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白銀の魔法使いの愛弟子  作者: 緑青海雫
第1章 ある少年と薔薇の話し
7/23

ある薔薇と魔物と。

残酷描写ありです〜。

苦手な方は、読み飛ばして下さいね。


 屋敷に戻り、クラトスとチャロがシャルロットの私室に入る。


 ベットの上で、眼をつむり静かに横たわるシャルロットは、わずかに淡く発光していた。


「そろそろ、はじまりますね…」

 そっと、ベットの側にあった椅子に腰かけクラトスは語りかけた。

 ゆっくりと瞼を持ち上げて、シャルロットはクラトスを見つめた。

「…クラトス様…、あの人が、いましたの…?」

 口を開けるのも億劫なようで、辛そうにモゴモゴとしゃべった。

 クラトスは頷く。

「薔薇の姫、アルバさんは今、あなたの為に思い出の丘で魔物と相対しています。」

 ハッと、眼を見開くと、薔薇姫の眼から涙がこぼれた。

「旦那、さまは…、あそこに、ずっと、いらした、のね…」

 ぼろぼろと涙がこぼれる。

 シャルロットは、すでに身体が動かなくなっていた為、涙が拭けず、ただポロポロと止めどなく溢れる涙を零していた。

 その度に、チャロは持っていたハンカチで何度も目元を押さえて、シャルロットの涙を拭ってやった。

「…あぁ…! …あぁっ! ずっと、ずっとっ…!」

 チャロは、その様子につられて涙が溢れてきたが、ぐっと堪えた。

「息子さんの成長が、とても楽しみだったとおっしゃっていましたよ。」

 振るえる声でチャロがそう伝えると、シャルロットは、いよいよ嗚咽交じりに涙を流した。

「薔薇の姫、アルバさんは亡くなってから精霊に生まれ変わっていました。

 貴女が羽化したあと、お二人は必ず会う事が出来ます。

 ですから、変態する際はとても辛いかもしれませんが、どうぞ頑張ってください。」

 クラトスが呼びかけると、弱々しくもしっかりした声で「…はい…!」と返事が返ってきた。


 ぴしりっ! とひと際大きな音が室内に響いた。


「うぐっ!! あ、ぐぅぅっ!!」と、シャルロットが悲鳴をあげる。


「はじまりましたね…、チャロ君、こっちへ。」

「はい、師匠。」

 クラトスの背後からシャルロットを見守る。

 チャロの心臓が嫌な音を立てて、早鐘を打つ。

 だんだん、シャルロットの悲鳴が高く激しくなる。その様が、恐ろしかった。

 その度に、ぴしっ!ぴしっ! と何かにひびが入るような音が室内に響き渡る。

「…師匠…」

 声が振るえる。

 怖くなって、ぎゅっと、クラトスの右側の背中にしがみつく。

「…内側から魔力が溢れて、身体が張り裂けるのです…。緩和する術はありません。

 張り裂け、その隙間から膨張した魔力が繭になって全身を包むのです。

 僕たちは、見守る事しか…そばに居てあげる事しか出来ないのですよ…。」

 白い寝台が、血の赤に染まり始める。

 ポチャン、ポチャン…と寝台の下の絨毯に、血が滴り落ちた。

 ひぃっ! とチャロは小さく悲鳴を上げた。

 あまりの恐ろしさに、ガタガタと体が震える。

 目の前の光景が恐ろしくて、目をつぶる。

 シャルロットの悲鳴が一段と激しさを増し、チャロは、より一層クラトスにしがみつく。

 クラトスが、チャロの手を取り引き寄せ膝に乗せる。

 腕の中に抱きしめて、落ち着かせるように頭を何度もなぜた。


「僕たちは、治癒術師です。怖くても、目を背けてはいけませんよ。

 チャロ君、どうか恐れてばかりではなく、彼女を応援するのです。」

 クラトスの言葉に、チャロは胸の前で握り合わせた手に、ギュッと力を込めた。

「…はい…っ、し、しょう…!」

「怖くて、こわくて、一番痛くて心細いのは彼女です…。」

「…っ! ぁ゛い…っ!」

 泣きながら返事をすると、チャロは目を開けた。

 震えながらも、シャルロットを見つめた。

 もがき苦しむ彼女を見守る。

 泣き叫ぶ彼女が、怖い、こわい…こわい…!

 きっと、とても痛いに違いない…っ、こわい…っ!

 恐ろしくて涙がボロボロと溢れて止まらないが、今度は目を背けなかった。

「がんばって…! シャルロットさま…っ、がんばれっ…!

 アルバさんが、待ってます…! がんばれっ…!」

 小さな声で、祈るようにチャロが呼びかける。


 しばらくして、シャルロットから溢れていた淡い光が、カッ! ひと際強く光った。

 光が治まるとともに、悲鳴が止まる。

 まるで糸が切れたように、ぐったりしていた。

 おびただしい、血に染まる寝台の上で力なく横たわるシャルロットから、一筋の光る糸が持ち上がる。それを合図に、しゅるしゅると光る糸が、シャルロットを取り巻くように覆っていく。

「繭の形成が始まりましたね。

 さぁ、チャロ君。ここからが本番ですよ。」

 ぎゅーっと、チャロを元気づけるように一度だけ強く抱きしめると、そっと立ち上がらせた。

 クラトスが続いて立ち上がると、手のひらに杖を出現させた。

 そのまま、カンッ! と床に振り下ろす。

 ぶわっ! と、魔法陣から風が吹き、シャルロットを護るように魔法陣が展開される。

「よし、防御結界と場所の固定保存は良いね!

 これで、なにがあっても、彼女の羽化は邪魔されないよ~。」

 クラトスがニッコリと笑いかけると、ホッとしたようにチャロもはにかむ。

「はい、師匠…。

 これから、魔物狩りですね?」

「うん、僕たちの出番だね~。」

「はい! 怖いけど…がんばってやっつけます!」

 まだ青い顔でチャロがニコッと笑うと、クラトスがよしよしと頭をなぜた。

「今回の魔物、ヴォラックスは土属性。風の魔法を使って、戦ってみようか?」

「風のつるぎとかですね! やってみます!」

 チャロは、壁際に立てかけていた箒を持った。

 クラトスと共に素早く、屋敷を後にした。

 外に出ると、風がざわざわと騒がしかった。

 アルバがいる丘の方からは、バチィン!バチィンッ!と、何かがぶつかり合うけたたましい音が鳴り響いていた。






―――――――――――――――――――――――





 灰色がかった赤褐色の体毛に包まれた魔物、それがヴォラックスであった。


 蜘蛛のように長い脚は八脚。

 身体は細い蜂のような姿で、透明で鋭い羽が生えている。

 目は2対で4つあり、等間隔についている。

 頭から生える触角は長く太く、まるで蚕のようにもっさりとしていた。

 体格は大きく、三階建の家一軒と変わらない巨体であった。

 口は大きく裂け、巨大な顎は鋸の歯のようにビッシリと鋭く並んでいる。伸縮自在のこの顎で、どんな大きさの巨木でも岩でも何でも砕いて食べてしまうのだ。

 鋭い顎や牙に毒はないが、故に破壊力が凄まじい。




 ヴォラックスは、興奮していた。

 目の前に、今までに出逢った事がないほどの高密度の魔力を纏う『エサ』がある。


 ヴォラックスは、歓喜していた。

 この周辺にいる魔物の個体で、自分より強いモノはいない。

 独り占めできる『エサ』。

 これを食べれば、さらに数倍も強くなれる。


 それなのに、ヴォラックスは、苛立っていた。

 目の前に『エサ』があるのに、見えない何かに阻まれて『エサ』にたどり着けない。

 わずらわしさに苛立ちが募る。暴れまわって周りを破壊する。

 ぶち当たり、脚を打ち降ろし叩いても、ビクともしない。

 さらに苛立ちが募る。顎を引き伸ばして噛みつくが、跳ね返される。


 『エサ』が身じろぎもせず、じっとこちらをにらんでいる。


 腹立たしい! 腹立たしい! 食い散らかしてやる!!


 力任せに攻撃を続ける。

 やはりビクともしない。


 グギャアァァァァァァァッ!!


 ヴォラックスは、怒りに身を任せて叫んだ。






 しかし、刹那―――、ぐらりと視界が傾いた。















次回、チャロくんTUEEEの巻!


此処まで読んでくださり、ありがとうございます〜!

とても拙い文章ですが、楽しんで頂けたら幸いです。

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