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白銀の魔法使いの愛弟子  作者: 緑青海雫
第2章 ある少年と猫の話し
13/23

星を持った猫

おぉ~……難産……。

明けましておめでとうございます!

え?遅いっすよね!!\(^p^)/

ごめんなさい~!(´;ω;`)

 


 キィ…パタン




 アトリエに着くと、チャロはそっと玄関の扉に身体を滑り込ませた。


「師匠…、只今、帰りました。」


 ドキドキしながら、思ったより小さな声で戻った挨拶をする。


「あっ、チャロ君!お帰りなさい。

 ご苦労様でした〜。」


 ニコッと、クラトスがはにかむ。

 クラトスは、どうやら窓辺の椅子に座って本を読んでいたようだった。

 チャロは、意を決してクラトスに猫を見せる。


「師匠…、あ、あの…実は、えっと…ね、猫を拾いました…っ!」


 気絶してぐったりとした猫の脇に手を入れ、師匠に見せるように前へ突き出す。

 ぶらぶらと力無く、猫の尻尾が振り子のように揺れた。

 相変わらず、少しだけ舌が出っ放しである。


「………猫?」

「…猫、です…。」


 ちょっと驚いた顔で、チャロの顔と猫へ視線を行ったり来たりしている。


「……これは…。…チャロ君…。

 この子は、何処で拾ったのかな?」

「……えっと…く、空中で、拾いました。」

「……えっ!?」

「うぅ~…、か、帰り道に箒で飛んでたら、上から降って来て…悲鳴をあげて助けを求めていたので、その…」

「……空から、落ちて来たの?」


 怪訝な顔だったクラトスが、チャロの話しを聞くに従って、徐々に表情が険しくなる。


「…はい、落ちて来ました。」


 ジッと、クラトスは猫を睨みつけている。いつも穏やかで優しい師匠が、珍しく怒っている事に、チャロは焦りと罪悪感を感じて泣きそうなになった。


「師匠…、その…勝手な事して、ごめんなさい…」


 あっ、やばい…視界が滲んで鼻がぐずぐず言い出した。


 チャロは、涙が零れないよう、ギュッと唇を噛み締めた。クラトスは、そんなチャロを見て慌てた。


「あわわっ!泣かないで、チャロ君!

 ち、違うよっ!

 チャロ君に怒っているワケじゃないからね!

 お、落ち着いてぇっ!!」


 その言葉にホッとして、チャロは情け無い顔をしたまま、ジィッとクラトスを見つめた。


「ぼくの事、怒ってないなら…師匠は、なぜそんなに、険しいお顔をされてたんですか?」


 はぁ…と、クラトスは溜め息をつきながら苦笑いした。


「…チャロ君、此処が天空に浮かぶ島だという事は、分かっているよね?」


 こくん、とチャロは頷いた。


「島の空には、侵入者妨害の為の結界が張ってあるのは、以前に教えたね?」

「はい、師匠。

 "学問や技術、人材が最高峰である天空の城は、世界の中の憧れであり垂涎の的。

 その島に入れるものは限られており、その島に住む者は、女帝の厳しい審査通らなければ許可を得られない。

 だからこそ、島全体に、許可した者以外は不可侵の結界が張られており、未だに、如何なる魔法使いにも結界の解明、解除、盗作さえも行えていない"…でしたよね?」


 こてりと、首を傾けてクラトスへ模範的な答えを返す。

 クラトスは、満足げにニッコリと微笑んだ。


「そう。でも、この猫は"不可侵の空から降ってきた・・・・・・・・"。

 つまり、これが何を意味するところか分かるね?チャロ君。」


 ハッとして、チャロは前につき出したままの猫の背中を見詰めた。

 ぐったりと力無く気絶している不審猫。

 万能結界の張ってあったはずの空から落ちてきた異物。

 持ち物は、何もない。


 チャロは、ごくりと息をのんだ。

 額から冷や汗が垂れる。

 自分は、何てものを拾ってしまったのか…。

 はたして、本当に不法入国者なのかと、(いぶか)しむ。


「チャロくん、取り敢えずその不審猫さんを起こして事情を聞いてみようか~?」


 そう言うと、クラトスは、猫の頬に手を伸ばした。



 ぐにぃ~…



 両の頬をつまんで、ぐにぐにと左右に伸ばす。

 その度に、尻尾がふぁさふぁさと左右に揺れた。

 だがしかし、猫はまだ起きない。


「し、師匠…! その起こし方は、なんというか、理不尽な気もしなくもないのですが…」


 猫の尻尾が、ふぁさふぁさと左右に揺れる。

 クラトスはニコニコしながら、猫の頬を左右に伸ばす。


「大丈夫、大丈夫~! 猫~、起きろ猫~!

 起きなきゃその髭、ちょんぎるぞ~!」


 あはは~、とにこやかに笑うクラトスを見て、チャロの頬がひきつる。


「師匠、それは、可哀想です…」

「大丈夫、大丈夫~! ほら猫~、切っちゃうぞ~?」


 パッと猫の頬から手を離すと、何処からともなく出したハサミを構えて、シャキンッシャキンッと打ち鳴らす。


 瞬間、ビクッっっと猫が震えて目を覚ました。


「にゃ、にゃにゃにゃっ!?

 すこぶる悪寒が走ったにゃっ!? にゃんだっ!?」

「なんだ~…、起きちゃったのかぁ~…。」


 クラトスが、心底ガッカリした声を出す。

 そんなクラトスの悪ふざけにチャロは「あはは…」と、渇いた笑いをした。


「こ、ここはどこにゃ!?

  ま、まさかっ、我輩は、死んだにょかっ!?」

「い、いえっ! 死んでなんかいませんよっ!」


 バタバタと暴れだす猫にチャロの握力が耐えられず、慌てて落としそうになりながら猫を床に降ろした。


 床に着地すると、猫はブルブルと体を揺すって体毛を震わせた。おもむろに、顔を前足で擦ったり毛繕いしたりと、気持ちを落ち着けようと振る舞った。


「いやはや、恐ろしい目にあったにゃ!

 どうやら、貴女(あにゃた)に助けて頂いたようで…。」


 そう言いながら、背中を反らせてグッと背伸びをすると、猫はチャロに視線を移した。

 途端、興奮したようで、バッと毛を逆立て体が膨らんだ。


「こ、これは麗しいお姫様っ!?

 いや、まさか彼の物語の漆黒の天使かにゃっ!?

 おぉ…、にゃんたる眼福! 」


 キラキラと目を輝かせる猫に、チャロは苦笑いした。


「…ぼくは、男です…。」

「………っ!!??」


 猫は目と口を此でもかといわんばかりに開いて、両手を上に上げて驚きを体現した。


「 にゃ、にゃんとっ!? はっ!?

 やはり漆黒の天使かにゃっ!?

 天使には、性別は(にゃ)いと聞く…っ!

 いやしかし、失礼を致しました…。

 我輩を助けて頂いたようで、誠に感謝しております。

 この恩は、必ず身をもってお返し申し上げるにゃ!」

「…はぁ…、別にお気になさらず。」

「いえっ!

 我輩は、騎士の系譜たる由緒正しき星猫ほしねこっ!!

 礼儀忠節、折り目正しく生きるべしが信条にゃ!!」

「…"星猫"!? 君は、"チシャ猫"の一族か!」


 ハッとして、クラトスがポーンと手を打った。

 猫が、エッヘンともふもふの胸を張った。


「師匠、"星猫"と"チシャ猫"とはなんでしょう?

 不審猫では無いのですか?」

「あれ? チャロ君は、猫獣人の一族にあったことがなかったっけ? たしか"チシャねk"…」

「にゃにゃっ!? にゃんとっ!?

 我輩の一族をご存知にゃいとは、残念至極っ!!」


 クラトスの言葉をぶった切って、猫は嘆きながらチャロに駆け寄って足にすがった。

 クラトスのこめかみが、『ひくり…』と青筋が立ってひきつった。


「我輩たち一族は、"智者猫(チシャねこ)"という種族にゃのです。決して、其処らにいる猫とは全く進化の仮定が違うにょです!!

 この世界に居る"智者猫一族"とは、基本的に二足歩行。

 また知能指数も高く、にゃかには荒事に精通している者もおりますにゃ。そして星ねk…」


 クラトスは、猫の首を掴むと強引にもそのまま持ち上げた。

 氷の様に冷ややかなジットリとした目線を猫に送ると、『さぁー…』と青くなって視線を左右にさ迷わせた。


「…馴れ馴れしく、チャロ君に触らないで。」

「ひっ! か、畏まりましたっ!!

 御無礼を御許しくださいぃぃぃぃっ!!」

「…次に許可なく触ったら、楽器の皮にしてやる…」

「ぅひいぃぃぃぃぃっ!! お、御許しをぉぉぉ!」


 クラトスが手を離すと、猫は全身の毛を逆立てて床に着地し、挺身抵当、クラトスに土下座して謝った。


「師匠、あんまり苛めないで…?」


 クラトスの服の端を『クイックイッ』と引っ張りながら、チャロは困り顔で師匠を見上げた。


「…………っ!!

(う、上目遣いと服クイッのダブルコンボっ!!

 かわゆいっ!! うはぁ~っ、たまらん!!)」


 クラトスは、あまりの衝撃に無表情になった。

 そのまま、土下座して震える猫を見やる。

 チラ見してきた猫と目が合うと、猫があからさまに『ビクッ』と体を揺らした。


「……猫くん、続きを丁寧に説明してくれるかな?」

「…っ!? は、はぃにゃあぁぁっ! 説明しますにゃっ!」


 その場で、目にも止まらぬ速さで立ち上がり『ビシッ!』と敬礼すると、チャロに膝まついた。


「猫型獣人と呼ばれる二足歩行の我ら"智者猫一族"。

 その大部分は、知能指数の高さに世界でも重宝されておりましたが……、ある大事件により地上では生き辛くなり、ここ『天空の島』の女帝陛下に保護されて引き上げられましたにゃ。

 それからというもの、ラピュタ島に唯一ある『イルミンスール図書館』にて、様々なお役目を頂きましたにゃ。」


「イルミンスール図書館?」


 首を傾げながらクラトスに視線を向けると、にっこりと微笑まれた。


「前に一度、チャロ君に御使いを頼んだことがあるよ~?」

「……あっ!?

 しましま模様の猫の司書さんがいっぱい居た…!」

「そうそう、彼等が智者猫一族だね。」

「なるほど~、そうだったのですか。」


 視線を猫に戻すと、えっへん!とひとつ咳払いして、また説明を始めた。


「智者の一族の中でも極一部に、武道に精通し騎士道を極めた一族がおりましたにゃ。

 彼の一族は生涯に唯一の主を定め、その人生が幕を退くまで、その武力と騎士道を持ってあるじに"名声"と"力"と"幸福"を『約束する事』が命題。

 彼等は総じて、肉球が星の形をしている事から、『星猫』と呼ばれるようににゃったのです。


 星猫の一族は、『唯一無二の主』を探す事が存在意義。

 女帝陛下は、そんな我等を理解してくださり、世界中を旅する事を御許しににゃられました。

 代わりに、世界中のはなしや噂、あらゆる貴重で希少な様々な書物を集めて図書館に納める任務をお言いつけあそばされました。

 それが、『語り集め部(かたりあつめべ)』の創立でした。

 また、外界へのお役目が無い期間中は、イルミンスール図書館を守護することを仰せつかっておりますにゃん。


 つまり、長くにゃりましたが、我等、『星猫』はイルミンスール図書館『広報課語り集め部』であり、イルミンスール図書館の『騎士』なのです。

 お分かりいただけましたかにゃん?」


 チャロは、長い説明に『はぁ~…』と溜め息を付きながら、納得したように首肯した。


「島の住人だったから、許可証もなく空から入ってこれたんだね?

 あれ? でもなんで空から……?」


「それは……、我輩を送り届けてくれたドラゴンバイク便が、三キロ先に発情期のドラゴンの雌をみつけてしまって…我輩を放り投げて翔んでいってしまったのですにゃ…。」

「うわぁ……凄い災難……」

「にゃので、貴女には本当に感謝しても足りないくらいにゃのです!

 本当に本当にっ! 助けてくださってありがとうございました!

 お礼に、しばらくの間、貴女あにゃた様にお仕えさせて頂けないでしょうか!!」


「えっ!?」


 チャロはびっくりして、チラリとクラトスを仰ぎ見た。


「んん~…、いいよ?」

「「ええっ!?」」


 あっさりと許可を出すクラトスに、チャロと猫は驚きの声をあげた。


「チャロ君に、常々、使い魔ファミリアが欲しいなぁ~と思ってたんだよね~。

 しばらくは、代用ということで、猫くん。

 仮召し使いファムルスとして、チャロ君を頼んだよ~?」

「えっ!? ……なんとも豪華な代用ですね…。」

「う、嬉しいですにゃっ!!

 仮とはいえ、頑張って力の限りお使い致しますにゃ!

 こんなにも麗しい姫君にお使い出来るとは騎士の誉れ! 騎士冥利につきますにゃっ!!

 どうぞ、宜しくお願い致しますにゃぁぁぁ~!」


 チャロの前で、正式に片膝を付いて忠節を誓う形を取ると、キラキラしたマリッジブルーの瞳に歓びと誇りを乗せた視線をチャロに向けた。


 チャロは、苦笑しながら。


「だから、ぼくは男です…。

 はぁ~、もぉ…まぁ、師匠が良いというなら…」


 と、右手を猫に出した。


「宜しくお願いします、猫くん。

 ぼくは、シャロン。師匠たちは、チャロと呼びます。

 魔法使いの弟子です。」


「なんとっ! 魔法使いのお弟子様とは、賢そうなお顔立ちな訳ですにゃ!

 あっと、申し遅れましてそうろう!

 我輩は、ディオ。

 ディオティマ・スティフェルと申します。

 誇り高き星猫一族が筆頭、長靴家スティフェルの直系がひとりであります。

 どうぞ、良しなに!」



 真っ黒な髭をそよがせて、ディオは、誇らしげに名乗りを上げたのだった。




たいっへん、お待たせ致しました!!

読んでくださり、ありがとうございました。

ストックが無いので中々に、難産で……申し訳ないです~!

やっと、猫の名前が出ました!

チャロ君の相棒になる……予定なのですが、どうなるかな?

まて!次回っ!!

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