目標
あれからポツリポツリ、ユキから連絡がくるようになった。
『今日はバイト残業させられた。店長ヒドイ。悠くんもお疲れ!』
『悠くんの大学、文化祭終わっちゃったんだ。私のところもだよ。残念だね』
『新しいマフラー買ったよ。コレ似合うと思う?自撮り下手でできなくてごめんね(笑)』
友達以上恋人未満という関係っていうのは、こういうことなのだろうか?
僕は、なぜか告白できずにいた。
「先輩、最近元気ないっすね。体調悪いんですか?それとも恋…?」
まさるは相変わらず元気だった。引っ越してから3週間、まだずっと同じシリアルを食べている。ストックを切らさないところもまた、マメさを感じさせた。
「あ、うん。なんだろうね。そういえば、まさるはクリスマスは彼女のユキちゃんと?」
「あ、それがですね。ユキったら母親の方の叔母さん?がアメリカ住んでるみたいで、クリスマスはアメリカだとか言うんすよ。まじヒドイ扱いだよとか思っても、今親には彼氏いないってことにしてるし。まあ仕方ないかなって」
「それは残念だね。で、24日どうするの?」
「たぶん、高校の時のダチと遊びますかね。独り身のやつらとね。ははっ」
僕の頭の中は、横浜で見たサチの後ろ姿だった。
「そうなんだ」
「先輩は、彼女さんとですか?」
「え、いや、え?」
「ほら、合コンの日から、なんか女の子の影があるような、無いよな。なんちって」
勘が鋭いのも、また彼のモテる要因のひとつだろう。
「まだ付き合ってないんだけどね」
「それなら、クリスマス空いてるか誘ってみて、クリスマスも周辺日もダメだったらあっさり諦める。OKしてきたらクリスマスに告白。どうすか?まあ、まだあと2週間の間に、先に盛り上がっちゃえば待たなくても、ですけど」
「あ、なるほどね」
まさるの言うことは、いつも正論だった。その頭脳をどうか株分けして頂きたい。
「でも、告白して失敗しても、怒らないでくださいね!まあ、その時はお詫びに服一着あげますけど!じゃ、行ってきまーす」
「お、おう」
そう、彼のクローゼットにある服は、半ば余って!いるのだ。
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