第1話 黒髪少年と金髪少女。
山道を2人の男女が歩く。
その足取りは重く、爛々と煌めく太陽に反してドンヨリとした空気が流れている。
「あつ〜。おい、本当にこの道で合ってんのかよ。」
黒髪の少年が前方の少女に尋ねる。
「やいやい言いなや、ハゲんで。」
金髪の少女は振り向きもせずに悪態をつく。白い服によく似合うポニーテールが歩く度に左右に揺れている。
「ハゲねぇよ。やっぱさっきの所で曲がって水汲んだ方が良かったって。喉カラカラだぜ。」
反応するのも怠いのか、その悪態を軽く受け流し、少年が空になった瓢箪を逆さにしながら愚痴る。
すると少女は歩みを止め、少年の方を向いた。かなりの剣幕である。
「ちょホンマなんなん自分。さっきはそれでええ言うたやん。後から言うとかホンマないわ。言っとくけどな、自分今めっちゃしょーもないで。」
しかし少年はそれを意に介さず少女を追い抜こうとする。相変わらずダルそうな顔をしている。
「はいはい、しょーもなくてスンマセン。もう今更言っても遅いから先を急ごうぜ。」
言い終わるとともにハァ。と大きなため息をつきながら進もうとするが。隣から肩を掴まれて先に進めない。
「はぁ⁉︎なんなん⁉︎アタシが我儘言ったみたいやん。気い悪!おいハゲ、自分ホンマええ加減にせえよ!」
少年の肩をギリギリと言わせながら食ってかかる少女。年頃のレディとは思えない口の悪さである。
「だからハゲてねえって言ってんだろ!!」
少年が荷物を地面に投げつけて咆哮した。恐らく1番突かれたくない所なのだろう。
「あ、気にしてたん?良かった、ナンボでも言ったるわ、おいハゲ、ハゲ、あと口臭いで自分。」
その態度に気分を良くしたのか、先程までの疲れが一切見られない笑顔で少女の口から暴言が飛び出す。
「テメェ、もう一度ハゲって言ってみろ。お前のその目障りな髪全て引っこ抜いてやるからな。それに口臭いのはお互い様だ。」
歯を剥き出しにして怒りを露わにする少年。
「女の子に向かって口臭いとかホンマにデリカシー無いわ。やから宿屋の女の子にずっと苦笑いされてんねん。宿出るときに花渡してたやろ?あれ正直むっちゃサムかったで。」
少女は少年の怒りを受けて更に元気になった様で満面の笑みでまくしたてる。
しかしその言葉を皮切りに明らかに少年の纏う雰囲気がに変わった。
そして肩に立てかけてある瓢箪を地面に置くと、鋭い目つきでこう言った。
「おいアンナ。ちょっと運動しようぜ。丁度ここは開けた場所だし、周りに迷惑かからねぇからな。」
健康的な言葉とは裏腹に、少年の顔は般若のようで、右手には農場で使われるピッチフォークが握られている。
「おぉ、奇遇やんミック。アタシも丁度身体動かしたかったんよ。それにうるさい奴も黙らしたいし。」
対する少女は左腕に丸い盾を装備して、靴の爪先を地面にトントンと軽く打ち付ける。また良く見ると足先を炎が揺らめいている。
一瞬の静寂、互いに見つめ合った次の瞬間、大きな衝撃音が山中に木霊した。