星を抱く猫
チャロは、大きな欠伸をした。
グッと体を伸ばすと、あちこちで軋んだ音がした。
先程までずっと、細やかな作業に没頭していたからだ。
いま、ベットに座っていたリィルステラはいない。
その代わりチャロの部屋には、大きな魔方陣の上で浮いてる暖かな魔水の球体の中に、丸まって眠っている少年がいた。
自立型魔導人形の身体を得たリィルステラである。
身体と魂が馴染むまで、このポーションは消えない。
そう言う構成で組まれた魔方陣は、淡く光っていた。
チャロは、クローゼットの棚から、丸襟の白いシャツと緑色の半ズボンを取り出すと、ベットの上にソッと置く。
たぶん、そろそろ目が覚めるはず。
チャロは、ホッと溜め息をついた。
「チャロくん、お疲れ様。」
「きゃあっ!?」
真後ろから声を掛けられて、チャロは飛び上がって驚いた。
振り向くと、出窓の縁に腰掛けたクラトスがいた。
「し、師匠!? えっ!? いつから其処に!? 」
真っ赤になって慌てるチャロを見て、クスクスとクラトスが笑った。
「二人が守護の誓いを立てたあたりから。」
「 …っ!!?
ななな、なんで声をかけてくれなかったんですかぁぁぁぁぁ~…!」
チャロは、更に真っ赤になる。
クラトスはきっと、姿消しの魔法を使っていたに違いないとチャロは勘ぐった。
「ふふふ! ゴメンね、チャロくん。
なんせ折角、素敵な友達が出来た所だったから水を差したくなくてね。
使い魔契約も無事出来たみたいで、安心したよ。
ほら、むくれてないで、こっちにおいで? 」
「むむむ…」
チャロは恥ずかしいやら腹が立つやら、気遣いに嬉しくなってしまったりと拗ねたような気持ちになって、腕を伸ばすクラトスの方へおずおずと近付く。
くいっと腕を引かれてあっという間に膝に乗せられると、ぎゅっと抱き締められた。
クラトスの優しい香りが鼻腔をくすぐった。
その香りに何とも言えない安堵感を得て、チャロは身体の力を全て脱いてクラトスに寄りかかった。
「自立型魔導人形の出来栄えは、今期最高だね。
本当に、大変良く出来ました。」
よしよしと頭を撫でられ、ふわりと微笑まれると、チャロは誉められた嬉しさに破顔した。
「ありがとうございます…。」
照れてれと破顔し、下から見上げているチャロの可愛らしさに、クラトスは思わず額にキスを落とした。
「疲れているだろう?
今日は僕がディオくんと一緒に、エイラの所でパンを買ってくるから、チャロくんはゆっくりしてて。
スープは昨日のを暖めるで構わないから。」
クラトスの心遣いに、チャロはじぃんとした。
「はい、師匠。ありがとうございます。
まだ、ベーコンと野菜とハーブが有るので、簡単におかずを作っておきます。」
「ふふふ、チャロくんは本当に頑張り屋さんだね。
時々、サボるのも大事だよ? 」
困ったように眉尻を下げて微笑むクラトスに、チャロは頷きながらモジモジとした。
「で、でも…師匠に元気で居て欲しいし、美味しいって言ってくれるのが嬉しくて、その…」
きゅっと、クラトスの胸の辺りの服を握りながら上を向くと、でれでれと相好を崩したクラトスがいた。
チャロは、恥ずかしいやら嬉しいやらで、頬に昇る熱を隠すようにクラトスの胸に顔を擦り付けてしがみつく。
(わわわわわっ!
ちゃ、チャロくんがすごい勢いでデレてる!?
なんて珍しいっ!! ああああああぁぁぁっ!!
まことに至福ですよっ!! たまらんっ!! )
クラトスはいま、間違いなく楽園にいると確信したのだった。
ぎゅうっと抱き締めると、遠慮がちにチャロが抱き締め返してくれた。
じゃれあいに慣れたのか、日々、少しずつ甘えてくれるようになって、クラトスは満面の笑みをこぼすのだった。
**********
クラトスがディオティマを連れて町へ降りていった頃、ようやくリィルステラを保護していた魔水がリィルステラの身体へと溶け込み出した。
徐々に、吸い込まれて消えていく魔水。
それに伴って、床に張られていた魔方陣も徐々に光の粒子にって宙へと消えていく。
チャロは見守り続けた。
そして、完全に魔水と魔方陣が消える頃、床に横たわったリィルステラが目を醒ました。
ゆっくり持ち上がる瞼は重たげで、ラベンダー色の髪は濡れて顔に張り付いていた。
チャロは、準備していた大きなバスタオルをリィルステラに掛けて魔水を拭き取った。
パチパチと瞬きを繰り返すリィルステラは、ゆっくりと体を起こしてチャロへと視線を向けた。
「ちゃ、ちゃろ…?」
「おはよう、リィルステラ。
身体の具合は、どうかな? 」
「おはよう、チャロ…。
あ…、う、動くよ、手も足も、ちゃんと動くよっ!」
ひたりと、リィルステラは自分の頬を撫でた。
頬を撫でた、感触がある。
寒さも暑さも分かる。
空気の甘さも匂ってる。
聞こえる声が、音が鼓膜を震わせている。
チャロの愛らしい顔が、側に有るのも見えた。
朝に輝く世界が、窓の外に広がるのも視える!
手も足も身体の全てが思ったように動いた。
「あ、ありがとう…っ、ありがとう! チャロっ!!」
リィルステラは、咽び泣いてチャロにしがみついた。
偽りの身体で、人形としてでも、またこの世界の大地を踏み締められる。
その感動に、リィルステラは打ち奮えた。
「ふふふ! 良かったね、リィル!
あっ、そうそう!
リィルステラ、お誕生日おめでとう!」
ニッコリと微笑むチャロの言葉に、リィルステラは一瞬ポカンと口を開けていた。
言われた言葉の意味に思い至ると、泣き笑いの表情になった。
「~~~~っ!! チャロっ、チャロっ!!
だぁいすきっ!! 本当にありがとうっ!!
ぼくっ、君と、…ひぇっ、ひぇっ…ひえっくちょんっ!!ズビぃっ…」
「あ、寒かったかな??
大丈夫? リィル。
いつまでも裸じゃ寒いよね。
ぼくの服だけど、良かったら着てみて。」
はい、と服を渡されるとリィルステラは顔を真っ赤にした。
今更ながら、裸でチャロに抱き付いていたことに対して羞恥心が沸き上がったのだった。
服を受け取ると、勢い良くバッ!とバスタオルの前を重ね合わせて隠す。
チャロは苦笑して、リィルの頭を撫でた。
「ぼく、キッチンで朝食の用意をしてるから、着替え終わったらこっちに来てね。
そういえばリィルは、一人で着替えられるかな?」
「う、うん、大丈夫だよ!
何からなにまで本当にありがとう、チャロ。」
「うん、良いよ!
じゃあ、リィル、また後でね~。」
チャロは、そそくさと部屋を出るとキッチンへ向かった。
**********
確か、キャロットとレーズンの和え物が作れるはずと在庫を確認する。
案の定、氷室に材料が揃っていた。
キャロットとレーズンを出して下拵え。
ソルトとオリーブ油で和えると、ブラックペッパーで味を整える。
それから、ベーコンを人数分切ってボールに入れ置く。
キャロットとレーズンの和え物を作って味を馴染ませている間に庭へ出る。
ハーブ畑で、和え物に添えるパセリとサラダ用にチコリーとロケットの葉を摘んで、エプロンの裾を持ち上げた簡易籠へ入れていく。
ジンジャーを一株引き抜いて、土を払ってまたキッチンへ戻る。
チコリーとロケットは、適当な大きさに切ると、大きな木のサラダボウルに入れて野菜ドレッシングをかけた。
ローズウッドから切り出して作った、このサラダボウルに入れるととても美味しそうに見えるので、チャロは満足した。
次に土を落としたジンジャーを千切りにして、昨夜の肉団子スープに入れる。更に、セロリの葉と玉葱を細く切って固形のコンソメを1つ、鍋に放り込む。
この固形コンソメの基は、もともと軍事食品だったのだが、あまりの便利さに今では雑貨屋での取扱店が多く、一般家庭で根強い人気の元、普及している。
チャロも良く、これを使った。
ただ、少しだけ味が整わないので、仕上げに一摘まみの粗塩を入れる。
スープは、これで完成した。
チャロが鼻唄を歌いながら洗い物をしていると、リィルステラがおずおずとキッチンへ入ってきた。
「ちゃ、チャロ、着てみたよ! どうかなぁ…?」
生前より少しふっくらとした健康的な肌の色に、チャロは「おぉ~」と目を丸くした。
頬は薔薇色に染まり、肌は蜂蜜を溶かしたような色。
サラリと揺れる紫のラベンダー色の髪は、柔らかく肩口まで伸びていて、リィルステラの可愛らしい雰囲気を更に盛り立てている。
丸襟の白いシャツは、とても爽やかで。
襟元は、黒いリボンで品良く締めてあった。
緑の半ズボンから伸びる瑞々しい足は、やはり生前よりふっくらと太り、子供らしい。
そしてなにより、イキイキと好奇心を秘めた賢そうな金色の瞳が、キラキラと輝いていて綺麗だった。
「わぁっ! リィル、良く似合ってるね!
身体を動かしてみて、違和感とか不具合とかなかった?」
「うん、大丈夫みたいだよ。
チャロ、ありがとう。
ぼくも、なんか手伝うよ。」
「えっ、いいの? わぁ~い♪
それじゃあ、テーブルにこのお皿とあそこのカトラリーを並べて、四人分のお膳立てしてもらっても良いかな?」
「うん、分かった!」
「あ、リィル?」
「うん? なぁに?」
「たぶん、そろそろ二人が帰ってくるから…。」
「 っ!!?
あ、あわわわわっ! き、緊張するっ!
ななな、なんて言えば良いのかなっ!? 」
「ふふふ、大丈夫だよ。落ち着いて♪
まぁ、まずは "お帰りなさい" だよね~?」
「あ、あぁ、そうだよね、うん!
まず、お帰りなさいをして、あとは…あとは…?」
「クスクス…、なるようになるでしょ!」
「あぅ…、そうだよね! うわぁ~っ!
どうしよう!? わぁっ! むむむむむぅっ!」
真っ赤な顔のリィルを見て、チャロはコロコロと笑った。
(ふふふ、友人というより弟みたいだなぁ~…)
ごりごりと珈琲ミルで豆を砕きながら、うんうん唸ってお膳立てをするリィルを眺めて、チャロはほっこりとした。
リィルステラと手分けして食卓に和え物やサラダとスープを並べている内に、クラトスとディオティマが帰って来た。
ガチャリと玄関の扉が開く。
「ただいま戻りましたにゃっ!
おはようございます、麗しきチャロさま!
いやはや、大変素晴らしく良い香り、が…… 」
ビシリッと固まるディオティマに、チャロはふんわりと微笑んだ。
ディオティマの視点は、チャロの隣を凝視して動かなかった。
「おはよう、そしてお帰りなさい、ディオティマ殿。」
「ディー、おはよう。 おかえりなさい。」
少しだけ震えたリィルステラの声に、ディオティマの全身の毛が逆立ち、ビクリッと身体を大きく跳ねさせた。
「わ、我輩は…ゆ、夢の続きを、見ているにょでしょうか…?」
茫然と呟くディオティマの言葉に、リィルステラはふるふると首を降って泣きそうな顔で微笑んだ。
「ディー、大丈夫、これは現実だよ。
ねぇ、気付いていたかな?
ぼく、ずっとね…。
ずっとずっと、ディーと一緒に世界を旅してたんだよ?あの日からディーがずぅっと探してた旅の終着点は、きっと此処だったんだね。
だって、ほら、ぼくたち、また逢えたんだもの…っ!」
「ほん、とうに? ぼっ、ちゃま?」
リィルステラの言葉に、ディオティマは戦慄いた。
独りぼっちの旅路の過酷さと寂しさ。
誰にも言っていなかった終着点探し。
無理だと分かっていても捨てきれなかった望み。
ずっとずっと、切望していたリィルステラとの再会。
胸の毛皮に埋もれた紫水晶の欠片に手を当てると、リィルステラがコクりと頷いた。
そうしてディオティマの思考が、やっとこさ感情に追い付いてくる。
「我輩と、世界中を…旅して回っていたのですね…」
「そうだよ。ぼくは、生前に叶えられなかった夢をディーと一緒に、神霊になって叶えることが出来たんだよ。」
「ずっと…、ずっと…、側に居てくださったのか…!」
昂る気持ちに、ぶるりと身体を震わすとディオティマの視界が滲み出した。
「ディー。
これでまた、アフタヌーンティーが出きるね?」
リィルステラは、ポロポロと涙を溢した。
リィルステラもディオティマも、嬉しくて嬉しくて胸が一杯だった。
とうとう、ディオティマの瞳から、ボロリと大粒の涙が零れた。
「なんたる奇跡っ! なんたる廻り合わせ!
お逢いしたかったっ!!
ずっとずっと、お逢いしたかった!!
ぼ、坊っちゃま!! リィルステラ坊っちゃまっ!!」
バッと、両手を広げてディオティマはリィルステラに駆け寄った。
リィルステラも両膝を床に付けて、両手をめいいっぱいディオティマへと伸ばした。
「う、うわ"ああぁぁぁぁぁん!!
ディーっ!! ディーっ!! う、うぐっ!!
あ"いっ、会いだがったよ!!
うわああぁぁぁぁぁん!! 」
「わが、我輩も、あ、会いたかったですにゃっ!!
あぁ! 本当に、本当に坊っちゃまだ!!
身体がある! また抱き締められる!!
あぁっ! 神々に祝福をっ!! 世界中に祝福をっ!!」
「ぐずっ、ちゃ、チャロがね!
ぼ、ぼくの身体を造っでぐれてね"っ、ひぐっ!
ぼぐねっ! ぼぐっ!! …っひ、…うぐっ!!」
「ぼっぢゃまっ! ぼっぢゃまっ!!」
二人は、お互いを抱き締めあったまま、しばらく泣き続けた。
ぐぅっ、ぐうっと鼻を鳴らしながら、ディオティマは確かな幸せを噛み締めていた。
腕の中にある、小さな星の暖かさに胸を喜びで締め付けられながら。
ディオティマは、クラトスとチャロに出会えた幸福に感謝し、遠く天空城にいる女帝陛下へ報せを出そうと浮き足だった。
火がついたようになくリィルステラを抱き締めて、ディオティマは甘やかな幸福に酔いしれたのだった。
**********
チャロは、クラトスの側に寄って行く。
クラトスは、シーっと唇の前に人指し指を立ててから外へ出ようと合図した。
チャロは、ニッコリと微笑みながら頷き、あらかじめ準備していた珈琲と紅茶をトレーに乗せて外へ出た。
玄関脇に置いてあるベンチに腰掛けて、チャロとクラトスは、ほっこりとしてお茶をのみ始めた。
「二人とも、会えて良かったですね。」
「うん? そうだね、沢山の偶然が重なったからね。」
「……、師匠…?」
「うん? どうしたの、チャロくん?」
「えっと…、もし。
もしも、ぼくが居なくなったら…、ディオティマ殿みたく探したり待ち続けてくれますか?」
おずおずとチャロは、クラトスを仰ぎ見た。
その瞬間、チャロは質問したことに後悔をした。
今まで見たこともないような、険しくて恐ろしい形相のクラトスが其処にいた。
(なんて身の程知らずな質問をしたんだ!!)
ざぁっと、血の気が引いて身体が震えた。
じんわりと目頭が熱くなる。
「す、すみませんでしたっ!
い、いまのはき、聞かなかったことにし…っ」
ドンッと、クラトスがチャロの横の壁に手を付いてチャロに覆い被さった。
「許さないよ、チャロくん。」
驚くほど低い声に、チャロはビクリと身体を震わせてクラトスを見た。
怒らせてしまったと、チャロは震えた。
「し、ししょ、う…っ?!」
「記憶が戻ったの?」
「えっ!?
い、いえ…、記憶はまだ、戻って、ない、です…。」
「そう…、チャロくん、もっと自覚してよ?
チャロくんは、僕のモノなんだよ。
誰にもあげないし、どんなものでもチャロくんに傷なんてつけさせない。
もしもチャロくんが逃げ出そうとしても、そんなこと許さないし逃がさないから。何処に行っても探し出すし、何処へ居ても迎えに行くよ。
聞かなくても分かってると思ってた僕は、アプローチが足りてなかったのかな?
あぁ、それともチャロくんは、こんな僕が嫌いになったのかな?」
いつも、やんわりと感じていたクラトスの独占欲。
チャロは、それが弟子という所有物に対するものだと思っていた。
しかし、いま、目の前にいるクラトスの瞳を見て、紡がれるあからさまな言葉の激しさに、チャロの認識がぐらりと傾いだ。
獣のように飢えて、トロリとした熱を孕んだ瞳。
腕の中に閉じ込めようとする態勢。
そう言えば、いつも激しいと感じるスキンシップが、最近では頭や額や頬だけでなく、段々と首筋やうなじ、指先や口の端と口付けられる。
それが意味するのは…。
かぁぁぁっ、とチャロの全身は火がついたように熱くなった。
「し、師匠を、嫌いになったり、は、しませんっ!!」
精一杯、振り絞った声は引っくり返って震えていた。
心臓が早鐘を打って、煩い。
クラトスは、ひょいっとチャロを抱き上げると横抱きにして膝に乗せて抱き締めた。
「チャロくんは、わるい子だね。
僕のアプローチに、いっつも気付かないふりだもん。
あんまり焦らすなら、押し倒すよ?」
「えっ!? あ、えっ、そ、そのっ、ふぇっ!?」
チャロの思考が停止した。
耳の先まで真っ赤に染まったチャロを見て、クラトスは溜飲を下げた。
「ふふふ、チャロくん、真っ赤っかで可愛い!
意地悪してゴメンね。
僕がチャロくんのこと愛しているのは分かってもらえたみたいだから、今回はこれでいいや。
だけど、少しずつで良いから、僕の事も考えてね。」
「あ、あぃ…っ」
妖艶に、艶然と微笑むクラトスに、チャロは限界だった。
どうして、こうなったんだろうと堂々巡りの思考。
ぐらぐらと煮えたぎる頭に任せて意識を手放せば、闇の中にふわふわと落ちていく。
完全に意識を手放せす瞬間。
唇に、甘く暖かな柔らかいものが触れた気がした。
**********
「……、チャロくんは、酷い子だね。」
クラトスは、ポツリと呟いた。
ついつい、箍が外れてチャロに迫ってしまった。
ずっとずっと、探し求めて手に入れたこの子が、『もし』の話しでも居なくなったらと考えさせられて、気が狂いそうになるほどの焦燥感と苛立ちを覚えた。
意識のないチャロの頭を、サラサラと撫でる。
慎重に、距離を探りながらクラトスの存在に慣らしていたのに。
うっかりでも、随分と踏み切ったことをしてしまった。
クラトスは、ふぅ…と小さく溜め息をついた。
「……どうしたものかね……。」
空を仰げば、雲が高い。
呼吸をすれば、朝の空気に澄んだ森の香りが鼻腔をくすぐる。少し甘い秋の紅葉の香りだ。
チャロを抱き締め直すと、これからの事に頭を抱えたくなるクラトスなのであった。
あれ?
タグにヤンデレ、入れた方が良いのかな?
思ったよりクラトスの内面に余裕が有りませんでしたね。どうしたものかね……www
そして、いろいろとご都合主義でお送りしますリィルステラです。
次回、エピローグです。




