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白銀の魔法使いの愛弟子  作者: 緑青海雫
第1章 ある少年と薔薇の話し
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ある精霊の守護。

 チャロが屋敷に戻り、クラトスにこれまでの話しを詳しく報告すると、瞬間、思考を一巡し「分かった」と一言言って、アルバのいる丘へと足を向けた。


 チャロがそばにいれば、クラトスにもアルバの姿が見えた。

 いつもは、精霊を見るための魔法を自分に施すが、今日はチャロがいるので魔力を節約した。


 そしてアルバと会うと、アルバが突然跪いて、クラトスに涙ながらに、何度も何度も感謝の言葉を言い連ねた。

「妻を診て下さり、本当にありがとうございます!」

 クラトスは微笑んで謝辞を受け取ると、アルバを見分し納得したように頷いた。


「やはり貴方は、どうやら精霊になってしまったようですね。

 奥様も稀な運命と体質をお持ちだが、貴方も稀な運命をお持ちの様だ。」


 曰く、“聖域”で亡くなった際、魂が“聖域”に取り組まれてしまったようだった。また、亡骸が聖域である大地に屠られたことにより、より強い絆で結ばれてしまったこと。


 曰く、この谷を愛するあまり、大地との契約がなされ、すでに、此処一体の主として谷を守護するという役割が決まってしまっているとのこと。これは、神々に異議申し立てしなければ破棄できず、また、そのようなに意見を伝えられるような力を得るためには、何百年も力を貯めなければならないということ。

 つまり、現状での役割の破棄は、完全に不可能であった。


『…私は、永遠にこの谷から出られないのですね…』


 アルバが真っ青な顔で呟くと、気の毒そうにクラトスはうつむいた。


「しかし、悪いことばかりではありません。」


 シャルロットの半精霊化が完了すれば、精霊であるアルバともう一度、夫婦に成れるという事。


 半精霊であっても精霊と言うくくりに変わりはないので、当たり前ではあるが、同じ種族としてお互いを目視できるし、言葉も交わせられる。もちろん触れ合うこともできる。

 “番人”である精霊が、伴侶を迎えれば“聖域”の負担を分担する事が出来、今よりも行動範囲がかなり広がるとのこと。


 それを聞いて、アルバは表情を歪めた。


『あぁ! なんということだ! 白銀の君…!

 あなたこそ、神々が私に与えて下さった奇跡です!』


 そう言って、アルバは声をあげて涙をこぼした。

 クラトスは、苦笑いした。

「そんな大層なモノではございません。どうぞお顔を上げて下さい。

 それに、まず今夜を乗り切らなくてはいけませんから…。」

『そう、でした…。白銀の君、どうぞ私にも手伝わせてください。

 出来ることは少ないと思いますが、なんでもいいのです!

 どうぞ、私にも妻を助ける手伝いをさせてください! 』

 かすれた声で、アルバは訴えた。

 アルバの必死な懇願に、チャロはこれまでの不憫さと、アルバの妻への愛情に感動を覚え「師匠…」と、うるんだ上目使いでクラトスを見つめた。続いて「ぼくからもお願いします…」と、クラトスの袖の端をクイックイッと軽く引っ張った。


 それを見て、チャロの可愛さにクラトスが愕然とする。

 頭の中では「わぁぁぁっ! チャロ君っ、ぬぁにそるぇぇぇっ! うる眼がまじ可愛すぎるぅぅぅぉぉぉーっ!」と、悶えて叫んでいた。必死に鼻血を我慢する。


「ぅぐっ…! ち、チャロ君…上目使いと袖引きはズルいですよぉ…!?」

 若干、語尾が振るえた。

 もし此処に誰もいなかったら、間違いなく愛弟子を抱きしめて頬ずりしていた。


 クラトスの座右の銘は【 可愛いは、正義! 可愛さは、平和の源! 】であった。


「ふぇ…? え? あ…、す、すみません…?」

 首をかしげながら、わけが分からずもチャロは謝った。

 深呼吸して落ち着きを取り戻し、クラトスはアルバに視線を戻した。

「う~ん、そうですね…、いつもはおねだりしないチャロ君も、こう言ってますが…。非常に危険ですので、出来ればアルバさんにかかわって欲しくないのが本音です…」

 ふぅ、と困ったように溜め息を付く。

『大丈夫です! 本当になんでもやりますからっ、どうか手伝わせて下さい!

 妻をっ、妻を護りたいのです! もう、ずっと遠くから見ているだけというのは嫌なんです!』

 じっと、クラトスがアルバを見つめた。

 アルバは眼をそらさず、必死にクラトスの言葉を待った。

「…はぁ…、分かりました…。

 それでは…、本当に危険ですが、貴方に囮になっていただきましょう…。」


 そういうと、カンっ! と、持っていた杖を大地に打ち下ろした。


 瞬間、地面に巨大な魔法陣が出現した。


 複雑な模様の魔法陣が、クラトスの足元からアルバとチャロを巻き込み大きく広がり丘を包み、青白く光るとくるくると回りだす。

『これ、はっ!?』と叫んで、アルバは驚きに目を見張る。


 無詠唱の魔法を、初めて見た。

 無詠唱での魔法陣形成など、尋常ではなかった。


 一般の魔法使いであれば、長い詠唱を唱えつつ、1m半を超える長い杖を用いて魔法陣その場に“描く”のだ。


 クラトスは、どちらも省略していた。


 こんなこと、普通の…いや、どんなに天才でも“人間”には出来ない。

 膨大な魔力と蓄積された豊富で深い知識、素早い演算能力と鋭い判断力。そして恐ろしく研鑽された技術がなければ、こんな離れ業は出来ない。まさに、神がかった方法といえる。

 アルバは、呆然と魔法陣を見下ろした。


「この魔法は、防御結界と増幅具現の魔法です。

 防御結界は、アルバさんを護るよう展開しました。どんな攻撃にも耐えるでしょう。

 そして、増幅具現の魔法によって“聖域”の濃厚な魔力がアルバさんを包んでいます。

 …大地に留まる精霊の上、まるで熟した果実のように濃厚な魔力を纏う貴方は、薔薇姫よりも魔物にとって一番のご馳走に見えるでしょう。」


 ぶるっ! と、アルバは震えた。これが“賢者”か! と、愕然し驚嘆した。

 目の前で起こっている奇跡に、興奮と感動とこれから起こる恐怖に身体が震えた。


「さぁ、アルバさん。 一晩限りの魔物退治です。

 お姫様を護りましょう。」


 にっこりと笑うクラトスに、震えながらもアルバは大きくうなずいた。










読んでくださり、ありがとうございます。

囮役は、チャロ君がするはずでした。

そのための御守りを師匠は与えていましたが…。


次回は、ちょっと残酷な表現がありますので、お気をつけてお読みください。苦手な方は…スミマセンが読み飛ばしてください。

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