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突然の危機

 路地裏のスラムみたいに汚い通路を通り抜ける。

 綺麗な都会だと思っていたのに、怖い雰囲気の場所もある。

 暗い路地裏には、黒猫が三匹並んでいて、仲良く一緒に僕の前を横切った。

 三匹も不吉を予感させてくれなくたっていいじゃないか!

 いかにも! な雰囲気に僕は呑まれそうになっていたが、それでも僕を奮い立たせたのは、兄を犠牲にした罪悪感と村の悲しみと、武士の魂。

 階段が地下へ繋がって、下りていく。先にあるタイヤが扉に貼り付けられた扉へ辿り着く。

 息を飲み込んで、タイヤを回して開けようとした――刹那。

「ヘイ、ジャパニーズ、やっとお出ましか!」

 扉の側にあるインターフォンから声がした。どうやら僕がくるのを待っていたらしい。

 でもどうして知っているのだろう? もしかして、あの探偵から連絡が入ってたからとか?

「外で待ってろ、今入ってこられるのは厄介だ。ワクチンを打ってからでないと」

「ワクチン? インフルエンザですか?」

「あー……説明が面倒だな。いいや、テメェいっぺん何も無しで入ってこい。許可する、開けるのを。んで入ってきてから説明するわ! 最初の扉はきちんと閉めろよ!」

 僕は小首傾げてから、扉を開ける。

 ぎぎぎと重い扉は、更に先に、もう一枚壁が隔ててあった。

 田舎でも寒い地方だと、扉が何枚もあるというのは珍しくなく、この一帯は寒いのかなと思案した。

 重い一枚目の扉をきちんと閉めてから、二枚目の扉に手をかけた。

 二枚目の扉を開けた瞬間、僕に何か煙のような物が吹きかけられ――何なのか考え込んでいる内に、体は硬直し、筋肉が縮小していくような感覚が襲いかかってくる。

 体が倒れようとする前に、一瞬で脳裏に過ぎる物があった――死の到来。

 なぜ? どうして? 理由を考えたいのに、思考がうまく巡らない、考えが散っていく。

 倒れている僕に、何かが近寄る音が聞こえた。足音だ。

「ワオ! キヨシは趣味が悪ィなぁ。可哀想に、まだガキじゃん、これ。なのにモルモットにしていいとか――オレは成人男子の被験者が欲しかったのによ。まぁここでモルモットちゃんが死んでも、損しかねぇし、とっとと慣らせるか」

 僕の腕に何かが刺さり、液体が入ってくるすーっとした感覚――。

 まだ、まだ死ねないんだ……。

「御劔……」

「ん?」

「御劔に会わなきゃ……」

 僕は目の前にある靴へ手を伸ばす――目の前にあるブーツは酷く趣味が悪かった……。


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