。
はっ、いつの間にか寝てしまってたのか。
何か凄く嫌な夢を見ていた気がする。
「いっつ。」
何でかむっちゃ頭痛い。
地面に寝そべってるしこりゃどういう状況だ。
「ごめんな~ミック。手加減してあげてんけど足らんやったみたいやわ。」
顔を上げると口に手を当てニマニマとしている天敵、もといアンナ。
思い出したわクソ。
こいつ本気で来やがって。別に悔しくないけど。
本気じゃなかったし、10分の1も力出してなかったし、俺がラストエンペラーモード入ってたらアンナなんて瞬殺だったし。
まぁ俺は大人だからそう言う事言わないけど。
「さっき通った行商人の人に聞いてんけど、あと半刻も歩いたら宿屋に着くやって。」
「おぉ、マジか!じゃあ急いで行こうぜ。」
さっき暴れたのでストレスは解消出来たし、寝てる間に夕方になって涼しくなったからテンション上がるぜ!!
「なぁなぁ、今回の宿も娘さんおったら花渡すん?」
アンナのクソ野郎がニヤニヤとしながら聞いてきた。
前言撤回、クソみてぇなテンションだわ。