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ふたつの花の温度。

 勢いよく降る雨音が心地良いのと、昨日あんまり眠れなかった事で、

気がつくと僕は長い時間保健室で爆睡してしまった。

咲良、何してるんだろう?。

寝ても起きても考えるのは咲良の事。

今日、学校で教室にいたのは朝と帰りのホームルームだけ…。

なんかほんとうに頭が痛い。

病気じゃないのにあんなに寝たからきっと痛くなったんだ。

まだ半分寝ている少し痛い頭を押さえ、下駄箱でスリッパを脱ぎ靴に履き替えた僕を、

「瞬。」

茜ちゃんが呼び止めた。

「…。」

「一緒に帰ろう。」

僕の顔を見てニッコリ微笑む茜ちゃん。

「あ、うん。」

あの時から茜ちゃんとは会ってなかった。

僕の前で立っている茜ちゃんは、なんか活発で健康的な茜ちゃんと言う感じはなく、痩せてどこか疲れている…そんな感じがする。

眠れないんだろうな、仕方ないか…普通だったらそうだよな?。


 「今日、咲良ちゃんは休みなんだね?。」

「あ、うん。」

「瞬、淋しいでしょ?。」

「え〜?、そんな事ない。」

僕は照れ隠し、開いた傘で顔を隠す。

「ふふ、瞬はいつまで経っても可愛いね。」

「いつまでも子供扱いすんなよ。」

二人がさした傘に集中攻撃してくる様な強い雨。

僕は子供扱いする茜ちゃんにそっと意地悪を言ってみた。

「茜ちゃんだって、咲良の兄貴がいないから淋しいくせに…。」

僕はすねた顔で歩きながら茜ちゃんを傘の横から覗き見ると、茜ちゃんは冷めた顔で、

「…ない。」

雨音で聞こえない…。

「茜ちゃん?。」

「淋しくないったらっ!。」

急に耳元で大声を上げる茜ちゃんに僕は驚いた。

「あ、そうなんだ、ごめん。」

「あ、私のほうこそ…ごめん。」

謝る茜ちゃんの瞳に薄っすら浮かぶ涙。

「茜ちゃん…大丈夫?。」

「ごめん、なんか瞬と話してたら…私、今…いっぱいいっぱいで…。」

「茜ちゃん…。」

いっぱい、いっぱいで…。そう言い傘で顔を隠し、必死に泣くのを我慢する茜ちゃんを僕はなぜか愛しいと感じる。

それは、咲良を愛しいと想う感情とは違う感情。

「瞬…。」

「ん、何?。」

「瞬、さっきいつまでも子供扱いすんなって言ったよね?。」

「あ、うん。言ったよ。」

茜ちゃんは傘を上げ、僕をじーっと見つめると、

「お願いがあるんだけど聞いてくれる?。」

「何?、うん、いいよ。」

何にも考えないで、軽くニッコリ うん と答えた僕の手を引っ張り茜ちゃんはまた歩き出した。


 

 「今日、家誰もいないから…ちょっと上がってて。」

「うん。」

「服、着替えてくるから先に私の部屋行ってて。」

「あ、うん、お邪魔します。」

僕はなんの躊躇いも無く、ただ幼馴染という間柄もあり何も考えずに茜ちゃんの部屋へ上がって行った。

「あ〜、久しぶり。」

茜ちゃんの部屋を見渡す。

昔置いてなかったドレッサーには、いろんな香水のボトルとリップが沢山並べてある。

「ふ〜ん、女の部屋ってこんな感じなんだぁ。」

茜ちゃんが高校生になるまではよく来ていたけど、茜ちゃんが高校に上がってからは一度も来た事がない部屋。以前は平気に座れたベットの上に今は座ってはいけないと思う。

ただの隣の幼馴染のお姉ちゃんの茜ちゃんに女を感じた瞬間。

「おまたせ。」

「あっ、やったぁ〜チョコチップクッキー!!。」

僕が大好きなチョコチップクッキーと氷が沢山入ったアイスティーを少し重そうに持って茜ちゃんが部屋に入って来た。

「瞬、好きでしょ?。」

勉強机の上にトレーを置いて、髪をそっと上げた茜ちゃんの姿に僕は目を奪われる。

丁度いい感じの綺麗な健康的な肌に薄い水色のキャミソールにハーフパンツ…。

茜ちゃんってこんなに色っぽかったっけ?。

「あ、うん。」

どうしたんだろう僕…。

ドクンッ…ドクンッ…、ドクンッ…。

茜ちゃんの姿に僕の心臓は早く動き始める。

「はい、瞬。」

茜ちゃんが僕に渡すグラスの中に入った綺麗な氷が涼しい音をたてる。

震える手。ダメだ…僕、今茜ちゃんを女として意識してしまっている。

ダメだ…ダメだ…瞬っ、茜ちゃんはただの幼馴染だよ。僕…僕は…。

頭の中で、必死に普通の僕と普通ではない僕が格闘している。

うお…頭が壊れるぅ〜。

「瞬、どうかした?。」

茜ちゃんは不思議そうに変な瞬、という顔をしている。

僕は頭を大きく左右にブルブルっと振り、

「う、な、何でもないよ。」

「変な瞬。でも、可愛いね。」

グラスの氷をストローで上手に取り、口にいれる茜ちゃん。

「もぉ、子供扱いすんなって言っただろぉ?。」

「うあはは、ごめんね。」

頬を膨らませ口の中で氷をガリガリ割り食べ終えた茜ちゃんは真剣な眼差しで、

「瞬…は、もう、子供じゃないんだよね?。」

「お、おおぅ。」

「じゃぁ、…抱ける?。」

「は?。」

だ、抱けるって、何を?。

考え、首を傾げる僕。

ドッシッンッ。

茜ちゃんがいきなり僕を押し倒し身体の乗りかかってきた。

い、いった〜い。

「あ、茜ちゃん?いきなり痛いよ、プロレスは…僕嫌いだから…。」

「プロレス?、あは、瞬可愛い〜あはは。」

あ、茜ちゃん、壊れてる?。

「もぉ、子供扱いすんなよっ。」

膨れた僕の顔を見て、茜ちゃんはまたケラケラ笑い出す。

「あはは、ごっ、ごめん。しゅ、瞬、お子ちゃまなんだもん。」

「もぉー。」

あまりにも笑い、いつまでも子供扱いする茜ちゃんに僕は苛立ち茜ちゃんを身体の上に乗せたまま、

今度は僕が上になる様に、身体を半回転させた。

「きゃぁ。いきなり、びっくりするなぁ…もぉ…。」

「いつまでも子供扱いすんなよ。」

冷めた低い口調で言った僕に驚いた茜ちゃんの顔から笑みが消える。

「あ、ごめん…。」

「もう、すんなよ。」

そう言い、茜ちゃんの上から降りようとした僕の襟ぐりを両手で掴み茜ちゃんは僕を自分の身体に引き寄せる。

「うぉ。」

痛っ。

フローリングでそっと鼻を打つ。

痛いのと柔らかい感触…。

茜ちゃんのいい匂いがする…。この間と同じ匂い。

甘酸っぱい…いい匂い。

僕はそっと顔を上げ、茜ちゃんを見つめそっとキスをした。

「瞬、そんなキス…できるんだぁ。」

「だから子供扱いすんなって。」

「ごめん…。」

「…。」

「ね、しよ…。」

「…。」


咲良とは当たり前だけど違う肌の温もり…。

 

 止める事のできない、欲情。

目の前にある獲物はなを見ないフリはできない…そんな年頃?。

小さい頃からよく知っている隣のお姉ちゃん…小さい頃は一緒にお風呂にも入った事がある幼馴染のお姉ちゃん。


僕は、今、そんな茜ちゃんを抱いている。

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