忍び込み
バイト先の後輩をご飯に誘ってみたものの、ろくに喋れず。奢ったものの、さっぱりとバイバイした僕は、酒の入ったコンビニ袋をぶらさげて、帰路に着いた。
なかなか難しい。
なんとか、なにか勉強すべきなのだろうか。
家のドアを開けて入ると、酒を一気に飲み干した。
「青春の、バカヤロー」
その時、僕はひとつ悪巧みを思いついた。
まさるくんの部屋に、なにか秘密があるかもしれない。
抜き足差し足、唐草模様の風呂敷を被ったつもりで僕は禁断の部屋に足を踏み入れた。
電気を付け、それなりに散らかった部屋に痕跡を残さないように、色んなものを見てまわった。
テーブルの中、ベッドの下、本棚の内容、ゴミ箱。
彼がミステリー好きだということがわかった他は、残念なことになにも見つけられなかった。
「なんだよアイツ。コンドームも残さず、まったく面白みがないな」
…ドゥン。
突然の雑音。背後で聞こえた何かに、背すじが凍った。
見ると、なぜか勝手にPCが動き出していた。更新?きっと、スリープモードで家を出てしまったんだろう。
「まじ脅かすなよ」
PCは数字をかっ飛ばして表示したあと、ログイン画面のようなものが表示された。
「え、見てくださいとでも?」
恐る恐る『Masaru』と書かれたアイコンをクリックすると、なんとパスワードなし。中に入れてしまった。
「ここに秘密があるのか…」
起動して間もなく自動で開いたのは、テレビ電話のソフトとSMSのソフトの2つ。なんとも好都合なことに、そのすべてが既読だった。
「えっと、昨日の夜。『ユキ。明日楽しみだね、おやすみ』『わたしも。おやすみ』1時17分、これが彼女さんか…ユキ、どんな顔してるのかな」
テレビ電話のソフトに書かれたユキとのメッセージは、多少遡ってもそれだけだった。まあ、普段はテレビ電話とLINEとかそんなところだろう。
「SMSは、あれ?これは…」
『明日は男友達がどうしてもゲーム助けてくれ!って聞かなくて、泊まりだから、ちょっと連絡できないかも。ごめん。週末はまた会えるよね?』
「え、これの相手、ユキじゃなくて。サチって書いてある…え、浮気?え?え?」
そこに突然、SMSが1通受信された。
「まさるくん、今日は泊まりなんでしょ。ちょっと寂しい。なんて言って、付き合ってるわけとかじゃないのにね。ごめんね。週末はもちろん。例のところで待ってるから。あと3日の辛抱ね。おやすみ」
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