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Lv.1‐雪原の出会い



「あ」





っと言う間に私は崖から転落した。


それは、大好きな登山で単独雪山登頂成功した直後だった。

多分…いや、絶対にこれが原因だと思うが、調子に乗って何度も何度も何度も…ジャンプしたのがいなかったのだ。

ジャンプして、ツルリと滑って、そのまま崖からダイブをしてしまったのだ…。


……それにしてもこの落下…底が見えないのだが…。どんどん落下している。「もう駄目だ…そろそろ…」と何度私は思った事だろうか…。

いい加減、私の心を弄ぶのを止めて頂きたいが、その先に待っている衝撃は確実な"死"であると確信しているので、何とも頭を掻き毟りたくなる状況なのだ。

いっそ、下では無く、真横に動いて逃げ出したい気分だ。…実際は無理だが。



―…しかし、世の中は始まりがあれば、大体終わりも用意されているもので…その瞬間は突然訪れたのだ。






―…ボッフゥ!!!!!



「『!?』」



私はやや柔らかい何かに比較的短い距離で落ちた。

あんなにスピードにのって落下していたのに、衝撃は全く無いと言って良いくらい無かった。




「な、何だ!?」

『え?え?え?え?』




やや柔らかい布…?革?めいた感触の後に、硬質な何かにぶつかりそのまま滑り、私は雪の上に尻餅状態で落ちた。

何だか分からないが、私は今…多分、地面の上に居るのだ…。

そして下を向いてチカチカと変に星を飛ばしている私の頭上に、変化が早くも現れた。



「……ラーイ…何だ、その子供は」

「…シン様、俺にも良く分からないんです…急に背後に現れた…降って来たと言いますか…」



…それなら、私自身も状況が掴めていないです…。



「ここらの怪鳥にでも攫われて来た子供か?木の上から俺達を見てとっさに飛び降りたとか?」

「幾らこの雪原がクッションになりそうでも、無謀過ぎです…。骨位簡単に折れそうです」

「…確かに"木の上から落ちてきた"という訳でもないですね…。第一、雪まみれじゃないですし…」



私はとっさに自己紹介をしようとしたのだけど…"セツナ"と言う名前以外、大した情報を思い出せなかった…。

この事実に、私は一人で静かに愕然とした。


―…記憶が…半壊している…?!……でもその代わり、この世界の言葉が少し分かる…。だから…



「…こんなところで正体不明な子供を拾う事になるかもしれないとはな…どうするか…」



…"拾う"、って表現、酷くない?! 話の内容を全部拾えている訳じゃ無いけど、部分部分で分かる単語に"拾う"って…。

あ、でも一応どこかに連れて行ってくれる…のかな?

こんなところに一人で、しかも何も分からない状態だし…本当に連れて行ってくれると嬉しいな…。



『………"拾って"くれるの?』

「え?」

「喋ったな…。けど、俺達とは同じでは無いな…異民の子か…?こちらの言語は喋れないが、理解はしているのか?」


『…連れって、くれないの?』

「あ…っと」

『駄目、なの…かな?』



思わず、自分が先程落下してぶつかった人物の白いマントを握った。

彼の顔は当然、困惑していた。…そりゃそうだよね…。

何だか先程の希望が、音をたてて消えていく様だ。"プシュー"ってね!



「………」

『………』



…無言が辛い。私は彼の白いマントから手を離した…。

彼のマントは私が握っていたにも関わらず、直ぐに綺麗ななだらかな状態に戻った。

その様は先程まで、私が握っていた事すら分からない状態だった。初めから、何も無かった様だ。

あ…ちょっと悲しさが不安と共に溢れそう…まいったなぁ…。



『………』

「…そうしょげないでくれ…。俺達が今から行くところは危険なんだ…」

『………』


「今から俺達は"雹竜"を倒しに行くんだ…だから…」

『ひょうりゅう?』



聞き取れたが聞きなれない言葉に、私の涙が引っ込み、かわりに好奇心が頭をもたげ始めた。



「…じゃぁ、ラーイが主に面倒を見ろ」

「し、シン様!?」

「そうだな、とりあえずラーイに一番懐きそうだからな」

「兄貴まで!」



突然割って入ってきた二人の男性の声に、私は驚いた。そうだった!彼には仲間が居たんだった!!



『へくちッ!!』


「…よく見れば薄着じゃないか…。コートすら纏っていないとは…」


『へくちッ!!へくちッ!!』


「ほら…おいで。俺のマント中に入るといい」



わ!このマントの中…快適!!!何だか、"ふわ~~~~っ"と暖かいの…。



「暑いか?」

『いいえ!』

「…寒い?」

『めっそうも!!』



反応出来る単語だったので、言葉と同時に問いの回答として両方同じ動作だが頭をブンブン横に振る。



「何か通じてるな。良い事だ。うんうん」

「そうですね」



私と白マントさんのやりとりを見ながら、残る二名が頷き合っている。

私は白マントさんのマントからそれを覗いて、どうやら自分はとりあえず…悪人的な人達と出遭った訳ではないと安堵した。


…私はとりあえず生きているし、出遭った人達は悪人には見ない…感じない。

とりあず、ラッキー…なのかな?うん。





……これが、私と彼らとの出会い…なのであった…。

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