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寿の覚悟

「御劔家を探したい、と?」

 目の前のサングラスをかけた妙齢の男性は、じっと僕を不審者でも見るような目つきで睨んだ。

 僕は見つめ返して、こくこくと頷いた。

 男はふぅんと頷くと、この時代では珍しいフィルター付きの煙草を口にした。

 高いからじゃない、都会でないと手に入らないからだ。

 つまり、僕は都会にきて、御劔家を探し始めたのだ。

 箱底には軍資金のように置いてあった、お金もあるし何とかなるだろうと踏んでいた。

 ただ、人を探すだけならば――。

 最初は道場のような家系なのだと予想をして、道場に向かったがそこの家系は木崎という名字だった。

「御劔って、あの御劔? 小僧、どの筋のもんだ、はっきり言え」

「ど、どの筋って?」

「御劔にまつわる奴は、毛色が決まっている。警察か、お上の繋がりか、誘拐犯か、化け物か――」

「化け物?」

「あいつは、この付近じゃとんでもねぇ程地位の高い御方で、化け物のように強い奴らに守って貰ってるって噂だ。俺ら平民は普通に関われない御方だよ」

 その理由は分かる――だって、天女の羽衣を託される方だ。

 ようは、その方だって天女だってことだろう……?

「この日本がよそに買われた国だってことは、田舎モンのお前でも知ってるな?」

「そ、そりゃ自分の国のことだし!」

 日本は、致命的借金をし、その肩代わりに国を売った。

 その日本というブランドを、そのままに扱ってくれるまま買い取ってくれる国があった。

 金持ちの土地、月からの使者だ。

 月を住めるぐらいに開発し、地球から月へ移り住んでいる人々が日本を買うと言い出したのだ。

 サングラスの男は、煙草を呑みながら、言葉を続ける。

「輝夜姫に、剣を教えてるっていう噂だ。それ以外で顔を見せないし、剣を教えてる時だって翁の仮面をしている」

「かぐや姫って……昔話の?」

「馬鹿、月に住む最高位にあられる貴族の姫さんをそう呼ぶんだ。木崎道場の若様の弟子だって噂だな、御劔は――そこまでは世間が知る情報だ、さて坊主、どの筋のもんだ? 御劔のことを知りたいってぇなると……真っ当なうちじゃ調べられないな、捕まる」

「そんな! どうしても必要なんです、お願いします!」

 それじゃわざわざ探偵事務所にきた意味がない!

 僕は、深く頭を下げて、大きな声で頼み込んだ。何回も何回も頭を下げて――。

 サングラスを外す音が聞こえる――。

「お前、名前は?」

「道明寺 寿です」

「道明寺……ああ、頸目に焼かれた村の道場は確か……」

 「もう顔をあげな」と言われ、僕は素直に顔をあげて、男の様子を窺う――男は深く深く何かを考え込んでいるようだった。

 僕の目を見つめると、深い溜息を判りやすい動作でついた。

「何か訳ありってみたいだな――これは益々うちじゃ扱えない。三百万用意できるか?」

「さ、三百万!?」

「それを払えるか、払える覚悟はあるか?」

 男はじっと睨むように見つめてきたので、僕は軍資金の百万円を懐から取り出す――。

「これしか……全財産はこれだけだ……」

「じゃあ寿、お前さん、何でもできるか? 御劔家の情報を得るためなら」

「……何でも、何でもします! 計測、雑用、掃除、何でも! 勉強は苦手だけど、これはやらなきゃいけないんだ! 僕にとって……僕の村にとって!」

 村が焼き討ちされた復讐を果たさなくてはならない。

 何より、兄は御劔家なら何とかしてくれると思って、僕を逃がしてくれたんだ。

 御劔家と道明寺家にどんな繋がりがあるか判らないけれど、っていうかこの人の話を聞いててすごく繋がりが薄く感じるけれど。

 それでも、これは果たさなければいけない、武士の勤めだ!

「命を賭けられるか?」

「命は賭けられない、僕は僕の使命を果たすために生きる!」

「――ッは、面白い。それなら、その全財産をよこしな。それから足りない分は、俺がお前に紹介する仕事ができたら、チャラにしてやる」

 サングラスの男はくしゃっとした笑みを浮かべて、一枚の写真を差し出す。

 写真に写っているのは、片腕、それから左胸に禁止マークのタトゥーが入った洒落た外国人。

 今依頼している探偵とは渋さの違うサングラスをかけていて、写真に気づいているのかカメラ目線でナカユビを立てている。

「隠し撮りでそれだ、参るよな」

「この人は――」

「不法入国者だ、この土地じゃ難しいことじゃあないんだ。ただ問題は……こいつの素性。一切合切謎なんだ、この男は。なのに平気で俺らが知らないお偉いさん方の弱みを握っていて、俺の事務所との取引が多くてな。この男の弱みを握ってこい」

「ど、どうやって!」

「次の取引が、実験体を進呈することなんだが――それで潜入してこい」

 なんか実験体って不穏な響きだと思うのは、僕の気のせいでしょうか?

「男の名前は、ライアー。言葉通り、ウソツキででたらめな野郎さ」

 僕は写真をそっと掴み、じっと睨み付ける――強気な蒼の瞳。不遜な態度の証であるナカユビ起立。

 こいつが――こいつが、御劔家に繋げる為の存在だっていうなら、潜入捜査でも何でもしてやる!


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