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白銀の魔法使いの愛弟子  作者: 緑青海雫
第2章 ある少年と猫の話し
12/23

空から落ちた猫

さてさて!

新章に突入します!

拙い文では御座いますが、楽しんでくだされば幸いです。

 



 チャロは、途方に暮れていた。


 空に浮かぶ箒に跨ったチャロの膝の上、ぐったりとした猫が居た。


「し、師匠…空からニャンコが…」


 思わず、ぼそりと呟くが、周りには誰も居ずツッコミも不在であった。


 どうしてこうなったのか、少し遠い目をして夕暮れに沈む、赤い太陽を見つめた。




 ___________



 今日は、とても天気が良い。

 昼頃、クラトスに頼まれ、隣街の薬草を取り扱ってる薬屋へお使いへ出掛けた。

 無事に頼まれた物を購入し、その帰り道。

 ポカポカとした秋晴れ。

 そんな日に、箒で空を飛んでいた。

 風に乗る甘い香りは、金木犀。

 それから、夏に蓄えた栄養たっぷりの木の葉が落ちて、大地に降り積もった香り。


 すでに、初冬と言っても良いかもしれない。

 そんな気配が冷たい風に漂ってる。


 時は15時を過ぎた頃。


 西に傾く太陽が柔らかく、金色を帯び始めている。

 それが少し切なさを伴うのは何故か。

 降り注ぐ太陽の優しさに、きっと遠い日の郷愁への懐かしさを感じるのかも知れない。


 チャロは、この季節が好きだ。

 なにより、ご飯が美味しくなる。

 薬屋さんに、とても立派なカボチャを頂いたから、今夜はカボチャのスープも良い。

 あぁ、でも挽き肉があったからカボチャのコロッケも食べたいな。

 パン粉は無いけど、昨日の朝の食パンを砕こうか…?

 ふふふ、とチャロは小さな幸せを噛み締め、心底嬉しそうに笑った。


 なんにしても、帰れば師匠が満面の笑みで出迎えてくれる。

 ご飯を作れば、美味しいと言って笑いながら食べてくれる。

 毎日が、本当に充実しているのだ。

 クラトスの顔を思い浮かべると、早く家に帰りたくなる。

 チャロは、少し箒のスピードを上げた。


 山林を見下ろす。

 地平線にチャロの住む街が見えた。

 夕暮れに照らされた白い街が、赤く燃える様で美しい。

 あと、もう少しだなぁ…、とチャロは気持ちが逸る。

 山林を抜け、草原に入った。


 その時だった。


 ふと、チャロの頭に、何か大きな影が陰る。

 視界が陰った事に驚いて、慌てて頭上を見上げる。


「うにゃあぁぁぁぁ〜っ!?

 た、助けてくにゃさぁぁぁいぃぃぃ!!」


 チャロはギョッとした。


 猫が降って来たのだ。


 尻尾が逆立ち、ヒゲというヒゲが、全身の毛という毛が逆立ち膨張してる。

 それが、落ちるスピードに寄って風にあおられていた。


 四肢を広げ、空に大の字を描き、ふわふわのお腹を無防備にさらしながら、猫が泣きながら落ちている。


「いにゃあぁぁぁぁぁぁ…」


 ビュンッ!と、茫然としていたチャロの前を過ぎて地面に向かって落ちる。


 ハッとして、チャロが動く。

 このまま行けば、猫が地面に激突して潰れてしまう!

 さぁーっと青くなって、チャロは箒のスピードをあげる。全速力だ!

 耳元で、ゴォゴォと風の音がする。


 魔法を使用する時間もないから、猫を捕まえられるかは、一か八かの勝負だ。


 ちょっとした、チキチキレースだった。


 地面に激突して潰れるが早いか。

 地面スレスレで猫をキャッチして、勢いを凝らすために空へと回避出来るが早いか。


 箒を立てて、しがみつく。

 そうすると、地面に垂直になる。

 猫の背中を追いかける!

 ぐんぐんと上がるスピードに鳥肌が立った。

 血が沸騰する様な感覚。


 目が、炎が灯るように熱くなる。

 チャロのアメジストの瞳が、血のような紅色に染まった。


 視界の先で猫が、ぐるんとひっくり返った。

 どうやら、気絶してしまったらしい。


 チャロは手を伸ばした。

 少し乱暴に、猫の首根っこを掴む。


 あと10メートルで地面だ。


 力任せに、全身で箒を持ち上げる。

 しなる箒。


「っあ、あぁぁぁぁっ!!」


 チャロは叫んだ!

 両手に全ての力を注ぎ込んで、しなる箒を精一杯、空へ向ける!




 瞬間…。

 地面スレスレを弧を描いて、なんとか空へ回避出来た。

 ドッと、安堵感が胸に沁み渡る。


「っ、はっ…はぁっ、はぁっ…」


 チャロは肩で息をしていた。

 全身が震えていたが、気分は高揚していた。ぐるぐると彷徨っていた視線を猫へむける。

 グッタリと動かない猫。

 真っ黒の毛並みだが、内側の首元から腹部にかけて毛が白い。

 少し長めのふわふわの毛は、勢い良く落ちた為にボサボサだ。

 両の手足の先だけ、靴下を履いている様に白くて、鼻と肉球がピンク色をしていた。

 意識がないせいか、口が半開きになっていて、そこから赤い舌がチョロリと力無く垂れていた。

 その姿は間抜けだが、なんとも言えない可愛さが漂う。


 腹部が動いていたから、ちゃんと呼吸しているようだ。

 死んでいない事に安堵すると同時に、チャロは茫然としてしまった。

 右手にぶら下がる猫を抱き直す。

 しかし、安定感がない。

 深いため息を吐いて、箒の上に横座りすると、膝の上に猫を置いてしっかりと抱きしめた。

 チャロは、自分の街を見つめた。

 師匠になんて言い訳をしよう…。

 お使いの帰り道に猫が空から降って来て、空中で拾いましたと言ったら?

 クラトスは、チャロ以外の者にあまり関心を抱かない。

 そんなもの捨てて来なさいと、言われたらどうしよう…。


「し、師匠…、空からニャンコが…」


 古いギャグにかけて、クラトスに訴えてみようか…。

 チャロは、ノロノロと箒を進めた。

 はぁ〜…と深い溜息を吐く。心身ともに、少し疲れていた。

 なにより…


「…この猫さん、さっき喋ってたよね…?!」


 驚きが麻痺してしまったのか…。

 その言葉は、チャロに疲労感しか与えなかったのだった。










Boy meet cat!

チャロ君と猫の出逢いです!


読んで下さってありがとうございました〜

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