鬼胡桃
稽古をしていき、ライアーに対する映像も日に日に酷くなっていき。
刺客は怜さんが倒していく。
十日というのは長いようであっという間だった。
兄さんは、僕の剣術の腕に満足そうだった。
何より、僕は、僕の術を見つけた――。
「おいで――君の名前は〝サシャ〟」
僕が羽衣を纏いながら口にすると、竹刀から草木がじわじわと幻視のように現れる。
実際には存在しないのに、マイナスイオンたっぷりの新鮮な草木の匂いが薫る。
僕は構えをとって、一言呟く。
「鬼胡桃――」
草木が僕を包んで、僕の筋肉痛を治してくれる。
僕の持つ技は、所謂自分だけ回復する技と、僕自身の筋力をアップしてくれるだけのものだった。
ライアーはげらげらと大笑いしてから、回復される僕の体を見て、真顔になった。
「今度、試したい毒があるんだが実験していいか?」
「やめてよ! 毒は二度とやだよ!」
「いや、でもテメェ回復できるなら、死なねぇじゃん。それにしても、随分テメェらしい技だなァ? 陳腐なくせに、自分の力量だけで勝つと宣言してるようなもんだぜ、それ。負けそうになる度、心折れるか否か、試される」
「それと、技には限度があるので注意してくださいね」
悔しそうなライアーに対して、怜さんは少し可笑しさを堪えているようだった。
もう夜だから、泉さんもデクスターさんも寝ている。
僕らは最終確認をするだけだった。
「絶対勝てよ、寿」
「これは僕らのプライドも掛かってますからね」
「ライアー、怜。勝手に期待を載せるな、これは最初から寿の戦いだ」
兄さんは二人へ真面目な表情で告げてから、僕へ顔を向ける。
「お前が化け物にならなくて良かった――こういうのを持たなくて良かった」
兄さんは僕に一本だけ黒くて細い手を見せると、細い手はひらひらと手を振って消えた。
じっと兄さんの顔を見つめると、兄さんは僕の両肩へ手を載せた。
「いいか、これはお前の戦いだ。一対一の後は、俺らの戦いだ。いいな?」
「――うん、頑張ります」
「そうじゃないよ、俺が聞きたいのは、お前は本当にこのままでいいって思ってるンだなってことだ」
兄さんの言葉に僕は、息の飲み込む――。
けれど、そんなの表に出したって、誰も僕の罪悪感を責めてくれるわけじゃないんだから。
「ちゃんと、倒す。それが僕の託された意思。揺らいじゃ駄目なんだ」
笑顔で切り返す――兄さんが悲しげに眉を下げる。
僕には兄さんがどうしたいのか、よく判らなかった。




