新規入居者
ちょっとしたことから、人生の転機が訪れることがある。
2人の男子大学生が出会ったのは、秋の学園祭が終わったばかりの11月半ば、木々の葉が色づいた頃だった。
僕、大和 悠は、都内東部の3人用シェアハウスに住んでいる、大学二年生。
しかし、今は1人。
去年まで大学院生だった先輩は7月に就職が決まって、退去。
もう1人いたのは同級生で同じゼミの、アキラ。彼は夏休み頃に彼女と同居することを突然決め、9月の退去から、今に至る。
(急に出て行くことにしたアキラからは年末まで家賃を払ってもらうことにした。彼女の家に転がり込んで、そちらは家賃を払わないというヒモには、それくらいしてもらわないと…)
大家さんが電話をしてきたのは、目あてだった女の子の連れ込みに失敗し、僕の学園祭敗者が決定した夜だった。
「来週の火曜、ってもう明後日ね。新しい入居者さん来るから出迎えてあげてね。『優しい』って書いて『まさるくん』よ。四ノ宮 優くん。歳は、えーっと。あなたのひとつ下よ」
僕のアタマの中は、クリスマスまでに勝者になることだった。
そして大家さんの世間話は、右から左へ流れていった。
「わかった?彼、細くてチカラ無さそうだから、荷物運びとか、お願いよ」
「あ、はい」
そうさ。僕は、負けられない。今年のクリスマスこそは彼女と過ごす。
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