表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

サチ




あれから3日経った土曜日、僕はまさるの浮気相手が気になって、バイトを休んだ。


僕のとんだコソ泥魂は、まだまだ生きていた。


なに食わぬ顔して買い物だなんだと出て行ったまさるを、今はまだ、尾行に成功している。


場所はなんと、横浜。


さっき入った店では、なにやら化粧水のようなものを買っていた。サチへのプレゼントなのか、それか自分用と見せかけてユキか。もしくは自分用か…。


「もうすぐ着くよ!待ってて!」


地下鉄を降りてすぐ電話でそう伝えると、彼は足速にパシフィコの方向に向かっていった。


外に出るなり、スタスタと歩いていくまさる。


ここは人が少なくてだだっ広くて、下手をしたら尾行がバレる。


少し間隔を多くして、尾行を続けると、まさるは階段をくだっていった。その先は、海の見えるデッキ。


階段の上で、まさるが階段を下り終わるのを少し待った。


なんて素敵な場所だろう。僕も彼女が出来た暁には…。


階段の下で手を振る女性がいた。


白い帽子、サングラス、すらっと見える体型。


まさるも手を振っていた。


彼女が、サチ。



*******



海を眺めながら、何時間しゃべっていただろうか。


それを後ろや横や、至る角度から、ただただ見つめる、惨めな自分。


確認している限り、彼は化粧水を渡したりはしていなかったようだ。


その代わり、なにやら小さい紙袋をサチから渡されていた。


まさるは、遠慮深そうに頭を何度も下げて、それをやめさせるかのように、サチはさっきよりももっと近づいて、肩を抱いた。


座高も身長もおよそ同じくらいだろうが、まさるが猫背なせいか、ちょっとサチの方が大きく見えた。


それでもサチは身体を丸めて、まさるの肩に頭をもたげた。


昼過ぎの1時半から座って、今はもう2時間が経っていた。


なんでそんなに同じところで2時間もいられるんだろう。僕は不思議で仕方なかった。


風の向きが変わって、天気がいいのに少し雨がパラついた時、やっと彼らはその場を立った。


サチは小さい折れ傘を取り出して、2人で仲良く一緒の傘に入り、駅の方に向かっていった。


一方の僕は、フードひとつだった。


改札を超えて、地下鉄に乗ろうとする2人。


僕は足速に改札を目指して、同じ地下鉄に乗れることを祈った。


エスカレーターを静かに、しかしできるだけ速く降って。


「ピポン!チャージしてください」


それは僕のコソ泥魂が打ち砕かれた瞬間だった。


乗車用カードのチャージをしている間に、2人の乗った地下鉄は発車した。



*******


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ