Lv.6‐甘くない訪問者
―…何だろう…?隣りが温かい…。
「…しろい、毛…?」
毛…。
「…毛!!!?」
自分の思考と発言に私は身を起こした。
外は既に朝。むしろ、昼が近そう…。
「そ、そうだった…自分で、この小屋に…」
白銀…の毛を纏った獣。
「…君を、入れたんだった…」
私は思わずここでラーイさんの言葉を思い出した。
ラーイさん達以外はこの小屋には、私が『許可』しないと、出入りが出来ない事を。
つまり、この獣はもうこの小屋を自由に出入り出来るのだ。
でも、何だろう…?"危険"と感じないのは。
ツヤツヤした毛に見え隠れする、裂傷や縛り痕…。早く、消して上げたいな…。
「…ご飯は何が良いかな?」
生き物は好きだけど、何かを飼った事が無いから、詳しく分からない…。
う~ん?
頭を捻りながら、何となく引き入れた動物の毛並みを撫でる。
撫でながら観察して見ると、犬か狼か何なのか…分からない。
毛並みはスベスベしていて、大変気持ち良い。
良く見たら顔つきが美人…?そうよりも、精悍そう?
その謎の眼帯は本当に謎だが、手を伸ばすと呻られるので、もう放置する事に決めた。
身体等を撫でるのは構わないけど、眼帯は駄目なんだね。分かった。了解した。
それから数日、私はこの動物と穏やかに寝食を共にした。
ラーイさん達が…戻ってこなかったら、一人でここを出て教えられたトコロに行かないといけない…。
その時、この白い動物はどうしようか…?
「う~~ン?」
頭を悩ませながら、私は何枚も焼いたパンケーキに茶色いシロップをテロテロと掛けた。
黄色味を帯びた生地の間にも染み渡りながら、段々に掛けたシロップは皿底にゆっくり溜まっていく。
もう少しで二週間が経つ。
…動物を連れて行っては駄目かな?
「わふ!」
「わ!?」
な、何!?急に袖を引っ張って…って、危ない!シロップが机まで満たすところだった!
「ぅわ~…ありがとー。…これは随分、贅沢なパンケーキになったね…」
自分で言うのも何だけど、シロップひたひた!
「シロさんは甘いの好き?」
「ぅわ~う!」
私は白い動物を単純に「シロさん」と名づけた。
シロさんは"何でも"食べた。
「はい、あーん…」
「わぁう…」
私が大きめに切ったシロップヒタヒタパンケーキの塊をフォークに挿し、シロさんの口の前へ。
タラタラと茶色い透明な液体を細く落とすこの切れ端を、シロさんは"パクリ"と食べてくれた。
そして私もパクリ…。う。あまぃ…。
「甘いねぇ…。シロさん、ごめんねー」
「わう」
思ったより甘い。だけど、私達は何とかソレを食べ終えた。
そして、片付けを済ませて私は最初から持っていたバック以外に、何とか見つけ出したバックの口を開いた。
「はー…!やっぱり、そろそろ…準備、しとかないとマズイかな…」
言いながら、何が必要かな、と小首を傾げた時…
―シュッ……ヒヤリ…
……え?今の風を切る音と……この冷たい感触は…何?
「傷付きたくなければ、動くな…」
そして、誰…?
ダレ?