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彼女




ある日、バイトを終えて10時半頃に家に到着すると、ドアの外でもわかるほど大きい女性の声が聞こえた。


なかなか甲高く、若い感じがした。


「彼女か…」


確かに今朝、


「今日の帰りは11時くらい。まさるは?」


「たぶん今日は何もないし、7時くらいから帰ってますね」


とやりとりしたのだった。


失敗だった。


佳境に入っているのか、まだこれから突入するのか、正直経験の浅い僕にはわからなかったが、ここで家のドアをガチャリと開けるのはまずい。

……いや、あんなに叫んでれば、わからないか?

……いや、やっぱり悪い気がする。


僕はトボトボ引き返し、家で食べようと思っていたサンドイッチを頬張った上で、ファミレスに入った。



*******



「まさるくんってさ、彼女いるんだよね?」


「いや、それが最近別れたんですよね」


「え、そうなの?」


耳を疑った。何も気にしていないまさるは、引っ越してきてから毎朝お馴染みのシリアルを出してきて、ガツガツと食べ始めた。


「そもそもこの間まで一緒に住んでたんですよー。でもなんか、親厳しくて同居バレて。別れさせられて、挙句あいつ実家戻ったんすよね。栃木の」


「え、その、元カノさんはそれからは栃木からこっちまで学校通い?」


「そう、今は。大宮の大学で宇都宮からまあ1時間?前はバイト先が一緒で付き合う運びになったんですけど、まあもちろん辞めましたよね。僕は今も池袋のそのお店で働いてますけど」


「なんか大変なんだね」


昨晩の声は誰だったのか。牛乳をすすり終えると、彼はテーブルにあった葡萄をつまんだ。


「ゴミ箱からコンドーム見つける親って、相当っすよね。前は大学出たら結婚とか言ってたけど。事実上別れて、今はこれからどうするのかって感じで」


「事実上って、まだ関係続いてるのか。てか、親は別れたって思ってるってことは、まさるくん目付けられてるんじゃないの?」


「あー。でも誰と付き合ってたかとかわかってないみたいで。血上るとそういうの関係なくなっちゃうみたいで。とにかく何、結婚前は処女性を保つとか?残念ながら、ご承知の通り、もう処女じゃないんですが」


笑ったまま、まさるはドアに向かった。


「タイミング良いところで元カノの話聞き出してくれましたね、先輩!今日は実は、帰りませんっ。彼女のお姉ちゃんの家に、泊まりっす。お姉ちゃんはなんと、出張!」


「あ、へえ。え、ってホントに別れてるのそれ?」


「うーん、なんでしょうね。ま、じゃ、行ってきまーす」


彼はファッション性の高い、おしゃれな野球帽を被って出かけていった。


「気をつけてな」


どうしたら、あんなイケメンになれるんだろう。


食器を片付けていると、僕はあることに気づいた。


今晩は1人。そう、1人ということは、誰かを連れ込もう。


僕は闇雲に、そう思った。



*******

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