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想い出す…。

 僕と咲良は手を繋ぎ、びしょびしょの濡れた制服のまま家に帰った。

僕はリビングには入らず、家族に気づかれないようにそーっとバスルームに直行し、洗いたくないと思ったけど、シャワーを浴びる。

 

 咲良…の身体に触れた。

咲良を感じた…身体に稲妻が走ったかと思うほど感じた。

僕のこの唇が咲良の身体を愛撫した。

温かいサラサラした人の肌の感触…昔、母さんに抱っこされた時以来の触れ合い。

僕の…が…咲良の…。


 幸せを感じる。

咲良が女で、僕は男。

いつも以上それを感じた。

幸福な時間ときだった。


 

 次の日…今日も雨。

朝から物凄い勢いで降ってくる雨。

いつ梅雨明けするんだろう?と…思い、ズボンの裾を濡らしながら学校までの道を歩く。

今日は、珍しく咲良も咲良の兄貴もいない。

(どうしたんだろう?。)

気にはなるけど、まぁいいや。で片付け、下駄箱で立ってる生活指導の先生に会釈をし、僕は教室に入った。


ホームルームが始まり、

「今日の欠席者は妻夫木一人か?。」

先生の声で、咲良の席を見る。

咲良は欠席。

「なんだ、つまんね。」

クラスの男子が口々に言う。

「先生〜、妻夫木なんで休みなんですか?。」

「あー、風邪だ。」

風邪…ひいたんだ。昨日、雨に濡れたからな…あっ…。

ふと、昨日、あまりの緊張に覚えていないはずの咲良の裸体を思い出す。

あ…。全身の血が急上昇、顔が真っ赤になるのが分かる。

「昨日、雨に濡れたのか?、お見舞い行こうぜぇ、瞬。」

そんな僕の背中を、隣の席の一ノ瀬寛太がバシンッと思いっきり叩く。

「ふぐえっ。」

「えっ?。」

僕が発したとんでもない声に教室は一気に静まりかえった。

し、しまった…。

「…。」

「ど、どうした?砺波顔が真っ赤だぞ!。」

「あ、いえ、大丈夫です。」

やっぱり顔が真っ赤なんだ…。

クラス中の視線が僕に向いている。

うわぁ、あんな事思い出した僕の顔…みんな見ないでくれ。

そんな気持ちで顔を机に伏せた僕に先生はまた、

「砺波、保健室行って来い。」

「は、はい…。」

「瞬、大丈夫か?。」

「な、なんとか…。」

なんとかこの場から抜け出せれる…身体は至って健康だけど、僕は病気のフリをして教室を出た。


 ホームルームの時間は授業と違って先生と生徒が楽しそうに話している。

廊下を真っ直ぐ歩く僕の耳に強い雨音と色々な声が交差する様に聞こえる。

窓の…外を見る。

4本の紫陽花が無造作に植えられている。

学校にも、紫陽花が咲いてたんだ。

紫陽花と咲良。

僕はまた、咲良のそらに向かって伸びる綺麗な首筋から顎のラインと深い眠りに導いてくれる様なそんな咲良の優しい声を思い出す。

 「はぁ、僕、ダメだぁ…頭が咲良で…いっぱい。」

僕は咲良の何かに獲りつかれた。

咲良なしでは生きていけなさそう…大袈裟だけど…そう、思う。

保健室にに向かう教室が、今日はやけに遠く感じる…。

 






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