合コン - 1 -
「だーれだ?」
「オトコにそんなことされても、全然嬉しくないよ。アキラ!」
「バレたか」
講義室で後ろに座った元同居人のアキラは、今日は珍しく1人だった。
「今日は朗報をひとつ持ってきたぜ、悠。今週末、池袋で合コンをやっちゃいます」
「え!ってお前、彼女いるだろ?」
誤って大きい声を出してしまったが、教官は都合よく板書に集中していて、周りも結構お喋りをしている。
「なーに、大丈夫。彼女のバイト先のオンナ友達がどうしてもセッティングしろってうるさいらしくてな。俺の加奈子も来るが、加奈子はお前には渡さん」
「欲しかねぇよ」
アキラは大声で笑いながら、僕の後頭部をデコピンした。
「それで、呼んでるオトコのメンツは?」
「隣のサークル部屋、陰気臭い読書バカ集団いるじゃん?しかもあの中のダメそうなやつらばっかり誘っておいた。ということで、お前の勝ちだ」
「そう上手くいくか?てかお前が浮気して加奈子ちゃんが激怒しないことだけを祈るよ」
「何言ってんだ。お前は自分のことだけ心配して、服でも買いに行きな!じゃ、俺はトンズラするので、出席カードよろしくー」
「あ、おい…」
教官が板書をし終える直前に、アキラはギリギリで講義室を後にした。
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「先輩、土曜なんかあるんすか?さっきテーブルの上に手帳開いてあるの見ちゃって星マークが…」
ピンク色の靴下を履いて朝の身支度をするまさるは、申し訳なさそうに、しかし興味津々に言った。
「あ、うん。まさるくんなら言ってもいいか。実は合コンがあって」
「うっほー。そりゃいいですね。がんばってください!決して、その日にお持ち帰りとか狙っちゃダメですよ!」
「え?なんで?」
バッグをいじるまさるは、ケタケタ笑っていた。
「なんでって。お持ち帰りは、もう相手がいる人同士がアバンチュールする時くらいしかイイことありません。それも決していいことじゃないけど。そうじゃなくいきなり裸見せちゃうような女性は、メンヘラか、ただの遊びで本気じゃないか、まあつまりビッチとかじゃないかなと思います。あくまで、僕はですが」
「な、なるほど」
少し冬っぽい帽子をどこからともなく取り出してきて被ると、彼はまた先にドアに向かった。
「僕の持ち物の中で着て行きたい服とかもしあったら、言ってください。ソレ用っぽいのがいくつかあるし、クローゼットはくまなく見てくれていいですよ!でも、試着は僕に言ってからしてください。先輩には小さ過ぎるのもあると思うので。じゃあ!」
「あ、ありがとう。行ってらっしゃ…」
ドアが閉じるなり、呆気に取られた僕は、皿洗いを途中にして、気づいたらクローゼットに走っていた。
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