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化粧水
「先輩、この化粧水つけてると、きっとニキビ無くなりますよ!」
彼が今日買っていた例の化粧水は、2人の女のどちらのためのものでもなく、僕のためのものだった。
「え、え?!ってこれ新品じゃん?悪いよ。古いのとかあれば、そっちをちょっと貸してくれれば」
「そんなこと言わず受け取ってジャンジャン使ってください!いつもほら、僕がバイト遅い日は夕飯作ってくれてるじゃないですか。感謝っす」
男に対しても気が回る、なんとも憎たらしいが、憎めないやつである。
僕は、今日尾け回したことが、急に恥ずかしくなった。
「なんか、ありがとう。ホントに」
「いや、普通ですって。引っ越してきた時も、僕なんかお土産とか何も持ってこなかったし。それよりニキビ無くなったら、きっとモテますよー」
「え、そういうもん?」
僕は『モテたい』とでも、顔に書いていただろうか?
「じゃあ、おやすみなさい!」
今晩の彼は、なんだかいつもより大人な背中をしていた。
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