木崎家と御劔家の因縁
二回目の毒は、体外から吸収するもので、皮膚にべたべたと湿布のようだけど効果は絶対に違うものを貼られた。
時間差で反応が出るから反応が出る前に治療できるか実験する、と事前説明されていたので、僕は目の前で色んな実験をするライアーを見つめていた。
「木崎の道場と、御劔家はどう関係あるの? 有名な道場だからって、御劔家は地位が高いって聞いた。変だよ。……それくらいは教えてくれてもいいでしょ?」
ライアーは一瞬こちらへ視線を向けたが、変わらず治療に専念しながら、言葉だけはこちらへ投げてくれた。
「天女に惚れたっていう馬鹿な化け物がいた。化け物は、天女の血を引く女を差し出せと、江戸を襲ってきた。もうすぐ木崎家に嫁入りするところだった天女の血を引く御劔由香は江戸を守るのなら化け物へ嫁入りすると勝ち気だった。だが相手が悪い、由香は拷問のような夜伽をされて、子供を産む頃には狂っていた。由香は行方不明になり、化け物が御劔を育てた。化け物は子供を心底愛した。由香よりも愛した。御劔の地位が高い理由? っは、江戸が化け物に襲われない為に決まってンだろ。月がこの郁を金で買ったっていうなら、化け物は力でこの郁を買った。化け物からすりゃ、江戸は成人した御劔に不自由なく暮らす為の庭だ。だが御劔からしたら、優しすぎる軟禁だな。さて、木崎道場の嫡子は、江戸で一番強い。そこで生まれる関係っつったら、想像に容易いだろ」
――……婚約者の家だった責務。他に誰も触れたくないのなら、見張りにさせるだろうな……。
何だかとても可哀想な関係に、僕は一気に悲しくなった。
その表情が見えたのか、ライアーは呆れたような表情を僕に向けた。
「この話を知ってるのは、トップシークレットだから上の連中だけだ。木崎道場の道場主はどうだか分かンねぇが、嫡子である怜は――喜んでるぜ? 自分だけが傍にいても許されるんだって」
「なんで? 強制的な関係じゃないか」
「うーん、ガキにゃまだ理解できねぇ感情だと思うぜ。テメェからすりゃ、オレと大事な人の関係も強制的な関係に当てはまる。怜とオレは似てる。とーっても献身的なところが」
えー、嘘だー、ってからかおうとする前に、ふと気づく。
そんなに恐ろしい立場の人に、どうやってライアーは近づけたのか。
御劔家の立場からすれば、蟻でさえ近づく者は危険に繋がるなら排他すべきなのに、こんなに危険人物といわんばかりのライアーと知り合いなのを許すなんて。
「怜とオレは同じ夢を見てる……甘美な夢。決して現実では起こらない夢。ガキには絶対分かんねぇよ。分かってたまるか……」
……瞳が、少し潤んでいる。
泣きそうなのだろうかと思った頃に、サングラスで隠されて、「実験は成功だ」と知らされた。




