悲しいほどフシギな感覚の棘とそれを守りたい優しい兄。
性に関して、傷つき思い出したくない過去がある人はご遠慮ください。
僕は咲良の部屋に呼び出される。
初めてあがる咲良の家。
両親は忙しく外国と日本を行ったり来りでほとんどいない状態。
家が初めてだから当然咲良の部屋も初めて入る。
「瞬…くん。」
薄く笑みを浮かべ僕を呼ぶ。
「な、何?。」
「さっきの…。」
「あ、ああ。」
「私と、お兄ちゃんが何してたか…見てた?。」
僕はそっと頷く。
「なんか、あんまり驚いてないね…もしかして、瞬くん…。」
目に涙を浮かばせる咲良。
もしかして…何を言いたい、何を僕に聞きたいの?。
「何?。」
「ずっと前からしっ…てた?。」
「うん…ずっと前から知ってた…よ。」
「あは、そう…なんだ…。」
咲良の両頬に涙がすーっとつたった。
咲良は自分と咲良の兄貴が繰り返していた行為を僕が知っていた事を知ると、
薄い桜色のレースのカーテンを見つめ話し出した。
「中3の夏の雨の日にね、私、友達の家から帰る途中二人の男に犯されたの。」
咲良の話し始めた衝撃的な言葉の話に僕は驚きを隠せなかった。
「すごい雨だった、いつも中学に通う道を傘をさしながら歩いてたら気づかないうちに二人の男に前と後ろを挟まれてて…。」
咲良は震え、泣きながら話しを続ける。
本当なら、やめろとか聞きたくないとか口にするんだろうけど僕はあまりの驚きに言葉を出す事ができなかった。
「雨の中、傘を取りあげられてそのまま川の方に引っ張られて押し倒されたの。一人の男が抵抗する私の両手を捕まえて、もう一人の男が私の太股の上に乗っかって、物凄く怖くてこのまま死んでいいって思った…。けどね不思議なの、何でだか分からないけど、二人目の男にされる時にはもう私の身体はそれに慣れていって気持ちがいいって感じたの。」
僕は咲良が話す生々しい悲しい過去にまだ何も言葉を発せず、ただ、ただ聞いていた。
今、僕はどんな顔してるんだろう…どんな顔して咲良の顔を、話しを聞いてるんだろう?。
咲良は静かに涙を流しながら僕の顔を見てニッコリ微笑むと、
「私、変でしょ?、頭では怖いって思ってるのに身体は感じてるの…気持ちがいいって思ったの。男達はコトが終わるとさっさと帰って行って、私はしばらくその場で泥まみれのままぼーっとしていたの。そしたら心配したお兄ちゃんが迎えに来てくれた。」
「咲良…。」
僕がやっと発した言葉は咲良の名前だった。
「家に帰ってシャワーを浴びて、あの等身大の鏡にこの汚い自分の裸を映してたの。なんて身体なんだろう?。あんな時に感じるなんて…私悲しくて、ずっと見てたら心配したお兄ちゃんが部屋入ってきて、私、お兄ちゃんを見て思ったの…したいって。私が『さっきの事忘れたいから抱いて。』って言ったら、お兄ちゃん『お前の身体は俺が綺麗にしてやるから。』って優しく抱いてくれた…。それが私達の始まり。」
これは何かの小説かというぐらいできた話に僕は寒気を覚え、また言葉を失った。
「軽蔑した…でしょ?。」
軽蔑?軽蔑はしてない…初めて二人の営みを見た時も、不潔と思わず敬遠もしなかった。
むしろすごく綺麗な光景に心奪われたくらい。
あの綺麗に感じた光景はこんな惨くて悲しい出来事を忘れたいと思う妹と、傷ついた妹を守り綺麗にしてあげたいと思う兄心に思えた。
僕は咲良の顔を見てそっと首を横に振った。
なんて言葉かければいいんだろう?、そう考え僕は、
「どんな咲良でも、僕は好きだから。」と言い、
泣きながら嬉しそうに微笑む咲良をぎゅっと抱きしめた。